見出し画像

【文章作成の基本】この助詞に注意!(前編)

 のっけからこんなことを言うのも申し訳ないですが、今まで中高生の文章を添削指導してきて助詞が大きな問題となったことは少ないです。たしかに、日本語の文章において、「てにをは」が重要なことは言うまでもないですが、その使用に対して、事細かに指示入れをしたことはほぼありません。

 日本語は、他の言語と異なり、いわゆる膠着語なので、助詞が付くことによって文の要素が決まるわけです。たとえば、他の言語だと格変化することで、主格や所有格、目的格など、いわゆる格が決まります。しかし、日本語だと格助詞を伴うことで、その前の語の格が決まります。したがって、助詞が重要なのは言うまでもないです。それでも、それがことさら問題とならないのは、私が添削指導の対象としている中高生の多くが、日本語を母語としている話者であるからだと思います。

 助詞が文法的に理解できていないと助詞の運用を誤るレベル、つまり助詞の文法的意味を一々考えながら日本語を運用するレベルの話者とは誰でしょうか。想定すると、それは、幼児か日本語を母語としない話者、つまり日本語の学習を始めた外国人だと言えます。もし、一般的な中高生でこのレベルの生徒がいるとしたら、文章作成はおろか日本語を運用しての日常生活に支障をきたす言語運用レベルのはずです。その生徒は、中学・高校の授業にも全くついていけないでしょう。

 ですから、大変申し訳ないのですが、日本語の助詞について体系的に学習したいと思ってこの記事を開いた人がいるとしたら、この記事は、その方の期待に十分に応えられません。それはおそらく、小学校の先生や日本語教師の方の記事の方が詳しいはずです。小学校や日本語学校では、助詞の扱いは大きなトピックであるはずだからです。

 で、大変長い前置きですが、それでもなお、一般的に文章作成において助詞の使い方を誤るケースがあるとしたら、それは、「一文が長いことによる、文構成の乱れや主述のねじれなど」が問題になって起こるケースです。平たく言えば、一文を長く書いている中で、初めに書いたことが忘れ去られ、その主語や目的語(対象語)などに対応する述語がなくなってしまってその助詞が意味を成していないなどのケースです。これは、「どのように助詞を使うかの文法的知識が足りていないことによって起こる問題」、というよりも、「一文が長過ぎることによって起こる問題」なので、こういうケースのときは、私は「一文を短くまとめてください」と指導します。ここで、ほとんどの中高生は「あ!」と気が付きます。読み直せば文がおかしなことになっているのが、自分でわかるからです。

(一文を短くするには、こちらの記事を見てください。)

 さて、そのような可能性をも排除した上で、さらに、文章作成において助詞の文法的知識が必要となってくるケースがあるとすれば、それは次に示す以下の二つのケースのときだと、私は考えます。では、その二つのケースについてお話ししましょう。

1.副助詞「は」と格助詞「が」

 副助詞「は」と格助詞「が」をそもそも知らないという人は、日本語で文章を書く言語レベルの人の中にはいないはずです。ですから、ここではそれらを意識してどのように文章を書くのかという話をしていきます。

例1 象は鼻が長い。

 「キリンは首が長い」でもいいですが、ともかくこのよく使われまくっている例を使って、こういう話から始めます。

 主語は「象」か「鼻」か。言うまでもなく、「鼻」ですね。「長い」という形容詞が述語なので、主語は「鼻が」ですね。「鼻が長い」わけです。「象が長い」となると、それどんなバケモンだよって話ですね。文の意味がわかれば普通にわかりますが、文法的に考えるとそもそも「は」は副助詞で格を作らない、対して「が」は格助詞で格を作る、したがって主格(主語)は「鼻が」になります。

 では、「は」は何、という話ですが、ここでの副助詞の「は」は次の意味です。主題(テーマ)を表す「は」です。

は(副助)〔発音は「ワ」〕
①話し手が話題にしたいことを取り上げる。…に関して言えば。

三省堂国語辞典 第七版


 「象に関して言えば、『鼻が長い』」ということです。この文は、象を話題(主題)としている文ですよ、ということを先行して読み手に伝え、それについての話が後に続きます。ですから、この場合、読点はこのように打ちます。

例1-1 象は、鼻が長い。

 こうすると、主述のセットが読み手にわかりやすく(見えやすく)なります。さらに読み手に配慮するならば…。

例1-2 象の鼻が長い。

 副助詞「は」と格助詞「が」は、そもそも意味が違うのでこのように重ねて使えるのですが、それによって誤読を招きやすくもなります(ここでは単純な文だからそうはなりませんが)。その場合は、別の助詞に置き換えて、それを未然に防ぐとよいです。

 ここまでが前編です。後編に続きます。後編はこちら。


「記事が参考になった!」と思われる方がいましたら、サポートしていただけると幸いです。いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!