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昼の月

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記事一覧

分別

どうしょうもなく惹かれる

衝動に駆られる

脆さが崩れ落ちる一歩手前の心臓の痛みが

今ではないと一息飲む

いつしか分別がつくようになる

理性が効くようになる

その状況すらまた楽しめるようになる

空っぽのままで溺れぬように

今はただ静かに息を吸う

瞳の奥が時を捉える

秋

だんだんと夜が冷えてきて
毛布を出した

ひんやりとした夜風に
ふかふかに包まって早寝

毛布の温さと顔頭に当たる冷気で目覚め

朝は久しぶりの清々しい秋空
大きく深呼吸
肌寒い朝の空気
散歩
長袖のシャツが心地よい

近所の野良猫と挨拶交わし
仕事場へ

昼には甘栗を食べ
今年の梨はまだかと同僚と話す
外からの風と日差しにうとうと昼寝

鞄を下げ
疲れが溜まった肺に涼しい酸素が駆け込む
オレンジ

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予期せぬ美味

まーたなんか買ってきた

あたしゃ食べない
と言いつつも
家に置いてあると
どんなもんかとつまんでしまう

普段は食べない甘いものでも
誰かが好きと言えば
少しは食べたくなるのが性だ

何年ぶりだろうか
コーンフレーク
薄く砂糖がまぶしてある

さてこれは食べものか飲み物か
牛乳は飲み干すから
いつもの湯呑みに投入

あら美味しい

食わず避けの食べ物も
案外美味かったりする

ザクザクバリバリ

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蝉の亡骸

夜道

何か蹴った

歩幅と共に背後で鳴く

何することもできなくて

死を刻む音に別れを告げる

昼間にはあんなに力強い声も
段々と か弱くなり
日毎に亡骸は増えていく

8月のせいか
これが人間の屍だったのかと想う

夏に生き夏に死ぬ

涼やかな風

誰かの息吹が囁いた気がした

蝉のいない夏

土にポトリ

歩道にカラリ

数歩行けば植木の枝に

ひっそり形を残して去っている

子供の時分 夏が来ると

一体何匹いるんだってくらい

あちらこちらで鳴り響いていた

いまや耳を澄まさなければ通り過ぎてしまう

そのくらい蝉の音が減った

見渡せばビル マンション 道路 駐車場

アスファルトやコンクリートに

寝床を奪われた都会の夏

なんだか

寂しいなぁ。

かきごおり

かきごおり

初めて夏が楽しいと思った

はじめての 少し高くてお洒落なかき氷

軒先の間からテーブルに差し込む日差しと

ビルの間から見える午後2時の夏の空

少し黒みがかった反射した窓に映る雲

生ぬるい熱風が体を包み 

銀座の道沿いには等間隔で若々しく立つ青柳

かき氷がテーブルに届く

高く積まれた氷の上に

どろんとかかった求肥にきなこ

黒蜜抹茶のソースをかけて

下からすくって口に入れる

美味

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インドアの1日

人にまみれた生活を長い間していると

自分の声が消こえなくなってしまう

一人で過ごす1日

自分の時間は大切

読んだり 作ったり

書いたり 片したり

想ったり 考えたり

洗ったり 縫ったり

あとは

たくさん食べて

たくさん寝る

朝のパパ

早朝電車

向かい側に

赤ちゃん抱いた 

スーツのサラリー

産まれて数ヶ月の小ささ

我が子を見ながら

ほっぺぷにぷに

指でつんつん

パパの指をつかもうと腕を動かす

つんっ

朝焼けに包まれる

静かな幸せがそこにある

会いたい

会いたい人がいる

会いたいという理由だけで

会いに行っていいものだろうか

散歩しませんか?

どこか遊びに行きませんか?

紫陽花 見に行きませんか?

少しだけでいい

用はないけど

ただ隣にいたいだけ

軽さの重さ

ガチガチ凝り固めるより

Tシャツジーパンぐらいの身軽さと

頭の回転のスピードのほうが

人生大事な気がしてきた

嫌な女

仲良くなったと思って

自分にそのつもりがなくとも

お互いの畑まで入っていると

知らない間に

嫌な女という分類にカテゴライズされている

あっ 

シャッターが閉じる音

何にも言わないでおこう

家のない生活

家のない生活

もいいな、と

モノも持たず

いろんな地で転々と暮らす

うむ。

旅から戻ったらやるだけやってみようか

調べてみよう。

期待値キャパオーバー

こんな気持ち無駄だって想う

相手に期待するなんて烏滸がましい

期待したところで

何もできない自分に落ち込むばかり 

見えない未来に嘆くばかり

分かっていても

やっぱりどこかで何か期待してしまう

それでいて生きるのが

ちょっぴり楽しみだったりする

仕方ないなぁ自分 

なんて思いながら

雨上がり

雨上がりの夜風が気持ちいい

冷たい湿り気が真昼の熱りを晦ます

薄く流れる雲とその先に光る星空

どれくらい先だろうか

木々を越えて

静かにエンジンが響く

今日も どこかで誰かが生きてる