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せきららインタビュー:アーティストとして生きる Part 2

Guten Tag!
今日は前回の続きでサイトウユリカ氏へのインタビュー後編へ。
彼女の考える「アート」とは。
さらに深堀していきます。

CYCLE No,01

S:シュン
Y:ユリカ氏(以下略称)


5.アートに対する価値観の違い

S:今回帰国してアーティストとして東京ビエンナーレへ参加された経験とカナダ、オーストラリア、ドイツと海外を見て感じるアートへの価値観の違いとかってありますか?
日本だとやりずらいなぁとか、なんかあればぜひ。

Y:そうだなぁ。私は日本ではアートの活動をそんなにしてきてないから。
アーティストとして日本で活動することのやりやすさとか難しさはまだよくわかんないんだけど、今回のイベントとか帰国を通じて感じたのは、やっぱり日本ではアートってまだ難しくて、ていうのは、日本人が意図せず残したものがアートになる。浮世絵とかもさ、今は普通にある旅行の雑誌とかと一緒で景色を絵にして、ここ行きたいなぁとかって一般的に楽しまれていたものだと思うんだよね。だからそもそもかっこいいからとかアートとして書いているわけじゃなくて、のちのち意図せず芸術として認められたみたいな。
日本ではそういう扱いを受けてなかったけど、海外に出て初めてアートにあったり、フィギュアとか漫画もそうだと思う。だから漠然とはしているけど、日本では「これがアートです」みたいなものはすごく向いてないと思うんだよね。

S:すごいわかるそれ。

Y:国民性みたいなものもあると思うんだけどね。自分で自己主張してこれがアートですみたいなものよりは、意図せず自分が納得するまでやってたこととか、やってたことが他から見たらすごいことだったり、私はそれでいいんじゃないかなと思うよ。なんか無理して海外の評価に合わせたり、海外に出そうとしたりすると逆に文化が廃れていくこともあるかなぁって。文化を継承するって地元帰ったときにも難しいって感じたんだけどさ、高齢化が進んで、若い人は都会に出て、インフラもしっかり整ってないから、人口も減っていて、つつじがきれいだった畑ももう野ざらしになって季節も感じられなくて。子供のころ楽しかった祭りもだんだん開催できなくなってきて。だから文化を残すっていうのは本当に難しいことだけど、その先に海外に評価されるものが見えてくるというか。

S:ドイツはそれこそ真逆だよね。継承の街だから。

6.言語とアート

S:これは個人的に気になる質問なんですけど、世界で、海外でやっていくってなったときに、だいたい英語しゃべれれば通じるじゃないですか。たぶんこれは答えにくいと思うけど、言語を習得する過程で、アートの見え方、考え方みたいなものが変わったりしましたか?
ていうのも、作品作ってそれこそベルリンでやったら、ドイツ語で説明しなきゃいけないじゃないですか。日本語と表現するのとは全く違う感覚でものを考えなきゃいけないみたいなところで、自分の作った作品がまた違う見え方ができるみたいなことってありますか?(笑)

Y:(笑)(笑)(笑)
それは作る時?それとも説明するとき?

S:何か作る時だと思う。
たぶん日本語だけしゃべれた時と、英語ができるようになって、多言語できるようになった時で作品の入り方が変わってきたりとか。アイデアやイメージをドイツ語で思い浮かべたり書き留めたりするみたいな。

Y:私が作ってる作品ってやっぱり目で見るものだから、言語の向こう側というか、感覚にアプローチしたい思ってやってるんだよね。言葉にできないことを作品にしているからちょっと難しい質問かなぁ。

S:作品によることかもねこの考えは。

Y:感覚を書き溜めるときとかでもインスピレーションみたいなもので、英語で書かなきゃいけないとかってときはやっぱりあるけどね。言語から受ける感覚はすごい大事かもしれないね。

※メモ帳の字はめちゃくちゃきれいで、イラストもかわいく、うらやましいと思いました。

展示会にて

7.アーティストとして生きる

S:フリーランスビザに切り替えてから、どういう生活をしてるんですか?

Y:どういう生活か。。
私はすごいラッキーで、ほぼ一人暮らしみたいな感じで、400€ちょっとのアパートに住んでる。(笑)

S:やすーーーーー(笑)いいなぁー。

Y:たまたま日本に帰国する人がいて、そこから引き受けたって感じなんだけど、オーナーはアメリカ人とドイツ人で、ベルリンの近くに家を持っててたまに帰ってくるだけなんだよね。
今は割と部屋が広いから、その部屋をアトリエみたいにして使ってるんだけど、これからスタジオ見に行くから、もしかしたらそこに間借りできて、もっと大きな作品に挑戦できるようになるかも。

S:仕事は現状掛け持ちですよね?

Y:そう。フリーランスって基本的にはなんでも仕事できるんだけど、私はいろんなことをやりたくて、同じことずっとて言うよりかいろんなことに挑戦してみたいんだよね。草木染も定期的にやっていきたいと思ってるし。
いろいろ話はもらってるんだけど事務仕事が本当に大変。。(笑)
全部自分でやるから、金額調整とか、スケジュールとか、思ってたよりも大変。。

S:それは全部日本語?

Y:ドイツ語(笑)
現状はお金もらってからプロジェクトを進めるみたいなこととか、ギャラリーでの展示も決まってて、作品も売れるから、売りたいけどわからんって感じ。

S:ギャラリーってどういう流れで作品が決まるの?

Y:キュレーターがいて、そのキュレーターが声をかけたアーティストで展示をするってやり方と、今回私がやる、直接ギャラリーに交渉して、借りて、レイアウトとかも全部自分でできるタイプだね。前者はもうコンセプトとか決まってるからカチカチだけど、後者の方が自由度は高い。
今はもちろん作品作りをメインでやりたいのだけれども、事務作業に時間がとられ過ぎて集中できないのは悩みかな。でももちろん大変なのも含めて楽しんでやってるから苦ではないかなぁ。

S:ちょっとずつアートでだけ生計が立てられるようになってきているという感じですね。
Y:そればっかりは何だろうな、チャンスがあるからやるっていう感じで今までやってきて、そのやったことに対してあとからお金が発生して、何とか食いつないでいってるみたいな感じだけど、私はそれがあってるんだと思う。コツコツ生活のこと考えてってっもちろん大事だけど、そればっかりにとらわれるとアートの方がおろそかになっちゃうし、自分の興味のあることをとにかく行動に起こすとか、ちょっと無理して頑張ってみるとか。そうやってその先にお金がついてくる。まぁ必要な生活費は掛け持ちのバイトの方で工面できるから、お金は心配しなくてもいいように生活はしてるって感じ。ただアート面の仕事の収入がバイトより高くないといけないから。(ドイツにある芸術家を支援する団体へ申請するため)

8.日本人としてベルリンに生きる

S:日本人としてベルリンで生きることはどうですか?アーティストは一回取っ払って、そもそも日本人として生きてる感覚がなかったら元も子もないんだけど。(笑)

Y:(笑)
そうだねぇ。ありがたいなぁと思うことは多いかな。やっぱり先人の人達がやってきた行いとかが日本人の印象を良くしてくれて、「日本人なら安心」って思ってもらえることは多いね。ベルリンだけじゃなくともそれはあったから。

S:逆にネガティブなことはありましたか?差別とか。

Y:文化がマジで違うじゃん。人と何かをディスカッションする文化とかって、日本だとそういう教育受けてませんみたいな。

S:そうだよね。会話の質とかも全然違うよね。

Y:海外だと、何か議題を上げて話し合うって能力がすごい重要で、でも日本が悪いわけじゃないと思ってて、日本人には日本人の良さみたいなのもあって。言葉にできなくても、それこそなんとなくみたいなものとか、あんまりロジカルじゃない体感を通した感覚って日本人は高いと思うんだよね。
だからまぁ2パターンあればいいかなって、海外版と日本版と。
差別に関してはコロナの時を除いてはそんなに経験はないかなぁ。

S:差別が少ないのはベルリンの良さだよね。

9.アートとは

S:あなたにとってアートとは?

Y:なんでもないですねぇ、てかなんでもないと思いたい(笑)
なんか点というか、ものの見方だと思うんだよね。何かを作ってとか作品にしてっていうより、日常を生きているうえでどういう風に見ているかとか、何をどう感じるかとかがアートに感じると思うんだよね。東京ビオンナーレでやった時も、たくさんの人が住んでいて当たり前に過ごしている中でアーティストっていう人がアートってフィルターを通して作ったものがそこに展示されてる。それを見た人が何か普段の生活の中の小さな違いに気付けたり、フィルターを通して生まれたものがまた誰かに循環していくのがアートなのかなって思う。子供がみた空の色とかって、おもしろい色使ってたり、やっぱりものの見方だと思う。それは別にアートってならなくても、もっと単純にどう生きるかみたいな。
なんでもないけど、なんかあるみたいなのがアートだと思う。

Photo by Gino Funari

いかがでしたでしょうか。
思わぬ回答にびっくりしました。

アートは私たちが、少なくとも私が思っていたよりもうずっと身近なものだと感じました。
私はアート、芸術は形のないものだと思っています。だからこそ表現する器に絵があったり写真があったり、
地元で生産されているおいしいお米や野菜だって私の中ではアートです。
インタビューの中で、「意図せず自分が納得するまでやったことがアートになる」という言葉は心に刺さりました。
これからアートにのめりこんでいくためにも、とても有意義で楽しい時間でした。あいまいだった芸術に対する輪郭も少しずつはっきりしてきたような気がします。これからの躍進を願うとともに、インタビュー記事の締めとさせていただきます。一読ありがとうございました!


アーティスト情報

・Yurika Saito
個展開催予定は4月19日〜21日
KuLe e.V.
Auguststraße 10 10117 Berlin
興味のある方はぜひ下記のリンクよりこれまでの作品や活動をチェックしてみてください!
草木染に興味のある方も是非チェックしてみてください!

草木染ワークショップの様子
前回の展示会の作品たち


Paint/Textile/Performance artist Website

Instagram: @yurika_sketch

Facebook

・Gino Funari(フォトグラファー)



それでは今日はこの辺で、
チュース!!


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