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楽天ブックス、本屋大賞、そして『ダ・ヴィンチ・コード』。出版界の一大イベントに立ち会って

こんにちは、元塚Bです。
(塚Bは中央公論新社を退職し、フリー編集者の元塚Bとなりました)
今回は、ネット書店や本屋大賞の立ち上げなど、業界の歴史に残る様々な一大イベントに立ち会ってきた、古幡瑞穂(ふるはた・みずほ)さんにお話を伺いました。

日販から楽天へ出向


古幡さんは大学卒業後、日本出版販売(通称、日販・ニッパン)に入社。
日販とは、出版社と、全国の書店とを結ぶ出版取次の最大手です。
古幡さんは、紀伊國屋書店新宿南店の営業を担当することとなり、そこで出版業界の基本を覚えていきます。
ところが入社4年後に、なんと楽天への出向を命じられます。
そこで、のちの「楽天ブックス」の立ち上げに携わることになったのです。
時は2000年。あのアマゾンが日本に初上陸した年。ネット書店など、まだまだ未知の存在でした。
古幡さん自身、出版業界からIT企業というまったくの異業種での勤務に戸惑いながら、奮闘していくこととなります。

新しい文芸賞を作る!


そうしてキャリアを積んでいくなかで、古幡さんは複数の出版社の社員や書店員たちと、夜の飲み会などで語らうことも増えていきます。
そこで話題になったのが、文芸書の売り上げが落ちている、ということ。
さらに2002年、第128回の直木賞が該当作なしとなります。
この時、候補作だった横山秀夫氏の『半落ち』の選評をめぐり、横山氏が直木賞決別宣言をしたことが話題に。
そうした流れを受けて古幡さんたちは、既存の文芸賞とは異なり、売り手である自分たちが、売上に結び付くような賞を立ち上げる必要があるのではないか、と考えるようになります。
そうした問題意識に業界の有志たちが集まり、「本屋大賞」の立ち上げへとつながっていきました。

『ダ・ヴィンチ・コード』を仕掛ける


3年後、古幡さんは日販に戻ります。
ここでは、売上データを基に、出版社・書店と連携しながら、本の売り伸ばしを図る部署の担当に。
そこで古幡さんは『ダ・ヴィンチ・コード』のヒットに携わることになるのです。
ダン・ブラウンの2作目の翻訳書として予定されていた本作ですが、当初はそこまで注目されていたわけではありませんでした。
しかし、ゲラを読んで「これは面白い!」と思った古幡さんは、会社で「これをどうにかしてベストセラーにしたい」と相談、版元の角川書店に交渉します。
“日販で買切るつもり”になったような特別な契約、そして特別な重版をもって配本部数を確保し、大々的な店頭展開に入りました。
その結果は……皆さんもご存じの通り。
これが古幡さんにとって「仕掛け販売」の最初の成功体験となったのでした。

人と人とを繋いで


その後も、本屋大賞の受賞作はじめ、多くの大ヒット作を仕掛けてきた古幡さんですが、この2022年3月に20年以上務めた日販を退社。
「私が取次にいて見てきたことは、出版業界の一部でしかない。自分で本を編集するといった、特別な技術を持っているわけでもない。けれど、何か新しいことを始めようと思った時に、人と人とをつなぎ合わせるだけでも大変なこと。その『繋ぎ』の部分で、自分がこれまで経験してきたこと、得てきた知識を役立てていきたい」
出版社、取次、書店という枠組みを越えた、シュッパン業界における古幡さんの新たな活躍が始まります。

文◎元塚B

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