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世界の奇妙な子守唄

タイトルどおりの話なのだが、いくつか紹介していく。

ハイチの子守唄『DODO TITIT』
奇妙レベル:★

世界中の子守唄に、寝ないと何か怖い存在がやってくるーーと子どもを脅かす内容は、よくある。ハイチの場合、その怖い存在が、一風変わっている。カニなのだ。

小さなママ  小さなパパ
眠らないとカニに食べられるよ
ママは市場へ行ってここにはいない
パパは川へ行ってここにはいない
眠らないとカニがおまえを食べにくるよ

子どもが寝たら、「カニはガンボに入っているよ」と付け足すそうだ。ガンボとはスープやソースのこと。脅してごめんね安心して寝てね、といった感じだろう。

「ti titit」は「ti」への愛着を表す最上級。小さな〇〇と言ってはいるが、最愛の人という意味あいがこもっているのだ。

リンクの下の方は、日本語に訳して歌われているもの。


ジャワ島の子守唄『LELO LEDUNG』
奇妙レベル:★★

インドネシアのジャワ島には、泣く子を探す恐ろしい巨人がいるようだ。

どうか静かに
泣いてばかりいないで
かわいい顔の我が子よ
泣いたら美しくなくなるよ
あなたが立派に生きられますように
立派な女性になって
父母の名に名誉をもたらす
祖国の戦士となるように
どうか静かに我が子よ
月が満ちる
怖い巨人の頭のように
巨人は泣く子を探してる

立派な大人になることなど、けっこう先の話や親の具体的な期待が含まれている。


アイスランドの子守唄『BIUM BIUM BAMBALO』
奇妙レベル:★★★

アイスランドにも、怖い存在がいるようだ。ただ、それが何なのかはわからない……

私の小さな友だちを休ませていると
窓の外にぼんやりと顔が浮かび迫ってくる
大いなる山々が
胸が燃えるような欲望で満たされる
私はラングシュピルを弾き
あなたの心を癒す
小さな友よ私は眠りに誘う
でも窓の外には顔がある
残酷な嵐が吹き荒れ
暗い吹雪が立ちはだかる
私は5本のロウソクを灯し
冬と黄昏の影を追い払おう

子どもを「友だち」と呼んでいたり、人生の荒波から、親が守ってくれるような感じも伝わる。

ラングシュピルはアイスランドの楽器。

上のリンクは、ラングシュピルの音がわかるもの。


スコットランドの子守唄『妖精の子守唄』
奇妙レベル:★★★★

スコットランドには、怪物はいないのに、寝ていた子どもがいなくなってしまう。リアル怖い。

赤ちゃんをそこに寝かせて
ビルベリーを摘みに行った
最愛の赤ちゃんがいなくなってしまった
小さな黄色い子ヤギを見かけた
でも我が子はいない
カワウソを追って湖まで行ったけれど
我が子の行方はわからない
どうしても赤ちゃんを見つけられなかった

これだと、子どもから目を離してはいけないという、親への教訓ではないか?


ノルウェーの子守唄『KRAKEVISA』
奇妙レベル:★★★★★

ノルウェーのこの子守唄は、赤ん坊のことを歌っていない。カラスが自分(や子ども?)を殺すと思いこんだ男が、先手を打ってカラスを殺すという内容らしい。亡骸をどうするのか羅列系で語られるのが、怖い。

男は森に入った
一羽のカラスが草原に座っていた
男は考えた
あのカラスは私を殺したいのだろうか?
男は膝の上で弓を引きカラスを射た
(中略)
それからカラスの皮を剥ぎ屠殺した
重さは16ポンドや20ポンドあった
その皮から12足の靴を作った
一番よい靴は母にあげた
(中略)
目で窓ガラスを作り首は教会に飾った
このようにカラスを使うことができない者は
カラスを得るに値しない

一見、残酷な描写に思えるが。カラス一羽でもこんなに多くのことに活用できる、というような意味なのかもしれない。命を奪うならとことん使いきる、そんな人間になりなさいと?子どもに言い聞かすにしては、深すぎやしないか。