![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146977501/rectangle_large_type_2_c15dedbb8cf1c7e3e51036a3865f5552.png?width=1200)
【食の短編小説】 はんぶんこ①
#1 クラブハウスサンドイッチ
道路の反対側にあるファミレスの店内をガラス越しに見ると、家族で遅めのランチを楽しんでいたり、サラリーマンであろうスーツ姿の男性がパソコン作業をしていたり、老夫婦がゆったりと過ごしたりしていて、ファミレスっていろんな小説が詰まってる場所だなと思う。
昨日何気なく見ていたテレビのバラエティで、「ファミレスといえば…?」というテーマでひな壇の芸人が盛り上がっていたのを思い出す。サイゼリヤ、ガスト、バーミヤン。私の住んでいるところにはないけど、VOLKS(フォルクス)をあげてた人もいたな。ま、私はロイホ(ロイヤルホスト)一択なんだけどねと、一人ツッコミをする。
おひとりさまブームが定期的に訪れる中、思い返せば家族と最後にファミレスに行ったのは、小学4年生だった気がする。バレエの発表会終わりに、ご褒美で好きなもの食べていいよって言ってくれて、カッコつけて頼んだのがクラブハウスサンドイッチ。
あれから15年が経つが、クラブハウスサンドの衝撃が忘れられない。字面カッコいいし、食べたことがある人が多くはないから珍しがられて、ひとりで食べるとボリューミー、シェアしながらも楽しめる。ライオンのような迫力と、タコのような柔軟性を含んだ唯一無二の料理だ。
![](https://assets.st-note.com/img/1721042646517-pB8b4IJ0cI.png?width=1200)
カリッというよりしっとりめで耳シッカリのパンに、卵とハム、レタス。コンパクトであっさり、少食だった私でもペロリと食べれる魔法のサンドイッチ。サンドイッチって、旬の果物と生クリームのすっきりした甘みが感じられるフルーツサンドや、新鮮野菜が主役のフレッシュサンドイッチの印象が強いが、クラブハウスサンドはどこかカントリー調で地元を思い出させてくれる。
クラブハウスサンドを思い出したら、久しぶりに実家に帰りたくなった。小さい頃よく外食に連れてってくれた祖母と、久しぶりにランチしたくなった。帰れる場所があるっていいな、帰りを待ってくれる人がいるっていいな。そんなことを思いながら、雨上がりに広がる夕焼けを眺めていた。
******
食体験をはんぶんこしてくれた人
おのまりさん(編集者・ライター)
![](https://assets.st-note.com/img/1721082179128-l0F1zOd9NF.png?width=1200)
おのまり
1996年5月10日生まれ。関西学院大学を卒業後、神戸のソーシャルビジネスの会社に入社。八百屋事業の業務と並行してブログ『おひとりさまアジア生活』を運営。退職後に本格的にライター活動をスタートさせ、2021年にフリーライターとして独立。現在は、編集者としてビジネスやサスティナブルにまつわる取材、採用広報のコンテンツ制作、旅行コラムの執筆などに関わる。
X|note | Blog
この記事が参加している募集
いただいたサポートは、Podacast「人生百貨店」の運営費やいろいろな言葉・感情に出会うための本や旅に使わせていただきます!