上村幸平|kohei uemura

カナダ北西に浮かぶ先住民の島・ハイダグワイ在住の写真家。98年大阪生まれ、早稲田大学卒…

上村幸平|kohei uemura

カナダ北西に浮かぶ先住民の島・ハイダグワイ在住の写真家。98年大阪生まれ、早稲田大学卒業。北の雄大な自然とそこにある人間らしい営みを探り、ヴィジュアルと言葉の力を使ってストーリーを伝えています。

マガジン

  • 最果ての記憶【ハイダグワイ生活・週間レポート】

    カナダ北西に浮かぶ先住民の島、ハイダグワイでの移住レポート。この世界の果てとも思えるような神秘的な空気の漂う空間で、上村幸平が見たもの、出会ったもの、知ったものをフォト・エッセイ形式で綴ります。毎週更新。

  • 世界に絶望しないための十万字クラブ

    • 4本

    カナダ北西の離島・ハイダグワイで先住民の営みを追う写真家の上村幸平と、ウガンダ・カラモジャ地域で農業支援に取り組む国際協力NGO職員の田畑勇樹による公開書信。それぞれの場所で全く違う職務に就きつつ、「本をつくる」という同じ目標を掲げる遠距離同僚として、不定期で文章を送り合う連載企画です。

  • 走り書きジャーナル【日記】

    できごとを箇条書きで羅列し、頭に浮かんだアイデアを文章にならないまま書きつけておく。週報記事になるまえの日々の断片たち。できるだけ毎日更新していく日記記事です。

  • 北極圏を犬ぞりで旅する【フェールラーベンポラー2024】

    冬のスカンディナヴィア北極圏を犬ぞりで旅する極地探検プロジェクト『フェールラーベンポラー』に日本人として初めて参加してきました。世界中から選出された20人のメンバーと、120匹のアラスカン・ハスキーとともに、スウェーデンからノルウェーにかけての350kmを旅する記録です。

最近の記事

  • 固定された記事

僕がしていることについて語る時に僕の語ること

 はじめまして!上村幸平(うえむらこうへい)と申します。大阪府出身の24歳です。  登山、クラフトビール、外国語、ランニング、読書が好きです。好きな食べ物はうなぎです。この文章は長野県の大町市というところから書いています。山があり湖もあるという、「この世の全て」みたいな場所です。  昨年に大学を卒業後、フリーの写真家として国内外を旅しながら写真を撮っています。  テーマは、「自然との関わりのなかでの人間らしい営み」。  山や海の中で生き抜くことや旅をすること、農業やもの

    • 幸せは分かち合って初めて本物になる【ハイダグワイ移住週報#30】

      9/30 今年のストーム・シーズンの訪れを告げる巨大な嵐が吹き荒れる朝、僕は車を南に走らせていた。海岸沿いのハイウェイからは荒れ狂うヘケート海峡が見え、ときおりハンドルを煽られる暴風が吹きつけている。 スキディゲート村を通過して入り組んだ湾内を見渡すと、外海ほど荒れてはいない。心配していた南島行きのフェリーも通常通り運行しているようだ。サンドスピット空港に行くのは7月ぶりである。ぐらりと揺れながら進むフェリーでモレスビー島に渡り、空港が見えてきたタイミングでちょうど飛行機

      • 同じものを見ていたはずのに、【十万字クラブvol.4】

        前略 8月も半ばになって、ようやく半袖で過ごせる時間が増えてきた。夏至からもうすでに2ヶ月も経っているというのに、まだ10時前まで明るくていつもにこにこしてしまう。しっかりと今のうちにビタミンを摂っておかなくちゃな、と半ば義務的に外で活動している。 手紙をありがとう。元気そうで何よりだ。僕もこのところ、文章を書くという気にあまりなれずにnoteの更新が止まり気味だった。週報という形式で一年近く日々の出来事を書き連ねたり、一時期は日報のような形で毎日更新していた時期もあった

        • 最果ての地での、二度目の夏

          ぱたぱたぱた、と小刻みに乾いた音が、僕を思索の中から現実に引き戻した。ふと見ると、ウミバトがオレンジ色のチャーミングな足で水面を蹴り叩いて飛び立っていく。 霧の立ち込める朝、僕はハイダグワイ西海岸の静かな入江を漕いでいた。孟浩然の詩に出てきそうなほどに平らかな海面にひとり浮かび、木製のパドルをリズムよく動かす。鹿の親子が草薮の中から怪訝そうにこちらをのぞいている。目があって手が止まる。 会いたかったトーテム・ポールとの一年越しの邂逅を果たして村に帰る朝、海の上に浮かんで僕

        • 固定された記事

        僕がしていることについて語る時に僕の語ること

        マガジン

        • 最果ての記憶【ハイダグワイ生活・週間レポート】
          36本
        • 世界に絶望しないための十万字クラブ
          4本
        • 走り書きジャーナル【日記】
          98本
        • 北極圏を犬ぞりで旅する【フェールラーベンポラー2024】
          2本

        記事

          約束のトーテムポールに会いに【航海日誌:Chaatl村二次遠征】

          昨年8月に一度トライし、力不足から撤退した西海岸Chaatl村への旅。リベンジマッチと力試し、複数日程でのカヤックキャンプのトレーニングとして、再度西海岸へと向かいました。 ↑昨年のもの 概念図行程7/13(土) 15:30 Kagan Bayから出発 16:30 Tree Island通過 18:45 East Narrows手前にて上陸→キャンプ 航行距離:10km 7/14(日) 8:20 East Narrows手前から出発 10:15 East Narrows

          約束のトーテムポールに会いに【航海日誌:Chaatl村二次遠征】

          西海岸より愛を込めて【ハイダグワイ移住週報#29】

          6/1(土) 「レンネル・サウンドにキャンプに行こうと思うんだ。明日から一週間休みを取ったし」 タロンが少し興奮した様子で僕に計画を語ったのは昨晩だった。明日から五日間、ハイダグワイ西海岸にある俺の一番のお気に入りビーチで過ごすから、一緒に来ないか、という誘いである。断る理由もなかったし、そもそもレンネル湾はずっと行きたいと思っていた場所だったので、即答だった。 朝、いつもより少し早めに起きてパッキングをする。今日はカヤックキャンプではなく、車でキャンプサイトの近くまで

          西海岸より愛を込めて【ハイダグワイ移住週報#29】

          豊饒の地・ポートランドを食べる

          ポートランドというのはよく耳にはさむ地名だった。 クリエイティブなホテル文化、多種多様なクラフトビール、新鮮な食材をふんだんに使った気鋭のレストランの数々。小規模農家が幅を効かせているワインの産地ということも忘れちゃいけない。リベラルで反骨的、独立志向でDIY精神に富んだ街。 僕はアメリカ的・北米的なものに本当に興味がない。こうして今カナダに住んでいるのも不思議なくらいだ(カナダはマシなアメリカなので許容)。NYやLAはおそらくこれからも行きたい場所リストに入ることはない

          豊饒の地・ポートランドを食べる

          根魚入れ食いのカナダ・デー【240701】

          ・昨晩は村の友達の家でハウスパーティ。タロンはスマホも靴も財布も無くしてた。ふたりでゲラゲラ笑いながら帰宅したんだっけな。ちゃんと水を飲んでおいたおかげで特に二日酔いにはならずに済んだ。 ・10時過ぎに腹が減って起床。じゃがいもを薄くスライスして強火で炒め、厚切りベーコンをこんがり焼き、卵を二つ落とす。パワーブレックファスト。じゃがいもを朝から食べるとパワーがみなぎる気がする。 ・11時前にタロンが起きてくる。もっと早く釣りに出る予定だったけど、こればかりはしかたない。さ

          根魚入れ食いのカナダ・デー【240701】

          TABI LABOでの連載で新しい記事が公開されました! 「死者のポール」をめぐる短いエッセイを寄稿しています。以前の航海日誌を練り直してみました。全文は以下のリンクよりご覧いただけます。 https://tabi-labo.com/309618/adventures-of-raven06

          TABI LABOでの連載で新しい記事が公開されました! 「死者のポール」をめぐる短いエッセイを寄稿しています。以前の航海日誌を練り直してみました。全文は以下のリンクよりご覧いただけます。 https://tabi-labo.com/309618/adventures-of-raven06

          空気と光と友【ハイダグワイ移住週報#28】

          4/29 7時に起床。猫はすでに起きていて、朝ごはんをくれと顔もとで小さく鳴いている。心配とは裏腹に、外は美しい天気だ。カヌーキャンプ日和である。 昨日まとめておいたバックパックに寝る時用のベースレイヤーを詰め込み、ウォーターバッグに飲み水を入れる。夜に実花が作っておいてくれたチリ・ビーンズをタッパーに移し、二日間分の食料と水があることを再確認する。あとは酒屋で美味しそうなビールを買っていくだけだ。 早く起きてきたヘレンが車に荷物を乗せるのを手伝ってくれる。 「朝ごはん

          空気と光と友【ハイダグワイ移住週報#28】

          フェールラーベン日本公式サイトで、僕の北極圏犬ぞり旅「フェールラーベンポラー」のレポート第二弾が公開されました!オーロラ舞う夜空の下で歯を磨いた日の記録です。全文は以下リンクよりご覧いただけます。 https://fjallraven.jp/blogs/event/2024/06/04/1541/

          フェールラーベン日本公式サイトで、僕の北極圏犬ぞり旅「フェールラーベンポラー」のレポート第二弾が公開されました!オーロラ舞う夜空の下で歯を磨いた日の記録です。全文は以下リンクよりご覧いただけます。 https://fjallraven.jp/blogs/event/2024/06/04/1541/

          雨のフィンランド湾を歩く【ヘルシンキ紀行:後編】

          ヘルシンキ最終日。ゆっくり起きる。外にはしとしとと雨が降っている。昨日の朝と同様、熱い紅茶とオープン・サンドウィッチで朝食にして、部屋でうだうだする。 いろいろ最後の観光プランを練ったが、やはり博物館巡りや教会巡りは少し肌に合わない。せっかくヘルシンキにアウトドア好きな友人と一緒にいるのだから、外で何かしたい。 「天気はあんまりだけど、外で軽くハイキングとかできないかな?」 「だったら、ヘルシンキの群島部に行ってみない?ちょっとしたトレイルがあって、いい息抜きができるところ

          雨のフィンランド湾を歩く【ヘルシンキ紀行:後編】

          フェールラーベン日本公式サイトで、僕の北極圏犬ぞり旅「フェールラーベンポラー」のレポートvol.1が公開されました!3回に分けて連載します。ノーカットのフルバージョンはnoteに投稿する予定です。 https://fjallraven.jp/blogs/event/2024/05/31/1501/

          フェールラーベン日本公式サイトで、僕の北極圏犬ぞり旅「フェールラーベンポラー」のレポートvol.1が公開されました!3回に分けて連載します。ノーカットのフルバージョンはnoteに投稿する予定です。 https://fjallraven.jp/blogs/event/2024/05/31/1501/

          森の小さなサウナで【ヘルシンキ紀行:中編】

          8時前に目が覚める。犬ぞり旅以降続いていた『極地時差ボケ』もだいぶ落ち着いてきたようだ。貸してもらったソファベッドの寝心地は最高だった。窓の外の気温は十度を少し下回っていたが、部屋の中はとても暖かい。 「フィンランド・スタイルの朝ごはんにしよう」 マッチでコンロに点火して、エリサはケトルを火にかける。昨晩スーパーで買ったレタス、トマトときゅうりを切り分け、田舎風情のある旅人が描かれたパッケージを取り出す。手のひらサイズの丸いライ麦パンが入っていて、それらを半分に切ってトース

          森の小さなサウナで【ヘルシンキ紀行:中編】

          時を超えたサイコロゲーム【24.5.27】

          ・ここ一週間ほど雨が続いている。それまではわりかし乾いた天気が続いていたので、屋根を打つ雨粒の音が心地よい。 ・朝ごはんにはいつも通りパンケーキを焼き、そこに高めのメープルシロップをかける。これまで使っていたのはメープル風味シロップだったようだ。深いコクと自然な甘さが心地よい。 ・外の作業をできるような天気ではないので、家にこもって執筆作業を進める。書くべき題材も溜まりに溜まっている。フェールラーベンポラーの体験記は3回の連載にしてフェールラーベンの日本代理店に買い取って

          時を超えたサイコロゲーム【24.5.27】

          シナモン香る『福耳パン』【ヘルシンキ紀行:前編】

          朝6時のストックホルム・アーランダ空港。こんな早い時間に空港にいるのは、不機嫌そうな手荷物検査官か、早朝深夜便の多い格安航空の利用者ぐらいだ。 空港のコンビニでクロワッサンとパン・オ・ショコラ、そしてコーヒーをテイクアウトする。コーヒーの味は褒められたものではないが、パンはどちらとも悪くない味だ。皮はパリッとしており、バターの香りが口を満たす。スーパーでもコンビニでも美味いパンを食べられるのは、ヨーロッパの素晴らしいところだ(イギリスを除く:ヒースロー空港のサンドウィッチは

          シナモン香る『福耳パン』【ヘルシンキ紀行:前編】