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難民少年(のおしっこ)をすくう

こんにちは。塚Bです。
前回に引き続き、『婦人公論』時代の忘れらない取材について書きたいと思います。
(ちなみに、前回の記事はこちら)

アフリカから来た難民一家

それは『婦人公論』2017年8月22日号に掲載した「ルポ日本の難民」という企画で、アフリカ某国から日本へ逃れてきた女性への取材でした。
紹介して下さった認定NPO法人「難民支援協会(JAR)」さんから聞いた事前情報によると、小さなお子さんが2人いるので取材時に連れてくるとのこと。
ちょうど私の娘と同世代の子たちのようだったので、インタビューはライターさん、通訳とNPOの方にお任せし、私は子どもたちのシッター役をすることに。
取材スタッフとともに待ち合わせ場所へ向かいました。

やんちゃボーイズ

待ち合わせ場所に、パーマヘアの大柄な女性と抱っこされた男の子、そして元気いっぱいの少年が走ってやってきました。
彫の深い顔に大きな目をキョロキョロさせ、とても表情豊か。
あまりの可愛いらしさに、スタッフ一同笑みがこぼれます。
早速、近くの喫茶店に入って取材開始。
ボーイズは、日本の同年代の子たちと同程度に日本語でコミュニケーションができるようです。
私が持参したスケッチブックにクレヨンで「仮面ライダー」を描くと、目を輝かせて大喜び!
(よし、心をつかんだ)
と内心ガッツポーズをし、ボーイズたちと一緒にお絵かきをしていました。

おむつ替え

取材は2時間ほど。
その間お絵かきしたり、お散歩したりしつつ、途中、ボーイズはおしっこへ。
長男は自分でできるといいますが、次男坊はまだオムツ。
そこで、ママのバッグから替えのオムツをもらって喫茶店のトイレを借ります。
オムツ替え用の台はありませんでしたが、次男坊は自分で立てますし、いわゆる「パンツタイプ」のオムツなので、なんとか立たせたまま替えようと汚れたオムツを脱がせると……
表情ひとつ変えぬまま、次のおしっこを放つ次男坊。
私は咄嗟に手で受け止めるもどうにもならず、床がびしょびしょになってしまいました。
もちろん喫茶店に迷惑をかけるわけには行かないので、トイレットペーパーとウェットティッシュで綺麗に掃除し、無事、オムツ替えも出来ました。

ところでオムツ替えの時に気が付いたのですが、次男坊はオムツをウラ・オモテ、反対に履いていました。
日本語が出来ないので、ママが知らなかったのでしょう。
取材後、ママに教えてあげました。

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日本の難民事情

あとでライターさんに聞きましたが、インタビューの内容は実にハードなものでした。
詳しくはここに書きませんが、現代の日本人からは想像も出来ないほどの壮絶な事情を背負い、決死の覚悟で日本に逃れてきた一家なのでした。
ちょっとの間、子どもを預かってくれる人もいない、オムツのつけ方を教えてくれる人もいない。
そんな環境でただひとり、2人の子どもを育てる彼女の苦労は、いかばかりか……。
過酷なインタビュー内容ではあったものの、彼女は久しぶりに母国の公用語で話すことができたこと自体が、嬉しかったそうです。

元々、日本は世界的に見ても難民の認定が非常に厳しい国。
ましてこのコロナ禍により、ますます難民たちを取り巻く状況も苦しくなっているのではないでしょうか。
あの一家が、今も元気で過ごしていることを願います。

(文・イラスト/塚B)

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