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【蒸留日記vol.19】日本人の誇りである杉の葉っぱを蒸留してみる!

すっかり3月おなじみ、無職が落ちてるもの拾ってくるシリーズ第19幕とやってまいりました。

本日は、日本人の心の誇りでありつつ、日本人を最大限苦しめている樹木スギ(Cryptomeria japonica)を蒸留してみたいと思いまぁ〜〜〜っす!


えーたぶんこの頃はといえば春の兆しが訪れている西日本や本州の平地だと、もうすでにスギ花粉によって鼻と目が絶望の苦しみを味わっている方多いと思いますが、、、

実は北海道にはスギが生えておらず、いわば花粉症の方にとっての楽園なのです…!!

けどけど、

なんで本州からわざわざスギ素材を送ってもらえるお金も無いのにこんな記事を書けるの??

と疑問にお思いの皆さま。

スギの北限(植えたスギが越冬してギリギリ育つ地点)がこの三笠市のひとつ上隣、美唄市であることはご存知でしょうか!?

美唄市光珠内にある林業試験場が、スギを植樹した場合の安定して育つとされる最北地点(北限)とされているんです!

なので今回のスギ蒸留回は、いわば最北地に生育するスギを蒸留したというスペシャルな回となっておりますbb

さてさて事の次第を追っていきましょうbb

いやホント本州でしか見られない杉がこの街にも生えていたということで、三笠市に生まれ育ったことを心から感謝することになるとは思いませんでした。。。
スギ葉っぱを拾っていた時の心境
石鹸作りやスキンケア製品などお仕事ください。。。

■スギのサクッとしたプロフィール!

スギの葉っぱと松ぼっくり、かなりトゲトゲしい。

ヒノキ科 スギ(Cryptomeria japonica)はいうまでもなく、古くより日本人が木材として一番利用してきた樹木だと思います。
本州のどんな急傾斜地にも生え、まっすぐ伸び、中の木材は日本人の好む赤身であり。。。

高野山は熊野古道の夫婦杉屋久島は樹齢2000年の縄文杉など言うまでもないほど有名ですよね。

スギの木材は油分を多く含んでおり、その油分が虫を避け、適度に水分を弾くので、家屋の様々な部分に使われていました。
屋久島に育つ屋久杉は特に含む油分が多く、柾葺き・こけら屋根に多様されていたそうです。
(現代家屋は安価な外国産針葉樹材などが多い)

また、春の訪れとともに北海道を除いた全国の日本人を最大限に苦しめるのもこのスギによる花粉症。
スギは春が来るとホウキのような葉っぱの先端にオレンジ色の雄しべを大量に付け、空が黄色く染まるほど大量の花粉をまき散らします。

放散量が多いので本州住まいの方は花粉を吸い込む量が多く、高確率で花粉症をスギ花粉シーズンに合わせて発症するとされます。

がしかし、北海道人はスギ花粉症の方がほぼいなんですね。
なぜなら、北海道にはスギがまったく生えていないからです。
"まったく"と言うとウソになるのですが、安定して育つのは函館周辺の北海道南端部のみ!
雪にはある程度耐えられても、どうやら寒すぎて安定して育たないらしいのです。。。

そして北海道人は相対して、シラカバ花粉症の患者が多かったりします。


■北海道のスギ精油は"ケモタイプ"化できる…!?

「ケモタイプ」という言葉は精油業界のいわゆる業界用語のようなもので、同じ植物でも生育地(気候)が違うと香り物質の組成も変わってくるよねーというワード。

ケモタイプに類される顕著な精油だと、ローズマリー(Salvia rosmarinus)タイム(Thymus vulgaris)などが代表例ですね。
育つ気候・土地によってLinaloolという成分が一際多かったり、Camphor/樟脳という成分が多かったり、1.8Cineoleという成分が多かったりなどします。

※ラベンダーの研究論文を追うと、生育環境の温度水分量によって精油組成が大きく変動するとされる論文もあります。

これは植物の特性なので、同じ植物であるスギもといさまざま樹木でも起こりうるんですね。
逆に生育環境によって成分が変わらないことはほぼないと言えます。


■北海道は晩冬3月のスギ葉っぱ集め

スギは葉っぱの量が多い樹木というイメージでした。

エフゲニーマエダ的に、モシャァ!っとモサァッと葉っぱが茂っているイメージなんですよ。
だからひとたび風吹き荒れれば、松ぼっくりやニオイヒバの葉っぱ同様、たくさん落ちてるだろ〜〜〜と楽観視していたのが大間違いでした。

スギ林の林床、ほとんどが枯れ落ちた葉っぱのみ

実際のところ、落ちている葉っぱは赤く枯れた葉っぱがほとんどでした。
画像は風が吹き荒れた後日のもの。

スギの緑色の枝葉は落っこちにくいんでしょうか?(⬅︎エフゲニーマエダ氏ここで何かに気づく)

葉っぱは多けれど、緑色の落ち葉はほとんど見られない

雪で折れた枝を探してまわり、緑色の葉っぱを回収してきました。
蒸留に使う素材部位としては「スギの冬葉」になります。
Winter Leafですね。水分の出入りが少ない越冬中の葉っぱを狙って蒸留している感じ。

枝葉が大きいのでそれなりの体積となるスギ葉っぱ。これでも"ヒノキ科"ですよ!?

3/8に収集した落ち葉松ぼっくりの取れ高。
風が吹けばこれだけ樹木たちの落し物が拾える。

なかでもスギ葉っぱはモサモサしてるので抜きん出て物量がある。(ように見える)
このままでは釜に入りきらないので、さらに枝切り鋏で細かく刻みました。

かなりトゲトゲしているので、素手でちぎることは難しい。

すっごいトゲトゲです。そしてやや硬いのです。

北海道人ならではでしょうが、アカエゾマツを思い出します。


■精油はどれだけ採れた…!?

フローラルウォーターが1000mL溜まった時点での精油抽出量

見ての通り、ぜんっぜん採れませんでした。
釜満杯に詰めたスギ葉っぱは4時間蒸留して7mLほどがやっとでした。

どうやら冬のスギの葉っぱにはぜんぜん精油が含まれてないようですね。
葉っぱを刻んでいても、そこまで強い匂いはしてこなかったです。

スギはヒノキと同じく、木材(造材した際出る木屑・ウッドチップ)を蒸留して精油を安定量作っているようで、①木材精油②葉っぱ精油とを区別しているようです。

なので、もしかしたら葉っぱと木材とでは、精油の採れる量・歩留まりにめちゃくちゃ差があるのかもしれません!

-スギ葉っぱの精油は黄色い。それはもしかして…-

黄金色に輝くスギ葉精油

ご覧の通り、スギの葉っぱから抽出した精油は今まで蒸留してきた針葉樹の葉っぱ精油のなかで特に濃い黄色をしているんですね。

「精油に色がつく」ということは、含まれる物質の構造色である場合が多いです。
いわゆる、分子構造が大きい(炭素数15のセスキテルペンなど)ので色づいているんですね。
ほかにも分子が大きいので揮発性が低く、あまり強い香りはせずまろやかな香り性質となる特徴があります。

おそらくスギ冬葉から採れる精油は、そういった特性があるのでしょう…!
あくまで素人考えの予想ですが。。。


■総評!

蒸留が終わったあとのスギWinter Leaf

あたたかい地域、いわゆる温帯性の気候に生えるスギなので、それを最北の極寒地でギリギリ育っているスギの、しかも冬葉っぱから精油を抽出するという極端な試みをやったワケですが、結果は惨敗。。。

得られた杉の冬葉っぱ精油

蒸気用の水を継ぎ足していつもより長く、4時間ほど蒸留したんですが採れた精油はわずか7mLほど。

ぜんぜん販売には向かない歩留まりですね。


という蒸留結果でした!

次なるは夏の葉っぱで試したいと思います!

残念ながら北海道で造材目的の伐採をやっているのははるか函館などの地域なので、そこまで行く用事があるか、台風か強風で折れた近場の最北育ちのスギ葉っぱを入手してそれを蒸留したいと考えてまっす!



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やってみた

若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。