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【鹿児島ユナイテッドFC 2021シーズン前半戦まとめ】激動の前半戦を振り返ってみる

2021.3.14 - 2021.7.10
2021 J3 第1節〜第15節

こんにちは。
今回もご覧いただきありがとうございます。

先週の富山戦から中断期間に入り、1週間経ちました。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
この記事をご覧になる大多数の方は鹿児島界隈の方かと思いますが、愛するチームの試合が無い生活は味気無いですね。

あんまり関係無いですが、愛するチームの試合に最も困らない夏を迎えるのはG大阪サポーターの皆さんでしょうか。ACLお疲れ様です。

ガンバは8.9のJ1再開までに6試合こなさねばなんですね。コロナ陽性もあり、ACLもありで帳尻合わせなければいけない期間ですが、ちょっと可哀想です。頑張れズッ友。

と書いてたら、ACL帰還後のコロナ陽性の報せを見ました。流石に災難すぎる。頑張れ、超頑張れ。

さて、話を戻しましょう。
J3はちょうど第15節、各チーム14試合を消化したところで中断期間に突入。

我らが鹿児島の成績と言えば、
5勝4分5敗の勝ち点19!
首位と勝ち点7差の9位!
うーん、物足りない!

去年の追い上げを思い出せばまだまだ分かりませんし、前半戦の激動っぷりや監督交代をして迎えたシーズンであることを考えれば、こんなもんだろうなと思うんですが、チームが優勝・昇格の目標を公言している以上、物足りないと評価せざるを得ません。

選手の質はJ3でも高いと思いますが、チームは何に苦しんでいたんでしょうか?何にトライしたんでしょうか?

この中断期間に1回皆んなで振り返りませんか?
その取っ掛かりに僕の考えてきたことを発信してみますね。というのが、この記事を書くにあたって自分で立てた大義名分です。

というわけで、この記事で書いていくことは僕の私見・偏見・妄想の一部です。まぁそれは、毎レビューのことなんですが。

いろんな形で鹿児島を見てきた皆さんにもまた違った、各々で見えた景色があると思います。

その景色を大切にしていただきながら、僕の意見を捉え方の一つとして聞いていただければ幸いです。

…それっぽいことを言いましたが、後々に自分が振り返りがしやすいように一つの記事にまとめておくか!という整理の意味も大きいです。

昨シーズン終了後にも同じ記事を書くつもりだったんですが、死ぬほど時間を掛けて予習した最終節の秋田が、天皇杯川崎戦に向けターンオーバー。プレビューで触れた大部分が水の泡になって燃え尽きていました()

完勝出来て良かったは良かったんですが、こう…こういうんじゃないやろ…!こういうんじゃないやろ!!!状態になったことを昨日のように思い出します。

…辛かった思い出を振り返っても仕方ないですし、前書き部分なのに早々1000字を超えてきたので、そろそろ本題に移りましょう。

新監督を迎えた2021シーズン前半戦の振り返り。
ご笑覧ください。

プロローグ:オフシーズン

鹿児島は2020シーズン限りで金監督の退任を発表。
新監督の報せは、2020年12月28日にリリースされました。

2020年、横浜F・マリノスでヘッドコーチを担っていたアーサーパパス監督の就任です。この監督人事について、新体制発表記者会見で登尾GMは以下のように発言しています。

(登尾GM挨拶書き起こし)
成果としましては昨シーズン、J3リーグ18クラブ中総得点2位の攻撃力を発揮することが出来ました。我々は攻撃的なサッカーと表現していますが、攻守において主導権を握り、見ている人たちを魅了するサッカーがクラブの目指すスタイルであります。攻撃的なサッカーを主体に置き、継続して結果を出すことが私どもの使命だと思っております。目標を達成するための課題点として、まず失点を減らすこと。次に、得点力のさらなる強化です。まず、失点を減らすことについては、相手陣地でボールの保持率とパス成功率を高めて、相手が攻撃する回数を減らすことを考えています。得点力強化については、ゴールに直結する動きの出来る選手を前線に置くことを考えています。また2つを達成するために、攻守において個人対応力の強化、攻守においての組織オーガナイズ、攻守においての共通理解度を高めることも重要だと考えています。最後にチームマネジメントです。マネジメントと言えば大きな枠になりますが、選手の士気作りや集中出来る環境作り、チームの目標達成のために導くことの出来るリーダーの存在が重要だと考えました。柔軟性もリーダーシップのある人材、鹿児島ユナイテッドFCの組織規模と構造を理解している人材、攻守においてクラブのスタイルを体現できる人材、育成と結果の両方を求められる人材、を重点に置き監督人事を進め、今シーズンよりアーサーパパス氏を監督として招聘する運びとなりました。

活字にすると長いですね。
重要であろう部分を、ざっくりまとめます。

【昨シーズンの成果】
・18クラブ中2位の得点力。
攻守において見ている人たちを魅了するサッカーがクラブの目指すスタイル

【昨シーズンの課題と解決策】
失点減
→ 相手陣地でボール保持率とパス成功率を高め、相手が攻撃する回数を減らす。

②さらなる得点力の強化
→ ゴールに直結する動きをする選手を置く

【パパス監督の選定ポイント】
①柔軟性、リーダーシップのある人材
②鹿児島の組織規模と構造を理解している人材
③攻守において鹿児島のスタイルを体現出来る人材
育成と結果の両方を求められる人材

…といったところでしょうか。

さらに簡素化するとすれば、①クラブが目指す攻撃的なサッカーを体現でき、②失点減のためにボールを取り上げることが出来る監督として招聘されたと言えそうです。

とはいえ、当然この段階で具体的なピッチでの振る舞いは見えてきません。

オフシーズンの具体的な姿がなかなか出てこない中で、クラブが発信したのがTM鹿屋体大戦、中原のゴールでした。

この動画から見えてきたのは以下の流れ。
①左SB砂森がインナーに、トップ下が落ちてビルドアップ。
②両SHは大外で張りながら待機。
③SHへのパスでスイッチが入り、前線の選手がDFライン押し込み。
④空いたバイタルエリアへのマイナスのパスからDH中原がフィニッシュ。

わざわざ動画に出すゴールなので、自分たちの理想形で得点出来たシーンだったんでしょう。特徴的なシーンです。

特に崩しの部分は、所謂「同じ車両で前進する」ポジショナルプレー・ペップ派なやり方というよりは、ポステコグルー体制のFマリノスのように、サイドの質的優位を活かしてオープンな状態で攻め切る、和洋折衷の攻撃を標榜していることが窺えました。

そのFマリノスで指揮するポステコグルーの下で研鑽を積んだパパス監督が、同じようなサッカーを目指すのは驚くことでもないですが、それが確定と見れる情報発信となりました。

第I期:パパス体制

2021.03.14 vs ガイナーレ鳥取 ●2-3
2021.03.20 vs ロアッソ熊本 △2-2
2021.03.28 vs 福島ユナイテッドFC ○2-0
2021.04.11 vs Y.S.C.C.横浜 △0-0
2021.04.25 vs テゲバジャーロ宮崎 ○1-0
2021.05.02 vsいわてグルージャ盛岡 ●1-2
2021.05.15 vs 藤枝MYFC ●0-3

TACTICALista_2021パパススタメン

3.14に鳥取戦で幕を開けた今シーズン。
やはり鹿屋体大戦の動画のように、左SBやトップ下がビルドアップに絡んで、崩しの部分はSHの質的優位に依拠する形となります。

しかしそのため、最前線で構える人数は少なくなり、崩しの部分で苦労したシーズンでもあります。ここはやはり、ビルドアップにて相手を引き付けられない・人数を掛けなければならない実態が影響していたと思います。

「ビルドアップで人数を掛けなければならない」ことについては、CFの起用にも影響しており、鹿屋体大戦やシーズン当初にファーストチョイスだった薗田→下がってビルドアップに絡める萱沼にシフトしていきます。

これで相手の1stライン・2ndラインの突破については成功確率が増しましたが、前線に人いない問題には拍車がかかりました。

また、ビルドアップについてシーズン序盤には、ハイプレスに苦しむシーンが多く見られましたね。

しかし、ビルドアップ構築初年度にあるだろうなと思っていた失点(いわて戦の中原ロストからの失点のような)は少なかったと思います。

これには、大西や白坂のビッグセーブが一つ。
さらには砂森がインナーに入るため、留守にする大外のスペースをSH米澤が爆走して戻れるトランジション耐性があったことも理由の一つだったと思います。

SHが最前線大外で張っている為、SH裏は格好の狙い所になりましたが、彼のスプリント力には助けられました。

米澤の左サイド起用の主因はここだと思っていますが、唯一、その米澤から左サイドを奪えたのが山谷。今後のカギの一つになると思うので、是非とも頑張ってほしいです。

人選についてはもう少し。
パパス体制では、山谷に加え、野嶽寛や山本といった若手の積極的な起用を続けていました。能力を見込んでの起用もあったでしょうが、クラブの求める「育成」の部分を体現していました。

また、ボール保持に重きを置くため、CBは高さで劣る田辺を起用。彼ばかりが悪いわけではありませんが、それに象徴されるようにクロスボール対応などの空中戦では分が悪かったパパス体制でした。

新体制発表での言葉通り、「相手陣地でボール保持率とパス成功率を高め、相手が攻撃する回数を減らす」ことで、失点減を図った今シーズン。

この起用はクラブの戦略レベルから考えて理に適っていますが、そのボール保持に苦慮し、失点減には繋がらなかった印象です。

一方で、ボール保持については少しづつですが成熟していきます。

前から来る相手には、一気にロングボールで前進したり、立ち位置を工夫して2nd-3rdライン間を活用したり、クリーンに前進出来る試合も多く出てきました。福島戦でその兆候が見え、宮崎戦などは精密な前進が出来ていたと思います。

徐々に良い方向に進んでいた矢先の5月28日。
家族の事情により、アーサーパパス監督の退任が発表されます。

パパス体制の戦績は、7戦で2勝2分3敗。
得点は8点(ave1.14)、失点が10点(ave.1.43)となりました。
クラブが掲げた①クラブが目指す攻撃的なサッカーを体現し②失点減のためにボールを取り上げることが出来たとは言えない結果になりました。

ボール保持をもって得点力向上・失点減を図るチームの、肝心なボール保持が未成熟の状態では、そりゃ難しい期間にもなりますね。新体制の序盤なので当然ではありますが。

いずれにせよクラブの戦略上、まだまだボール保持の成熟が求められる状況下での退任となりました。
そんな中、後任の暫定監督はヘッドコーチを務めていた大島康明氏となります。

第Ⅱ期:大島体制

2021.05.30 vs AC長野パルセイロ ○2-1
2021.06.06 vs カマタマーレ讃岐 ●1-2
2021.06.13 vs アスルクラロ沼津 ○2-0
2021.06.19 vs ヴァンラーレ八戸 △0-0
2021.06.27 vs FC岐阜 ●0-1
2021.07.03 vs FC今治 ○2-1

TACTICALista_2021大島スタメン

暫定監督としては、勝ち点積み上げが至上命題。
何かを大きく変えられる期間でもないので、パパス体制の引継ぎ・発展というところが主題となりました。

さらには就任直前の5月15日藤枝戦で砂森が負傷交代、続く5月17日には牛之濱の負傷リリース。さらに6月9日の天皇杯vs福岡戦では木出が、6月13日の沼津戦で三宅の負傷交代。リソース不足に悩まされる難しい期間での指揮でした。

そのため、上図の人選に頼らざるを得ない状況だったと思います。
木出の負傷後は、野嶽惇と衛藤をそれぞれSBに起用。トップ下には酒本、右に五領を配置しました。

五領のサイド起用については、単純に五領>三宅・山本でだったり、負傷の問題もあるでしょうが、逆足サイドの起用によるカットインやインスウィングの狙いがあることは大島監督や選手コメントからも窺えましたね。

そういった人選に関係なく、前述のようにパパス体制の引継ぎと発展が主題で、高いボール保持率を志向していましたが、ビルドアップについては相手の出方を見て、取るべき立ち位置を取れるようになってきた期間でもありました。

敗戦はしたものの、讃岐戦などでは相手のプレッシングの様子から選択肢を迫れています。

また、CFが落ちた時にはトップ下が最前線に張って、人数を担保する動きが明確に見え始めました。パパス体制でも牛之濱がトップ下を務めた試合では、機転を利かせて最前線に出る場面もありましたが、大島体制で決まり事として定着してきたと思います。

これには大島監督の意図もあるでしょうが、ビルドアップで前線の選手が過度に落ちることなく、ロジカルに前進出来るようになってきたことで、この互換性が生まれたとも言えます。チームの成熟を感じられる変化ですね。

さらに今治戦では、ビルドアップ→崩しの部分で、如何に前線のスペースと時間を確保出来るかの経験値も積むことが出来ました。いよいよ課題の崩しの部分=得点不足解消の部分に、チーム成熟の観点から成果が見えてきたところです。

そんな大島体制での戦績は、6戦で3勝1分2敗。
得点は7点(ave.1.17)、失点は5点(ave.0.83)となりました。
勝ち越して終えた暫定期間、さらには得点数>失点数で1試合平均失点も1点を割り、②失点減のためにボールを取り上げることについては、徐々に体現出来てきたと言えます。

一方で、得点は体制変更後ave.1.14→1.17の微増に留まり、①クラブが目指す攻撃的なサッカーを体現は出来なかったと言えます。ここは肌感覚の通り、積み上げはあったと言えど、得点力アップにはもう一段階成熟が必要ですね。

第Ⅲ期:上野体制

2021.07.10 vs カターレ富山 △2-2

最後に、7月4日に就任が発表された上野体制についてです。

(登尾GMコメント書き起こし)
監督人事を進めるにあたり、シーズン途中より指揮を執った経験のある人材、攻守においてクラブのスタイルを体現できる人材、これまでに昇格実績があること、得点力の向上を重視し、7月4日より上野展裕氏を監督として招聘する運びとなりました。

ーー上野監督に求めるものについて
これまでの良い部分を継続して残していきたい。そこに+αして上野監督の長所である攻撃を上積みしていきたい。これまで勝敗を分けるところで得点が欲しい時に取れなかった部分もあるので、そこは向上させていきたいというところが一つありました。

上野監督の招聘理由としては、山口で一世を風靡した得点力に期待してというところが大きいことは予想が出来ました。

さらには
赤い炎のようなプレス!
海のような冷静な守備!
金色の攻撃!
で、お馴染み上野展裕監督。

何を怖がっているんだ!プロとしてしっかり戦え!全員で行くぞ!のような軽快なテンポ感と語感の良さを感じます。語録を生み出しそう系監督であることに、こっそり胸が高鳴っている僕です。

そんな上野監督からは「最後まで諦めない、最後まで走り続けるそのような姿をお見せすることによって、皆さんが何かを感じていただければと思っています」ともコメントがありました。

登尾GMからは、「シーズン途中より指揮を執った経験のある人材」との招聘理由が挙がりましたが、途中就任にあたって周囲の人々から信頼を得るため、なによりチームを1つにするために、言わば精神論のような部分にフォーカスするのは重要なんだと思います。

何よりこういうアプローチを出来ることが経験による部分だと思いますし、招聘理由にも納得出来た一幕です。

上野体制で挑んだ富山戦の内容については、書きたいことはレビューで書いたので、良かったら上記リンクから飛んでみてください。

ざっくりまとめると、初陣は2-2のドローでしたが、ビルドアップで繋いで前進に執着しすぎず、食いつくWBやHV裏のスペースを活かした加速傾向のあるボール保持が見られました。

この攻撃について、会見では「ポゼッション率が高いことは素晴らしいことだが、それが間違った伝わり方をしないように、とは思っている。縦に速い攻撃など、色々なバリエーションで攻撃することが出来る」という旨の発言がありました。

今回は人への意識が強い富山相手だったからこそ縦の速さを選んだのか、今後のスタンダードなのかは分かりません。しかし、悪くないとは思っています。

一方で、レビューにはさらっと書きましたが、比較的シンプルに前進することで加速が強くなるということは、ゴール前でボールコントロールの難易度が上がる側面もあります。個人の質という意味での得点力アップが難しくなる可能性もあると考えています。

そこについても、「まずは攻撃の優先順位と、どこにどのように入っていくことで点を取っていくのかというところをまず押さえたい」と発言あったので、どう整理するのか注目です。

まぁ、それも含めて成果や課題が出てきたときに考えることとして、今は中断明けにどんなサッカーを見せてくれるのか期待しかしていないです。

後半戦に向けて

中断期間突入前に新監督を招聘することは、強化部としてもデッドラインとして進めていたかと思います。

今は上野監督の仕事を心待ちにする他ありませんが、焦点は会見でもあったように得点力のアップになると思います。

こうやって、シーズン当初の発言や試合の変遷を改めて振り返ってみると、目標とそこへのギャップを埋めるための人選であることの整合性が取れてきます。

あとは得点力向上に向けた「ゴールに直結する動きをする選手を置く」という改善策についてはなかなか実らず、既存の選手達が時にコンバートもしながら、前線のポジションを占めています。

中断期間で新戦力を取り入れるのか、現状の戦力をより輝かせるのかは分かりませんが、登尾GMからも目標はJ3優勝と改めての発信もありましたので、期待して見ていきましょう。

そして、新体制発表で挙がったポイントの要約、

①クラブが目指す攻撃的なサッカーを体現
②失点減のためにボールを取り上げることが出来る

2点について注視していければと思います。

それでは、次は8月28日。讃岐戦。
よろしくお願いします。

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