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学校の大問題

 自粛はできても自律できない「日本の教育」。

 コロナ禍での「自粛」。緊急事態宣言のもと、「人と人との接触を8割減らす」という方針が出た。欧米のような強力な法的根拠のあるロックダウンではなく、あくまでも「自粛」の「要請」。にもかかわらず、ほとんどの日本国民は規則を守って生活してきた。これは素晴らしいことで、日本の学校教育のシステムが大きく貢献している。先生の指示を守る、定期テストを頑張る、集団の「和」を重視する、などの教育によって「指示を期限内に正確に処理する能力」が磨かれてきた。

 一方で、コロナによって「未知なる状況にも対応できる能力」が求められている。自分自身の行動を自分で考える、シンプルな言葉で表すと「自律」。「自粛」を乗り越えて「自律」のステージに立つことが求められる時代になっている。現在の学校教育では「自律」についての学習は不十分であると著者は指摘している。

 著者は、「自律」を育む教育として「ブルーム・タキソノミー」という教育目標を紹介している。タキソノミーとは「分類学」という意味の単語で、1973年にアメリカの心理学者のベンジャミン・サミュエル・ブルームが考えた、教育目標の分類学である。著書では、これをベースに今後の教育を提言している。

 ブルームタキソノミーは「認知領域」「情意領域」「精神運動領域」の3つ設定されている。「自律」とは、自分の価値観をはじめとした「自分軸」に沿って意思決定すること。そのガイドラインことがブルーム・タキソノミーである。

 コロナ禍を例に挙げると、今示されている数値や状況を「理解」「応用」し、自分の行動の周囲への影響を「分析」する。どこまではよくてどこからがいけないのか判断する。他者と意見交換をして、自分の行動が適切か「評価」する。自己決定は「創造」といえる。

 現在の学校教育は、対面授業で先生から聞いたことを「記憶」して、定期テストで「理解」力を測る。問題によっては、教科書から覚えたことを「応用」し解くものもあるが、テストで偏差値を測れば終了。テストの点数が高いほど一流大学に進み大企業に就職できるため、いつしかテストのための学習になっている。よって、多くの学校では「分析」「評価」「創造」の段階までの教育を実践していない。

 対照的に挙げられていたのがYoutuber。まず、動画をつくることからスタートするので「応用」から始まる。推測して実際にやってみる。動画ができたら作品を分類し、他の動画を見比べて「分析」する。構造を把握したり類推するうちにメタ認知できるようになり、編集を工夫しようとか、こうしたほうが視聴回数が伸びるんじゃないかとか、仮説を立てながら検証を進めていく。それによってオリジナリティのある動画を配信、「創造」することができる。

 近年、Youtube人気は急上昇しており、大企業の管理職クラスの収入を稼ぐYoutuberも少なくはない現状だ。この流れはコロナ禍によってますます加速することが予測される。学校教育によって、幼少期からブルーム・タキソノミーに沿った学習ができれば、未知なる状況にも対応できる自律した大人になれるのではないだろうか。

 本書では、学校の問題として「ICTの遅れ」に関しても言及しており、ブルーム・タキソノミー教育を進めるにあたり欠かせないツールであると語られている。その点については、また別のnoteでまとめていきたい。

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