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#143 賢治が紡ぐ神の話【宮沢賢治とシャーマンと山 その16】

(続き)

宮沢賢治の作品の中には、「神」と呼ぶには人間臭い、土地の精霊的な存在が登場する「土神と狐」がある。ここで登場する土神は、神様でありながら、木に恋をし、狐に嫉妬し、悲劇的な結末を迎える。

その姿も、「神」のイメージには遠く、やはり精霊のような存在に見える。もしかすると、他の登場人物である狐や木も、ある種の「神」で、土神同様に「精霊」のような存在なのかもしれない。

そこには、賢治が信仰した仏教や、少なからぬ影響を受けたと思われるキリスト教などとは違った、日本古来の「アニミズム」的な神々の姿も見える。

賢治作品は、そんな神々の物語を紡ぐ神話なのかもしれない。

そして、大迫はそのような神々にあふれた場所でもある。

花巻市大迫地域の東に位置する早池峰は、もともと修験道の聖地であったと言う。私がそもそも早池峰や大迫に興味を持ったのも、修験道の聖地であることからだ。そこで偶然に、宮沢賢治と大迫の繋がりを教えていただいたのだ。

大迫地域や修験道は、賢治との関わりを抜きにしても、それぞれに奥深く興味深いテーマを多く含んでいる。そして修験道は、明治維新の廃仏希釈によって一掃された、江戸時代以前の長きにわたって日本の宗教の伝統であった神仏習合とも絡み合っている。

宮沢賢治との関係において、大迫地域も修験道も神仏習合も、積極的に語られてきた印象はあまりない。

しかし、大迫で教えていただいたように、知られていないだけで、それぞれが深く賢治に影響を与えている可能性も感じられる。

【写真は、岩手の冬の夕暮れ】

(続く)

2024(令和6)年 3月 5日(火)

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