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今の出版界に必要な人材は「優れた編集者」より「最強の商人」!?

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。

正直、日本のコンテンツ制作力は、すごいと思います。

日本の書籍は、中国や台湾をはじめとするアジアでも人気。たとえば、日本で重版していないのに中国版のオファーが来たり、東洋医学の翻訳本をそっちが本場であろうはずの中国からオファーされたりします。

これは一例に過ぎませんが、とにかく、書店に並ぶ多彩なラインアップを眺めていると、きめ細かいこだわりが詰まった日本の書籍編集力はすごいな〜と、同業ながら感心しています。

書籍に限らず、漫画やアニメ、音楽、映画etc.……あらゆるコンテンツのレベルは非常に高いし、海外でも人気です。これら世界での反響のニュースを見るたび、日本人として誇らしい気持ちになります。

なのに……なぜ、儲かっていないんだ!


コンテンツビジネス、特に末端のつくり手側は一部を除いて儲かっていません(儲かっていたらすみません……)。

制作の予算は低いし、給料も安い!

つくり手が儲かっていない理由として、「だって、コンテンツが売れてないんだから、予算や報酬が少ないのは仕方がない」というのが正当な答えとして一般的です。

それを言われると、ぐうの音も出ません……。

なぜだ! ホワイジャパニーズピーポー!?


なぜ、あんなにハイクオリティのアニメを制作する日本のアニメーターたちの報酬が安いのでしょう? 

なぜ、何十万部を超えるベストセラーをたくさん出しても制作費や報酬が安いのでしょうか?

なぜ、世界から評価されるコンテンツをつくっても、我が(日本のクリエイターたちの)暮らしは楽にならないのでしょうか?

商売が下手なのかも!


なんか、最近の日本は世界と比較しても「商売がめちゃめちゃ下手」ではありませんか?(単なる個人的な雑感なのですが……)

制作費が安い! 報酬が安い!

でも、コンテンツをつくるクリエイターたちは、「創る」ことが大好きなので、コツコツ、ひたすら面白いものを目指して頑張っています。

出版界もこういう「よきクリエイター」タイプの人材がほとんど(ではないでしょうか?)。私もそうですが……。

本が大好き。本づくりも大好き。面白いことが大好き。

しかし!

それだけで幸せ……とは言っていられない状況になってきました。

「本が売れない! 本屋が減っている! コンビニの本棚完全撤去!?」という出版には厳しさの増す状況において、コンテンツづくりしかできない「よきクリエイター」タイプの人材は、とても無力です。

あくまで個人的な意見ですが、今出版界に必要なのは「商魂」。貪欲に儲けようとする「最強の商人」的人材が必要なのではないかと。

たとえば、本の情報を必要としている人がいても、その人にちゃんと本が届いているのか、という問題があります。情報を欲していても、書店に足を運ばなければ、読者と本がマッチする機会はありません。

さらに、詳しくいうと、お肉のレシピ本を必要としている人の多くは、書店にはいません。小売店の肉売り場にいる人のほうが圧倒的にニーズは高いと思います。

筋トレの情報を必要としている人は、ジムにいます。
健康情報を必要としている人は、医療施設にいます。
ランニングの情報を必要としている人は、シューズ売り場やマラソン大会の会場にいます。

本を必要としている未知の読者を本気で掘り起こそうとするなら、書店を飛び出して新たな販路を開拓し、こちらから読者を迎えにいかないといけないのではないかと思います。

現実的には、取次や書店さんとの関係、再版制度とか、いろいろ既存のルールや縛りがあって動きづらいのかもしれません。

だからこそ、「そんな常識なんてぶっ壊してやるぜ!」的な最強の商人の登場を待ち望んでいます。

本が必要な人に本を届ける。
優れたコンテンツを世界に持っていって高値で売りつける。

そんな最強の商人こそ、今の出版界はもちろん、コンテンツビジネスの世界に必要な人材なのではないかと。

無料コンテンツでさえ、ビジネスとして成立させるのは厳しいとされる現在。AIの進歩など、コンテンツビジネスそのものが揺れている状況ではありますが、最強の商人なら、むしろそこにチャンスを見出してくれるに違いありません(笑)。

自分には、そんな商才がこれっぽっちもないので、ゴリゴリの他力本願で申し訳ないのですが、心ひそかに救世主の登場を待ち望んでいます(笑)。


文/編プロのケーハク

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