長い夜を歩くということ 22
彼の仕事が依頼だけで回るようになったのはそれから一年後だった。
前会社のお得意先も「ようやく上司からの許可が降りた」と仕事を振ってくれるようになった。
彼は前のお得意先に断られて以来、連絡をすることは控えていたので、突然のことで驚き、そして、感動した。
彼はこの手のひら返しを恨むようなことは微塵もなかった。彼らの立場や状況、考えを彼は理解していたし、何よりも彼らはもう一度戻って来てくれている。
自分の頑張りが一度切れた縁でさえ、もう一度手繰り寄せてつなぎ合わせることが