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アカエゾマツ林の林床を歩きながら次世代林業を考える。。。

アカエゾマツ(Picea glehnii)がたくさん生えた人工林?緑地帯の林内をさまよってました。

先にあげたニオイヒバの落ち葉から精油を得るnoteからの思いつきで、春の針葉樹林の中を散策してみよう!という経緯に至ったのです。

林の中を葉っぱを拾いながらほっつき歩いてたところで、いろいろ思うことがあったのでバラバラと書きなぐってみます。
今回は頭の中の情報をひけらかしてみることに重きをおいた読み味です。
ではでは。

1.「落ち葉」という素材≒ゴミは毎年一定量出るよね。

●厄介者の落ち葉。

落ち葉と聞くと都市部在住の方にとっては、秋の厄介者と思うかもしれません。あるいは台風シーズンとか。
道路と歩道のわきや排水溝、玄関先などに風に吹かれてたくさん落ち葉が溜まってますよね。
所によっては悪臭を放つ銀杏の実も。
それらを袋に詰めてゴミステーション脇に山積みにするのがある種の風物詩かもしれません。

樹木が大量に茶色くなった葉を落とすのは決まって秋であり、針葉樹ではカラマツ・メタセコイヤと、ほかは落葉広葉樹が秋に一斉に葉っぱを落とします。
これらの風景は想像に容易いですよね。

蛇足ですが、春先に大量の葉っぱを落とす、本州育ちの大木クスノキもなかなかな厄介者だと聞きました。


●針葉樹は緑色の葉っぱを落とす。

しかし、水蒸気蒸留・エッセンシャルオイル作りを趣味でやっていると、どうも「落ち葉」というモノの見え方が変わってきました。

雪の上にたくさんのエゾマツの落ち葉が顔を出している

針葉樹限定ですが、春の雪解けシーズンがやってくると緑色の葉っぱが雪の中から顔を出し始めるんです。
ここらは北海道の中でも特に雪の降る地域なので、横殴りの吹雪に見舞われた際、枝先からもげて落ちたのでしょう。

ここだけでなくとも、わりと大柄に育った針葉樹のまわりではどこもそんな状態でした。

無論、今回のテーマは都市の緑地帯のアカエゾ林ですが、針葉樹ならば住宅街の囲い木として大量に定植されているニオイヒバ(Thuja occidentalis)なんかもどうやら同じ状況。
田園都市の防風林で活躍中のドイツトウヒ(Picea abies)も林床には長い落ち葉がたくさん。

これらのように、葉っぱの多い針葉樹の下には積雪期に揺すり落とされた細切れの葉っぱがたくさんみられるんです。

札幌の公園でコウヤマキの落ち葉をGET

常緑以外、ほとんどの広葉樹は秋に枯れた葉っぱを落としますが、針葉樹はどうやら緑色の葉っぱのまま落とすことが多いよう。

●毎年落ち葉は出るよね。

無論、冬という季節は一生に1度というレア現象ではありません。
毎年必ずやってきますね。
ということは樹木も毎年何日か猛吹雪に晒される状況・期間があり、毎年一定量の葉っぱ、時によっては大枝もボッキリと落とす仕組みなワケです。
いわば自然環境のサイクルですよね。

何より重要なのが、樹木は毎年台風や吹雪に削られるだけじゃなく成長して大きくなっているという点です。

樹木の成長モデル(2008) 日本生態系協会pdf資料より

「樹木の成長=背が高くなる」というように上向き成分だけの伸長ではなく、光合成効率の良い横枝は太くなり、横向きに広がる樹冠・枝葉の面積も大きくなっていっているのです。
広葉樹資料ですが、土から芽を出してから約60年間は樹体がボリュームアップし続けていることが上記資料で述べられています。

葉っぱの体積も成長するにつれて増えているんですね。
そして葉っぱは毎年新芽として発生して広がっていくので、再生資源であるともみてとれます。

エフゲニーマエダ氏はここに目をつけたんですね。

2.どうやら落ち葉は価値化できる。

エッセンシャルオイルづくりでの素材活用例としてなので限定的な話になっちゃうんですが、相手にできるのは今のところ緑色の葉っぱのみ。
茶色く枯れ落ちた葉っぱからの有用成分抽出はいまのところ未検証。。。

なぜ針葉樹の落ち葉が使えるか?というと、落ちて雪の中で眠っていた葉っぱは冷温保存されていて、割と新鮮な状態で春先まで残っているんですね。

真っ白い雪が太陽光をほとんど反射してしまうので、雪に埋もれた緑色の葉っぱは栄養供給なしで光合成してしまうことがありません。
細胞の活動も律速化しているので、ほぼ枝から落ちたその時の鮮度を保っているといえます。
なので葉っぱの中に保存された有用な成分もさほど逃げ出さずに保存されているんですね。(これはラッキー!)

雪の中って植物の鮮度を保つのに意外と都合がいいらしいんです。

しかし化学的な観点からみると、やはり生きている樹木から枝打ちなどで切り出された新鮮な葉っぱを使う場合がベスト。
収穫すぐを歩留まり100%として考えると、保持成分・鮮度ともにそれを使うに越したことはなく、落ち葉素材とは明確に時間の壁が存在しています。
(枝葉が落ちてから時間とともにどれだけ成分が抜け出るかは未検証)

しかしながら落ち葉からエッセンシャルオイルを抽出すると、採れるオイル量が極めて少ないわけでもなかったので、資源としてはまぁ使えるよね!ってことがわりました。

山の中で樹木の枝打ち・伐採過程で発生する葉っぱを使うことなく精油を作り出せる手段もあるもんなんですナ!

3.伐木〜丸太搬出とは違った燃料費のかかり方

一般的にエッセンシャルオイル生産のため葉っぱを得るには、チェーンソーなど動力機械を使って枝を落としたり木を伐倒して、丸太として収穫するタイミングで葉っぱも回収します。

が、この機械林業のプロセスには機械を動かすためのガソリン代がかかります。

そして里山を歩きまわって細切れの落ち葉を拾い集める僕の方法と比べると、燃料費のかかり方が違いますよね。

ただ散歩感覚で葉っぱを拾い集めるのには燃料代はかかっていません。

●精油事業のケース。

しかし事業としてみると燃費・経費的な課題はその後のプロセス。
精油を抽出するには水蒸気を発生させるための光熱費(電気あるいはガスあるいは薪)と冷却用に水道代(雨水でも代用は可能)がかかります。
それらを経ることによって販売価格5mL¥2,500~の精油・エッセンシャルオイルとして製品は完成します。

売りに出される市場はアロマ・香料のマーケットです。
(努力次第では医療業界に広がっている例もあります)

●木材市場のケース。

一方林業の現場だと、チェーンソーで丸太を切り倒すだけではお金にはなりません。
倒した木をその場で丸太に加工し、トラックなどに載せて山から降ろさなくてはならないんですね。
次に運送会社などに丸太の搬送を頼み、角材へと加工する製材工場へ送ります。

切ったばかりの丸太は水分を含んで湿っており重く、同量の乾いた木材を運ぶのとでは運材車両の燃費のかかり方が変わってきます。
これらのプロセスにはかなりのガソリン代を要するのです。

伐採業者が自前の材乾燥・製材工場を持っているとまた経費のかかり方は変わってきますが、俗に丸太単体の価格は1本約¥7,000~とされます。

木材は建築資材として無くてはならない要素なので、一度に大量発注が舞い込み、ドカン!と利益が入ります。
特に質の高い、ほかの角材と同等に扱っては損となる良質な丸太の場合は、銘木市というマーケットに出品されます。

4.非伐採であるがゆえ究極のエコ。

落ち葉を拾い集めるだけだと、樹木を切り倒すことがないので非破壊的であるといえます。
葉っぱを落としているのは決まって起こる自然現象(風圧など)であり、樹木も古くなった枝葉は離層を形成して落とします。
そして毎年落ち葉を同じ木から回収できるので、伐採による葉っぱの回収場所が増減することもありません。
決まった場所で回収できる安定的な資源としてみることができますよね。

人工林の樹木も、おおよそで伐採を行うとまた苗木を植え直さなくてはいけない法律になっています。
しかし葉っぱをわんさか付けていた成木を切った直後に成立するのは背丈1mほどの苗木。
もとの葉っぱ体積を樹木が取り戻すには、ざっと20年ほど後の話になってしまいます。
一旦「落ち葉」という資源の量が減ってしまうんですね。

5.山林の土壌は育てるべきだが、都市緑地の土壌はワケが違う。

ならびに「落ち葉」のもつ循環環境中の役割も無視してはいけません。
落ち葉は早くて5年から8年をかけて、栄養分たっぷりな土壌へと戻っていきます。

広葉樹の落ち葉は微生物や菌類に分解されやすく、4,5年で土となんら変わらない状態まで到達するとされています。
一方、針葉樹の針葉は外層が硬く、松ヤニや精油など難分解性の成分も多く含むことから平均7,8年はかかるとされています。
そして針広双方含めた土壌の堆積スピードは北海道において年2mmずつ厚くなっていっているとされます。

精油製造の観点から、この期間中で葉っぱが地上に落ちると、だいたい半年〜1年で赤茶けて乾燥してしまいます。
特に精油成分は分子量が小さく揮発しやすいので、葉っぱ内部の乾燥とともにすぐに抜け出てしまいます。

なので冬〜春に拾って蒸留してしまうのがもっとも効率が良いらしいんですよね。


少し話を戻して、森林を育む林業にとっては、ある程度の葉っぱを山中に残しておくのも土壌育成という観点でみると、無駄ではないプロセスです。
(スギ!ヒノキ!など単一樹種の葉っぱだけを溜め分解させると生物相に影響が出るなど諸問題もありますが…)

都市の緑地帯小規模な林地も同じように葉っぱの堆積は毎年起こっています。

が、山地に広がる森林と違い、求められる公益機能(水質濾過機能や自然公園機能)に差が出るんですね。
林業を施行する人工林とは管理が変わってくるので、それに伴って生えている樹種や動物の有無や人間の活動などで、自然物の組成も変わっています。

加えて管理されている都市公園だと、落ち枝や枯葉は徹底的に掃除されてしまうので、落ち葉が完全ゴミの立場となってしまう成分が強いのはここでしょうか。
落ち葉が土壌となって堆積せず、芝生として年中管理されているので土壌育成の考え方が及ばないフィールド環境だったりします。


総括.個人単体の林業でも十分食ってける時代来るんじゃね?

でっかい山地を相手にする林業は、精油事業の観点からみると決まった特定樹種のオイルしか生産できないデメリットが挙げられます。

一般的にスギ・ヒノキ、北海道でいうとトドマツ・エゾマツ木材の造材とセットでエッセンシャルオイルが生産されるからです。
現実問題、丸太の切り出しや運び出しで忙しいから葉っぱの回収なんかに手回せないよね…。

それに対して自伐林業家ならぬ個人蒸留家としてだと、枝葉の入手経路が変わるので完全に違う畑で活動することになります。
また蒸留器のサイズなんかにもより、工場の備え付け大型蒸留器より移動が可能な小型蒸留器持ちだと地域別での事業が可能になるワケです。
フットワークが軽いんですよね。

蒸留器の扱い方も一考すれば、樹木の葉っぱだけの扱いではなく夏季は野草なども蒸留のビジネス商材にすると活動領域はいよいよ林業を飛び越えます。
考えてみるとスゴイですよね。。。

そして実際に葉っぱを集めて回って蒸留をやってみると、落ち葉は基本的にどれも細かくなって落ちており、わざわざ大枝を工場に担ぎ込んで細かくするというプロセスが省けるんですよ。
回収した袋から蒸留器の釜にそのままザザーッと流し込める。

この点が結構労力として大きいと見てて。

風景としては一見落ち葉をせっせと拾い集めまくってる綺麗好きな人なんですけど、実は効率のよい個人蒸留の手法だったりするんですよね。
そんなこんなで案外同じ林業の界隈の中でもそこまでハードな雇われ仕事にはならないよねーと思ったおいらです。

そんなことを考えながら、飛び散ったアカエゾマツの葉っぱを拾い集めてましたとさっ。
切らない林業の思考実践回でした!


若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。