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権力者腐敗の心理学①(地位やお金はなぜ人のモラルを低下させるのか)

「国家というものは、下から上へ向かって腐敗が進むということは絶対にないのです。まず頂上から腐りはじめる。ひとつの例外もありません」(銀河英雄伝説 アドリアン・ルビンスキー)

どうも、さいさんです。
今日は地位やお金がいかに人をダメにするのかというエビデンスをベースに「共感力」という心の動きを考えていきたいと思います。


☆ 金持ちと権力者が失うもの

そこでまず注目したのが、エレン・ヘンドリクセン博士の研究
裕福な人々が失う5つの要素として親切、共感、思いやり、貢献、倫理(モラル)を指摘しているものです。

この中で鍵となるのが「共感力」のプロセスにありそうだ・と、自分は考えています。

例えば、ルー・ソロモンはハーバードビジネスレビューへの寄稿【権力を手に入れると思いやりが薄れる】で

「リーダーに最もよく見られる失敗は、詐欺でも、資金の横領でもなく、セックススキャンダルでもない。日々の自己規律にまつわる失敗。そして、エゴと自らの利益を行使してしまうという過ちの方がよくあることなのである」
 
と触れています。
また、ダッチャー・ケルトナーは、17業界800人の人を対象にした調査において、職場で無礼な扱いを受けたと答えた人の半数がそれに対抗し「仕事への努力を惜しむようになった」「仕事の質を落とした」といった結果になったことも指摘しています。

ダッチャーの論文を考えると、国や会社のリーダーが国民や社員に対して無礼な扱いをすると、国民や社員の大半がモチベーションを失い、生産性がガクンと下がっていくのかもしれませんね。

そういえば、経済規模に比べて傑出して生産性の低い先進国がありましたっけ・・。

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☆ 共感力を構成するもの

こうしたリーダーの傲慢さが組織、会社。あるいは国そのものも傾かせていく事は既知といえます。では、こうした地位や収入を得て変わってしまう

「共感力」

とは何か? ということを見ていきましょう。
ダニエル・ゴードマンはリーダーシップにおける共感を三つのカテゴリーで指摘しています。

①認知的共感:他者の視点を理解する力
②情動的共感:他者の感情を汲み取る力
③共感的関心:相手が自分に何を求めているかを察知する力
 
①、②がなければかなりやばい人ですが、③はリーダーがメンバー(部下、仲間、国民等)に与える影響を特に大きくしそうです。
 
というのも、リーダーが相手のニーズに応える時に「それが自分にとってどれだけ重要か」という利害のバイアスを考慮してしまうから。
 
つまり、リーダー(あるいは権力者)にとって、メンバー(部下、仲間、国民等)のニーズを満たす重要さが低いと、彼らは全体の利益よりも個人の利益を優先する可能性が高いことになります。
  
例えば、今から2400年前の中国。
魏の国の将軍・呉起は隣国の秦に対して圧倒的な戦果をあげて国境を守っていたにも関わらず、個人的な権力獲得を優先した政治家の為に魏の国から追放されてしまいます。そして、魏の国は秦からの大々的な侵略を受け、ついには滅ぼされてしまうまでの一直線を辿り始めるわけです。 

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日本でも楠木正成公の進言を用いなかった天皇や貴族の話、特攻という愚かな戦術で戦略の失敗を隠そうとした愚かで安全な場所にいた人々等々と、歴史の至る所にこうした心理バイアスによる悲劇の学びが残っています。

かくして人は、国が滅んででも、自己の利益を正当化し、選択をする生き物という側面もあるわけです。どこかの国が、利己的な判断から国民がつぶれるまで増税して、国が亡びるようなことにならないと良いですね。
 
 
☆ 全体利益の優先というセルフコントロール

ゴールマンは優秀な営業担当者とクライアントマネージャーを対象とした調査で成績が最低だったのは「自分にとって、今この時に一番得となる取引をしよう。それで相手がどうなるかは気にしない」タイプだったと語っています。
 
そして逆に最高の成績をあげた人達の姿勢に関しては、

「私はクライアントの為、そして自分の為に働いている。相手と心から正直に接したい。彼らの助言者として行動したい。自分の手元にある案件が彼らにとってのベストでないなら、正直にそう言おう。その時は売り損なっても関係を強化できるから」
 
と観察しています。日本でも「利他」で知られる稲盛和夫氏の経営哲学に見られるように、こうした成功指標は大いに見習うべきでしょう。
 
その理由は、コーチングスクールの同期で脳科学者の岩崎一郎さんの著作「なぜ稲盛和夫の経営哲学は、人を動かすのか?」からも明らかです。

道徳ジレンマを考えている時の脳活性を調べたところ、道徳心が薄くなっているときほど、次の脳回路が弱くなっていることがわかりました。

①綿密な計画を立てる脳回路
②過去の失敗から学ぶ回路
③自分を俯瞰し、成功をイメージする脳回路

【道徳心を司る脳の回路は失敗を回避するより抜粋】

 
☆ 道徳心が鍵だった!

つまり、道徳心の弱い人は綿密な計画を立てられず、過去の失敗を学べず、成功をイメージ出来ないわけですね。ヤバし!

で、本書にも登場する稲盛和夫氏の名言「人として何が正しいのか?」の大前提には、アドラー心理学でいう所の「全体論」が常に前提とされていることを忘れてはいけません。

「自分の利益を最大にしたいがために、相手の立場を踏みにじるようなことがあってはならない。だからこそ、自分を律する高い次元のフィロソフィを身に着ける努力を怠ってはならない」(稲盛和夫)

と氏が語られているように、

【全体利益優先】

のマインドセットがそこにはあります。そして、そのスタート地点とは「嘘を言うな、人を騙すな、正直であれ」という倫理でもあり、公平さ、公正さといった普遍的な価値観の遵守にあります。

私達がリーダーを選ぶ際には、主観的な正しさや能力や血縁ではなく、こうした誠実さや道徳心の実践者であることのファクトを重視すること。
 
また、併せてそうした人も権力や収入によって道徳心が弱まる可能性が高いことを踏まえておく必要がありそうです。

☆ 長期政権は危険一杯

そう。この点からは、特定少数の権力者による長期政権とはリスクが増大するものでしかありません。

政権が長く続かないから「安定」しないというロジックそのものが違っていて、実は単に「権力による腐敗」のスピードが速かった。

つまり、選ばれたリーダー達の「道徳心」が脆弱過ぎた。
 
それが「不安定」の要因だった・・と言えそうですね。

というわけで、今日はここまで。次回はそのうえでの対策やマインドセットの育み方をやっていきたいと思っています。
 
ではでは!

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