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炎の魔神みぎてくんのほん

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卓上遊技再演演義シリーズでも活躍するみぎてくん、陽気で元気、食いしん坊でドジな炎の魔神族、みぎて大魔神ことフレイムべラリオスが人間界に留学!相棒コージや講座の仲間と繰り広げるほの…
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2022年5月の記事一覧

炎の魔神みぎてくん グルメチャンネル ⑦「そのね…メイク取れちゃうと、その…」

7.「そのね…メイク取れちゃうと、その…」  というわけで、「ミラージュ・ド・バビロン」の「お昼のランチコース」ロケは、みぎてにとっては酷寒の、それ以外のメンバーにとっては酷暑の中、とりあえず続行ということになってしまった。困ったことにコース料理というのは、目の前の料理を平らげてしまったとしても、適当な時間になるまでは次の料理が出てこないものなのである。ということは、たとえ室温が三十度を超えようが、最後のデザートが出てくる「決まった時間」まで、全員脱出不可能という恐ろしい事

炎の魔神みぎてくん グルメチャンネル ⑥「そんなにびびることないわよ」

6.「そんなにびびることないわよ」  ポリーニの持ってきたジャケットというのは、ベージュの少し分厚いカジュアルなものだった。まあベージュという色はもともとフォーマルな色ではないので、コージのような学生でも使いやすくて悪い色ではない。実際カジュアルジャケットの好きなディレルは、ちょくちょくこんな色の服を着てくる。しかしカジュアルであってもジャケットはジャケットであるから、ネクタイさえ(これもカジュアル風の柄で)つけてしまえば、一応こういうお店でもOKということになる。  しか

炎の魔神みぎてくん グルメチャンネル ⑤「ふっふっふ、だと思ったわ。みぎてくん」

5.「ふっふっふ、だと思ったわ。みぎてくん」  なんとか無事に(といってもまったく無事ではないが、番組としては一応無事である)銭湯ロケを終えた一同は、さっさと隣のお好み焼き屋のロケを済ます。もちろんシンさんにしてみればセレーニア番台事件はかなりのショックだったのは間違いないのだろうが、いつのまにやらまたさっきの調子に戻っている。 「ほんとにすいません。妹が勝手なことして…」 「しょうがないしょうがない。まあお風呂屋さんは脱ぐものだし…でも気になるんだけど、妹さんしょっちゅ

炎の魔神みぎてくん グルメチャンネル ④「うわっ!なんで女の子がっ?」

4.「うわっ!なんで女の子がっ?」 「あれ?あれがうわさの?…うっひゃあ~、でっかいです!ちょっと見上げるくらいの背丈ですよ!魔神ですよ奥さん、ほんとに魔神です!」  プロデューサーの合図と同時に、でっかいビデオカメラのスイッチが入る。研究室にレポーターが潜入するシーンの撮影開始である。と、さっきまではちょっと芸能人にしてはおとなしいかなという感じだったシン元選手が、こんど大げさなほどのアクションでこれまた大げさな台詞とともに入場してくる。あまりの豹変ぶりにこっちが驚くほ

炎の魔神みぎてくん グルメチャンネル ③「こんなときくらい素敵な服着るわよ」

3.「こんなときくらい素敵な服着るわよ」  ロケの当日の朝は、昨夜までのしとしと雨がうそのような、素敵な晴天だった。もちろん春なのでいささか霞がでているのだが、雨の日にぬれながら街角案内という最悪の条件は避けられたわけである。もちろんのことだが、みぎては雨が苦手である。普通の人ならずぶぬれになって風邪を引く程度なのだが、この魔神の場合代わりに軽いやけどになってしまうらしく、とにかくひりひり痛いらしいのである。(温度が低いのだから凍傷かもしれない。)だから雨の日の外出ともなれ

炎の魔神みぎてくん グルメチャンネル ②「じゃあ特別に皆さんにご紹介しましょう」

2.「じゃあ特別に皆さんにご紹介しましょう」 「みぎてくんがっ?それちょっと…」 「せ、先生っ、それさすがにまずいんじゃ…」  教授室はさっきまでのほのぼのとした雰囲気はどこへやら、大騒ぎとなった。それはそうだろう…テレビの取材があるというだけで結構な騒ぎになるのはあたりまえだというのに、先生ではなくみぎて、つまり彼らの同輩が取材されるのである。盛り上がらないほうがおかしい。(ひょっとすると彼ら自身も取材されるかもしれない。少なくともポリーニはそれを期待している様子があり

炎の魔神みぎてくん グルメチャンネル①「みぎてくん、テレビに出れるわよ」

1.「みぎてくん、テレビに出れるわよ」  大学の講座というものは、朝に学生と教職員が登校して、それから丸一日の間研究したり、論文を読んだり書いたり、授業に出かけたり、ある意味まったく不規則なサイクルで動いているものである。各人がそれぞれ授業の時間や研究の時間が違っているし、当然いろいろな雑用もある。時間を合わせる必要があるイベント(研究発表の練習会とか、論文輪読会とか)がなかったら、本当に転々ばらばらの生活となるのは自明であろう。  そういう意味では、コージの通っているバビ

炎の魔神みぎてくん 大学案内 ⑥「ま、少しはあたっているところも」

6.「ま、少しはあたっているところも」 「…コージ、占いマシンって何するんだよ?」 「そりゃ占いだろ?でもなぁ…」 「なんだかいつに無く非実用的な発想って気がしますねぇ…」  みぎてもコージも、そしてディレルすら今回のポリーニの発明品には困惑の色を隠せなかった。ともかくしょぼい…なんというか、実用品としても全然役に立たなさそうだし、斬新さという点でも物足りない。第一これだと、ゲーセンにあるゲームマシンと同じようなものである。発明品というからには、なにか別の売りがあるのだろ

炎の魔神みぎてくん 大学案内 ⑤「これが乙女心をつかむ秘訣なのよ!」

5.「これが乙女心をつかむ秘訣なのよ!」  一同が講座に戻ったのは、もう四時半を回ったころである。日の短いこんな時期だから、空はすっかり薄暗くなっている。もっとも天気予報では当初午後は雨とかいうことになっていたにもかかわらず、なんとか降りださなかったというのは本当に幸いである。小雨の中で部活の見学などとなっては最悪である。  部屋に戻った彼らは、暖かいコーヒーを入れて暖を取る。真冬というわけではないが、日が沈んでくると急速に寒くなる。そろそろストーブを焚きたくなる季節なので

炎の魔神みぎてくん 大学案内 ④「魔界のかぼちゃって人を」

4,「魔界のかぼちゃって人を」  翌日の朝がやってきた。天気は秋にもかかわらずどんよりと曇りである。寒冷前線がやってきているということで、午後からは冷たい雨になるらしい。まさしく今日のコージたちの気分を映し出したような寒々しい天気だった。  せっかくのディレルの策略で、「発明品発表会」が回避されると思ったのに、もろくも計画失敗なのである。今までも何度と無くひどい目にあっている彼らに、明るい気分になれというほうが無理である。だからといって仮病を使って学校を休む…という芸当がで

炎の魔神みぎてくん 大学案内 ③「まさかわざとじゃないでしょうね!」

3.「まさかわざとじゃないでしょうね!」  朝になればいつものようにコージたちは学校へ登校である。この作業は既にコージにとっては六年になるので、新たな感動も何もあったものではない。これはおそらく相棒のみぎても同じことなので、毎朝二人は馬鹿な話(昨夜のテレビとか、今朝のニュースとか)をしながら朝飯を食って、それから仲良く出発なのである。雨が降ろうが雪が降ろうがこれは同じである(みぎては雨の日は情けない顔をしているが)。  もっとも今日の話題は当然昨夜の「マルス少年講座見学」に

炎の魔神みぎてくん 大学案内 ②「大学ってこんなところだって誤解されると」

2.「大学ってこんなところだって誤解されると」  コージ、みぎて、ディレル、そして甥っ子マルスの四人は、銭湯を出ると早速近くのファミレス…ファミリーレストランへと向かった。銭湯で結構長話をしていたということで、既にすっかり日が沈んで星がちらほらと見えている。さすがは晩秋である。ちょうど空腹になる時刻だからファミレス行きに異論はない。  実はファミリーレストランというのは、初対面の人と一緒に会食するには非常に都合がいい。ともかく料理の種類が多いというのが最大の利点である。つま

炎の魔神みぎてくん 大学案内 ①「甥っ子。姉貴の子供だよ」

1.「甥っ子。姉貴の子供だよ」  バビロン市の旧市街というのは、旧城壁の内側を指している。まだこの街がここまでの大都会となる前からある地区で、当然街並みも古い。さいころ大通りにせよ、バビロン大学周辺の学生街にせよ、整然としたビル街というには程遠い雑然とした街並みなのである。旧城壁の外側に開けている新市街や、ましてや最近ベッドタウン化が著しい郊外地区と比較すると、よく言えば歴史の風格、悪く言うと生活感に薄汚れた下町の雰囲気が色濃くなってしまう。まあもちろん街の中心街なのだから