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【書評】高田 明著「伝えることから始めよう」

ジャパネットたかた創業者の高田明氏の著書「伝えることから始めよう」をレビューします。本書を読み終えて一番意外だったのは、高田氏がこれまで「目標を持ったことがない」と明かしていることです。

高田氏の価値観を3つのポイントに整理して記します。

1.計画を立てず、今を生きる

高田氏が本書を通じて繰り返し訴えているのは「今を生きる。」という価値観です。就職活動にも真剣には取り組まず、親戚の紹介でアルバイトをしていた会社にそのまま入社したそうです。

長期計画や目標を立てるのではなく、目の前の課題に全力で取り組むというのが高田氏のスタイルでした。

私はこれまで目標というものを持ったことがないんですよ。ただ、そのときそのとき、今やるべきことを見つけて、それを一生懸命に自分の能力の200%、300%を注ぎ込んで、取り組んできただけでした。

それは、企業経営についても同様だったといいます。長期ビジョンを描き、マイルストーンを設定していくといったようなアプローチは採ってこなかったことを本書で明かしています。

ジャパネットたかたの経営を振り返ってみると、「長期的なビジョンを持たない積み上げ経営」だったと思います。計画性はほとんどなかったんです。

軸足を置いていたのは、とにかく「今」です。今できることに最善を尽くす。そこから、次のステップが見えてくる。

2.できる理由を探す

いまやジャパネットの代名詞になった生放送テレビショッピングは、業界に前例のないことでした。もちろん、周囲からは猛反対されます。もし放送事故が起こったら、放送免許が取り消されかねないとの指摘も出たそうです。

それでも高田氏は生放送にこだわり、「どうすればできるのか?」を考え、最終的にはそれを実現してしまいます。

生放送だからこそ、お客さまに感動を伝えられると思ったんです。やってみてわかったことですが、生放送ならではの緊張感は話し手の語り口を変えてくれます。臨場感も出てきますよ。そして、それはお客様の共感にもつながって、売上にも反映するんですよ。

また、テレビショッピング用の自社スタジオを建設し、番組制作を内製化しようとしたときにも、周囲から猛反対されたそうです。そもそも、なぜ番組制作を内製化しようと思ったのでしょうか。

背景には、商品のサイクルが短期化がありました。番組制作を外注すると、収録から放送まで2ヶ月弱のリードタイムが必要になってしまいます。それがネックでした。

そこで高田氏は選抜社員を研修に出したり、派遣会社からプロの製作スタッフを受け入れたりしながら、最終的には番組制作を内製化することに成功します。そして、自社スタジオがジャパネットの強みになるわけです。

自社のスタジオを持ったことは、今のジャパネットたかたがある一番の理由だと、私は思っています。スタジオを作っていなかったら、今日佐世保に届いた商品を今日紹介できる体制もできませんでした。

スタジオがなかったら、他のテレビショッピングと似たようなものになってしまい、特色を出すことはできなかったかもしれません。

3.「伝える」のではなく「伝わる」

本書を通じて面白いのは、恋愛の例え話を幾度となく使っている点です。なぜなら、高田氏は恋愛に興味がなく、結婚するまでほとんど女性と付き合ったことはなかったからです。

私は恋愛にあまり興味がない方だったもんですから、女性と付き合ったことはほとんどなかったんですよ。でも、妻と知り合ったときは、すぐにこの人と結婚するだろうと思いました。

にも関わらず、本書では繰り返し恋愛が引き合いに出されます。それは、恋愛の例えがもっとも伝わりやすい、と高田氏が考えたからではないか、そんなことを感じました。

ジャパネット流の伝わるコミュニケーションについては下記noteに整理してあります。


今回は以上です。

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