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春助
2023年6月23日 10:33
東京はいずれ海になる。ペトリコールは破滅の匂いがして、この季節は私にある種の安心をもたらす。白濁した夜に、生温い風を受けながら屋上で煙を吐く。ざあざあ。やっと終わるかもしれない。このまま雨が街を侵食し、灰色のビルは風化してゆくかもしれない。あの赤い点滅は今一体何を示すのだろうか。生命の浪費が生む、地上の星。光が滲み出して、私は妙に浮かれている。ジーン・ケリーなら、きっと雨に唄うだ
2023年6月24日 19:32
海は地球の本当のかたちを象徴する。ガイコクというのは存在しない空想世界のように思えて、実はこの大量の水を辿っていけば、全てのガイコクに行き着くのだ。星が本当は丸いことを認識する。真夜中の黒い海では、世界の監視員は眠っている。ガイコクへ行けるかもしれない。我々は地表で偽物の地球に暮らしている。私は偽物の哺乳類である。偽物の太陽と偽物の月に従い、偽物の水を飲んで暮らしている。なにも本
2023年6月29日 19:17
午後3時、室外機。静寂の昼下がりは、まるで丑三つ時のようである。蝉は羽化していないのか、ひとつも鳴いていない。積乱雲は雪の壁のように街を包囲し、田んぼに映る反対の世界に挟まれたそこには、誰もいない。静かである。ただ聞こえるのは、見知らぬ家の室外機から発せられる低周波音だけだ。飛行機は音を立てずに、ゆっくりと空に筆跡を残している。私は宗教を信じない。しかし、このひとりの世界を見る