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長い夜を歩くということ 27

「ああ、そうかもしれないな。うん。おかしいのかもしれないね」

酒が彼の弱気まで流してくれることはなかった。

飾らない少女の前に、飾らない無様な弱音として、成仏しきれない霊のように流れ出てしまう。

コップの中から水があふれる感覚か、それともバケツの穴から水が漏れ出てしまうような感覚か。そんな風に考えていること自体が無駄に思えてしまう。

「ふ~ん、まあ、そんなことどうでも良いや。それで私の歌、聞いてたの?聞いてなかったの?どっち?」

少女は彼のナメクジのような言葉をつまみ上げ、適当に投げ捨てた。と言うよりも往復ビンタでも食らわすようにはたき落とした。と言った方が正しいのかもしれない。

しかし、その潔さが今の彼にはとてもありがたく、ただの悩み込んだ一人としてここにいることを許された気がした。

彼は呆然と正面のボトル棚を眺めながら言った。

「うん。聞いてたよ。歌のことはよくわからないけれど、花火が上がるみたいに楽しかったり、雨が降るみたいに寂しかったり、どうして同じ人の声がここまで感情を一瞬で操っているのか不思議で仕方なかった。一言で言えば感動したよ。それがまさか、いきなり暴力を振るってくるような少女だとは思わなかったけどね」

彼はテーブルに肘をついて少女に顔を向けた。少女はやっと少女らしく照れて頬を赤くした。

その一瞬は今日見た中で彼女が止まった唯一の時であり、両手は赤のワンピースを弄ぶことで複雑に絡まった感情を消費していた。

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