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僕は地図帳から世界を同期してきた【遠野クロニクル#05】

"The Tono Chronicle(遠野クロニクル)"は、自然とビールにガッツリ浸りたくて岩手県遠野市に移住したKoheiの、備忘録的・週報的なニュースレターです。ほぼ週刊のつもりです。

📅Overview 今週かんがえたこと

僕は地図帳から世界を同期してきた


地図を、ひいては世界をーーあくまで便宜的に、ではあるがーー自分のものにしているという感覚。走り出すと、それが10分間であれ100分間であれ、そのような感覚が目覚める。


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地図が大好きだった。


幼稚園のころの記憶なんて無いに等しいが、あのメキシコ国旗のことはなぜか鮮明に覚えている。鮮やかな緑と赤のストライプと、誇り高く中央に陣取る鷲。教室のドアに貼られていた世界地図にひときわ輝いて見えた国旗を、お絵かきの時間に必死に描いていた。

小学校高学年になり行動範囲が広がると、実家のパソコンでYahooマップを印刷し、それを頼りにいろんなところに行ってみた。初めての一人旅は小豆島だった。確かそのはずだ。A4の紙切れに刻まれた道が、店が、フェリーが、実際に存在していることに感動した。
寒霞渓のロープウェイには足がすくんだが。

学校で地図帳というものが配られた。
授業ほどつまらないものはなかったが、地図帳だけは穴が開くほど読み込んでいた。学校で社会科の授業がない日でも、地図帳を持って行っては「いつの日かこんなルートで旅をしてやろう」とマーカーで色々なルートを検討した。最後まで学校の成績も受験もぱっとしなかったが、なぜか社会科、とくに地理だけに関してはよく出来た。
高校を卒業する頃には、地図帳はマーカーで埋め尽くされていた。


僕のアイデンティティの中心的な位置を占める「旅」という概念は、間違いなく幼い頃からの地図との関係が形作ったものなのだ。


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新しい趣味として半年前くらいから、まじめに走っている。僕の中でまじめに、というのは「二日以上休むことなく、一回につき5-7キロの距離を走る」ということだ。

どうして齢23にして、それまで走ることなんて自発的にやろうとも思わなかった、むしろどちらかといえば嫌いだった僕という人間が、嬉々として今日も靴紐を結んでいるのだろうか。


思えば、旅とランニングはよく似ている。

場所的に、もしくは身体的に非日常な状態であること。地図に記された情報をもとに、その情報が実態を伴って存在していることを確認すること。

そしてなによりも、旅であれランであれ、自分の知らない人・道・空気感に出会い、自分の中の地図をアップデートしてゆく、ということだ。初日の段階ではこの地図におけるこの点に自分がいる、までの認識だが、3日、4日後にはその街の全体像が掴めるようになる。マップを開かずとも帰るべきホテル・家の方向がなんとなくわかる。気軽に飲めるお店が見つかり、お気に入りのコースができる。あくまで平面的だった地図に、自分で人の顔や温度・湿度、感情などを上乗せしていく。

旅もランも、そのスケールの差こそあれ、世界を自分の中で立体化させ、相対化する営みなのだ。

マウンテン・バイクで畦道を走る。自転車にもよく乗るようになった。


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遠野に来てからは、方向だけ決めてとりあえず走る、という形で走っている。信号もなければ、視界を塞ぐ建物もない。遠野盆地を取り囲む山々、刻々と姿を変える雲、果てしなく広がる水田。

この道は、あの河川敷に繋がっていそうだ。
斜め後ろに電波塔があるから、街は右方向だろうな。
ここの森林の香り、あの森林のと同じかもしれない。


今日もせっせと地図を作る。世界を自分のものにするために。


📗Book Shelf 今週読んだもの

「六人の嘘つきな大学生」浅倉 秋成

どんでん返し系のサスペンス小説。面白くて1日で読了してしまった。就活したことないんで、初めて読んだ就活本がこれだった。恐ろしい世界だ。後輩たちにはぜひ頑張っていただきたい。偉いと思います。


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