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ぼくはだあれ? (創作童話)

「ぼくはだあれ?」は2014年10月に、絵本の原作として描いた作品です。いずれ出版したいと思いつつ発表の場を見つけることなく眠っていた冷凍保存作品です。挿絵はいずれ。


ぼくはだぁれ?

ぼくは、いぬやまりょうへい。
もうすぐ 8さいになるよ。

めがおおきくて、まるいかおの ままと、
ふといまゆげと、おおきなくちの ぱぱを
まぜたような かおをしているって
よくいわれるよ。

ぼくはだあれ?

いぬの たろーと、とってもなかよし。
たろーは、もふもふしっぽが かわいいよ。
もちろん、おふろも ふとんも いっしょだよ。
たろうは、ぼくが うまれるまえから
おうちにいたんだって。
 
ねぇ、まま

なぁに? りょうちゃん

たろーの ぱぱとままは どこにいるの?

あら、なにをいってるの?
りょうちゃんのぱぱとままが、
たろーちゃんのぱぱとままよ。
たろーは りょうちゃんの
おにいちゃんなんだから。

えーっ 
たろーは、ぼくより ちいさいのに
おにいちゃんなの?
それに、ぼくと ぜんぜんにてないよ?

あらあら、かわいいおめめとか
おこられたときに、しゅんと しちゃうところとか、

そっくりじゃないの。

にてるのかなぁ
かがみのまえで ならんでみたけれど やっぱりちがうと おもうんだけどなぁ… たろーは、もふもふしっぽを ふりながら こっちをみてる。


ねぇ、ねぇ、まま

なぁに? りょうちゃん

ぱぱとままが けっこんしたから
たろーがうまれたの?

そうよ。あたりまえじゃない。

じゃぁさ、じゃぁさ、どうして、たろーは
ぱぱにもままにも ぜんぜんにてないの?

あらあら、しらなかったの?
うふふ、じつは、ままもぱぱも
しっぽがはえてるのよ。

えー、うそだうそだ。
いっしょにおふろにはいったときに みたけど
もふもふしっぽなんて はえてなかったよ?

あらあら、そんなに きになっちゃうの?

きになっちゃうよ。
きになっちゃって ねむれなくなっちゃうよ。

まぁまぁ、それはたいへん。
じゃぁ、続きは、ぱぱがかえってきて、ごはんのあとでね。
それまでりょうちゃんは、たろーちゃんと なかよくあそんでなさいね。

ままはそういって、ごはんのしたくを はじめちゃった。

ねぇ、たろー、ほんとに
ぼくのおにいちゃんなの?



たろーは、いつもみたいに 
もふもふしっぽをふって 
くーんくーん、わんわんって…
もう、それじゃわかんないよー
ぼくは、あたまが ぐるぐるしちゃう。

ぐるぐるしちゃうから、こうえんで
おもいっきり はしりまわる。
たろーも はしりまわる。
かけっこじゃ、たろーには かなわない。
かけっこじゃ、たろーは、おにいちゃんだね。

でもかぞくのなかで、たろーだけがもふもふ?

ぴんぽーん

ぱぱが かえってきた。

ぱぱ、おかえりー。

おかえりなさい。
きょうも おつかれさまでした。

ただいま。りょうくんも、たろーも
よいこにしてたかい?

いよいよ ごはんだ。
このあと、ぼくのあたまのぐるぐるが
すっきりするのかな、とおもうと
なんだか ごはんのあじがわからないほど
どきどきしちゃう。

あらあら、ちゃんとたべないと
りっぱな おとなに なれなませんよー。

しっかりたべて おおきくならないとな。

だって、ぼく、きになってきになって。

そうか。ままから でんわできいたよ。
たろーのこと、しりたいんだってな。

うん。もふもふじゃないぱぱとままから
どうして たろーがうまれたの?

よし。きれいなよぞらだ。
たろーをつれて べらんだに しゅうごうだ。

よるはまだ すこしひえるからと、
ぱぱがもうふを、ままがあったかいみるくを
よういしてくれた。

ぱぱとままのあいだに
ぼくとたろーが はさまった。
そらには きれいなおつきさま。
そとは、すこしさむかったけど
もうふと、ほっとみるくが
あったかかった。

あなた…

ん。わかってる。
さて、りょうくん

なに、ぱぱ。

ぱぱとままは、なにがあっても、

りょうくんのぱぱとままだ。わかるな?

うん。

なんだか、しんけんなこえで 

ぱぱがはなしはじめたから、
ぼくは、ちょびっとだけこわくなって、

ままのてをぎゅっとにぎった。

じつはぱぱとままは、にんげん ではない。

え? なになにどういうこと?

ままが、ぼくのてをぎゅってにぎってくれた。

ぱぱとままは、にんげんのいえで、

ほんとうのこどものようにたいせつにそだてられた

ペットの いぬ だったんだ。

えええええええええええ?

おちついてよくききなさい。
ぱぱとままは、ふたりなかよくおとなになった。
そして、けっこんして、さいしょに たろーがうまれた。
そのとき ままは、こどもをうんだつかれで、からだをよわらせ、ぐったりしてしまった。

かいぬしのふうふは、いっしょうけんめい、ままのおせわと たろーのおせわをしてくれた。そのおかげで、たろーもおおきくなり、ままもげんきになった。

やがて、かいぬしにも こどもができた。
それが、りょうくん、きみだ。

じゃ、じゃぁ、ぼくは、ぱぱとままのこどもじゃないの?

なみだがでそうになって ふるえるぼくを
ままがぎゅうって だきしめてくれた。

りょうくん、そうじゃないぞ。
りょうくんのほんとうのぱぱとままに、わたしたちは、ほんとうのこどものようにそだてられた。だから、わたしたちは、じぶんたちのことを にんげんだとおもっている。そして、うまれたばかりの ちっちゃなりょうくんだって、とうぜん、うまれたときからかぞくだったんだよ。

ぼくのあたまのぐるぐるは、どんどんぐるぐるしちゃうのに、すずしいかぜがほっぺたをなでるので、すこしすっきりしている。

じゃぁさ、じゃぁさ、

ぼくのほんとうのぱぱとままは、どこにいるの? 

どうしてそばにいてくれないの?

こんどは ままがぽつりと はなしだす。
それはね、りょうちゃんの ほんとうのぱぱとままがりょうちゃんをつれて、りょこうにいくとちゅうで、じこにあっちゃったの。

うんてんしていたくるまのまえを よろよろよこぎった のらいぬさんをよけようとして、じこにあっちゃったの。電柱にぶつかって…
ざんねんなことに、かえらないひとになっちゃったの…。

ぱぱがつづきをはなしだす。

るすばんしていたわたしたちは、ふといやな よかんがして、おおいそぎでたくさんたくさんはしった。ようやく おいついたときには、ぎゅっとだきしめられていたおかげで、なんとか ぶじだったりょうくんが げんきよくないていたんだ…。

ぱぱは、きれいなつきを ながめながら、はなしをつづけた。

ままのうでのなかはあたたかだった。

まるで いまみたいに、きれいなつきのよるだった。もうぐったりとしていたりょうくんのぱぱとままは、わたしたちに こういったんだ。

おねがい。おまえたち。りょうくんのことをおねがい…

わたしたちは、ふたりの かおや てを ぺろぺろ
しながら いっしょうけんめいほえた。

わおーーーーーーーーーーーーーーーん
わおおーーーーーーーーーーーーーーん

そして、とうとう、ふたりとも まったくうごかなくなってしまった。

わたしたちは、かなしいきもちがとまらなくなり、つきにむかって、ないたんだ。

わおーーーーーーーーーーーーーーーん
わおおーーーーーーーーーーーーーーん

そのとき、つきから ものすごいひかりがあふれてきて、わたしたちのからだをてらしだしたんだ。

そうして、ふしぎな きらきらのひかりのつぶが、いぬだったわたしたちのからだを りょうくんの ほんとうのぱぱとままのすがたに かえていったんだ。

じゃ、じゃぁ、ほんとうのぱぱとままは、いまのぱぱとままとおんなじすがたなの?

そうよ。でも、

ひとつだけちがうところがあるの。

そろそろかな。

おつきさまがたかくのぼって、
とってもきれいにきらめきだしたとどうじに、

わおーーーーーーーーーーーーーーーん
わおおーーーーーーーーーーーーーーん
きんじょめいわくだから、いっかいだけね。

ぱぱとままは、めであいずしたそのとき
ふたりのおしりから ふさふさのしっぽが
はえてきたんだ。

うわぁ、たろーとおんなじだぁ
ふさふさできもちいいー

ぼくはふたりのしっぽに
ほおずりをした。

りょうちゃん
これからもかぞく4にんで
なかよくやっていきましょうね。

りょうくん。さっきも いったけど
なにがあっても わたしたちは かぞくだ。

うん。ぱぱとままが、ぼくのぱぱとままなんだよね。
そして、たろーがおにいちゃん?

くーんくーん。

そのよるは、4にんでぎゅうぎゅうになって ひとつのおふとんでねた。

ゆめのなかで ぱぱとままが てをふっていた。
きっと ほんとうのぱぱとままが あいにきてくれたんだろうな。

つぎのひ、4にんで、こうつうじこがあったばしょにいって、
おはなを たくさんかざってきたんだ。

ちょっとはなれたところで、おやこづれの のらいぬさんたちにであった。
みんなでこっちにむかって あいさつをしているようだった。

ぱぱとままは、にっこりわらいかけて ぼくのせなかをなでた。

ぼくも のらいぬさんたちに
げんきでねーって、こえをかけた。

ぼくはだぁれ?

ぼくは、いぬやまりょうへい。
だれにもいわないひみつがあります。
ぱぱとままは いぬでした。
おにいちゃんも いぬです。
そしてかぞくみんな なかよしです。

ぼくはきのうで、8さいになりました。



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