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【食の短編小説】 はんぶんこ①

#1 クラブハウスサンドイッチ


道路の反対側にあるファミレスの店内をガラス越しに見ると、家族で遅めのランチを楽しんでいたり、サラリーマンであろうスーツ姿の男性がパソコン作業をしていたり、老夫婦がゆったりと過ごしたりしていて、ファミレスっていろんな小説が詰まってる場所だなと思う。


昨日何気なく見ていたテレビのバラエティで、「ファミレスといえば…?」というテーマでひな壇の芸人が盛り上がっていたのを思い出す。サイゼリヤ、ガスト、バーミヤン。私の住んでいるところにはないけど、VOLKS(フォルクス)をあげてた人もいたな。ま、私はロイホ(ロイヤルホスト)一択なんだけどねと、一人ツッコミをする。


おひとりさまブームが定期的に訪れる中、思い返せば家族と最後にファミレスに行ったのは、小学4年生だった気がする。バレエの発表会終わりに、ご褒美で好きなもの食べていいよって言ってくれて、カッコつけて頼んだのがクラブハウスサンドイッチ。

あれから15年が経つが、クラブハウスサンドの衝撃が忘れられない。字面カッコいいし、食べたことがある人が多くはないから珍しがられて、ひとりで食べるとボリューミー、シェアしながらも楽しめる。ライオンのような迫力と、タコのような柔軟性を含んだ唯一無二の料理だ。


カリッというよりしっとりめで耳シッカリのパンに、卵とハム、レタス。コンパクトであっさり、少食だった私でもペロリと食べれる魔法のサンドイッチ。サンドイッチって、旬の果物と生クリームのすっきりした甘みが感じられるフルーツサンドや、新鮮野菜が主役のフレッシュサンドイッチの印象が強いが、クラブハウスサンドはどこかカントリー調で地元を思い出させてくれる


クラブハウスサンドを思い出したら、久しぶりに実家に帰りたくなった。小さい頃よく外食に連れてってくれた祖母と、久しぶりにランチしたくなった。帰れる場所があるっていいな、帰りを待ってくれる人がいるっていいな。そんなことを思いながら、雨上がりに広がる夕焼けを眺めていた。


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食体験をはんぶんこしてくれた人

おのまりさん(編集者・ライター)

おのまり
1996年5月10日生まれ。関西学院大学を卒業後、神戸のソーシャルビジネスの会社に入社。八百屋事業の業務と並行してブログ『おひとりさまアジア生活』を運営。退職後に本格的にライター活動をスタートさせ、2021年にフリーライターとして独立。現在は、編集者としてビジネスやサスティナブルにまつわる取材、採用広報のコンテンツ制作、旅行コラムの執筆などに関わる。
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