J3 第12節 レビュー【鹿児島ユナイテッドFC vs ヴァンラーレ八戸】対策のその先
2021.6.19 J3 第12節
鹿児島ユナイテッドFC vs ヴァンラーレ八戸
こんにちは。
今回もご覧いただきありがとうございます。
今回のお相手は八戸です。
ここまで八戸は4勝3分4敗の勝ち点15。順位は一つ上ということで6ポイントゲームとなりました。
そして、ミッドウィークの天皇杯では横浜FCに勝利。勢いに乗ったところでの対戦です。
鹿児島としては、得点が欲しかったむず痒いゲームになりましたが、今までの大島体制からすると論理的な一面も見せられたのでは、と思います。
早速、振り返っていきます。
ご笑覧ください。
0.スターティングメンバー
まずは、鹿児島。
前節サスペンションの酒本が帰ってきました。それに伴い前々節同様、五領が右SHに入る形になったので、順当な人選となりました。
さすがに触れなきゃいけないと思うので、酒本。
今日は強い気持ち。だとか、頭はクールに。だとかいうより全集中の様子が画面越しにも伝わりました。
守備時のプレスの掛けどころ、プレスの向き、ボール保持でのポジショニング(後述します)など居てほしいところに居てくれています。
ピッチを冷静に見ながら、自分の役割を認知して再び貢献してくれるのは流石だなと思います。こういう試合では「気持ちが見える」プレーが多いと思うんですが、あくまで経験値が高いです。
いずれにせよ、キープレーヤーの1人が帰ってきた鹿児島。続いて八戸です。
八戸もリーグ前節・天皇杯と同様のスカッド。
こちらは、否が応でも強い気持ち必要スカッドになりました。
予習で個人的に気になったのは左CBの39番近石。
ビルドアップでDH脇に上がって、面白いことをしていたのですが、今節は試合展開もありそのような場面は少数。また機会があれば言及します。
同じスカッド・フォーメーション3-4-2-1で、試合が始まるとピッチ上での振る舞いも、これまで同様のやり方を踏んできた八戸。
鹿児島としては、準備していたであろうプランAが奏功しました。
1.プランA:中盤の互換性
八戸のビルドアップに対する守備です。
1トップ2シャドー+2DHの5人でビルドアップを消しにかかっていました。
今節はCBに対してCF14番前澤、SBに対してはそれぞれシャドーがプレスする形を採りました。さらに、CBと近い位置でプレーする鹿児島DH(主に八反田)にはDHの一角が前進し、対応します。
八戸の問題はその後方で起こります。
後方に残った八戸DHは、少し高い位置を取る鹿児島DH(主に中原)と酒本の2人と対峙しなければならず、その内一方が空く事態になりました。
セオリー的には、左右CBが出てきてケアしますが、鹿児島の前線3枚が八戸最終ラインを押し込んでいたことや、八戸はプレス隊と後ろ5枚が分断されていたことが影響し、左右CBがチェックに行けない状況でした。(下図)
その故、八戸2nd-3rdライン間にギャップが出来やすく、上図では酒本が広いスペースで受けることが出来ています。
これに衛藤のインナーへの位置取りも含め、一人浮かせようとしていました。前節に比べ、衛藤のインナーの位置取りが多かったと思うので、これを意識していたのでは?と思っています。
さらには、萱沼↔酒本の互換性も高く、萱沼が下がって受けようとする時も酒本が最前線に張ることが多かったです。ともかく流動性高く、ビルドアップの出口を確保しようという狙いは見られました。
2.続・プランA:シャドーの誘導
そして、もう一つ。
八戸の前プレの肝は、幅を守るシャドーの守備でした。
また、そのシャドーをどう誘導するかが前進のカギだったと思います。
下図がその1例。
ここでは自陣からウェズレイが持ち上がり。
このウェズレイの持ち上がりと、八反田が14番前澤・13番島田間に立つことで、13番島田が中央寄りに位置取ります。
これによって、自由の身になった野嶽は最終ラインと対峙。
ウェズレイ→酒本→五領と繋いだ時に、オーバーラップが間に合うポジションを取ることができ、ペナ内に侵入出来ています。
ウェズレイの持ち上がりによるシャドー引き付けも、前進の形としては素晴らしいのですが、もしどこかで八戸DFに引っかかっていたら、14番前澤前にはスペースが広がっているなど、ややカウンター予防に不安が残る形だと感じました。
そこで下のもう1例。
八反田が列を下げるパターンです。
図では八反田がCB間に落ちていますが、ウェズレイ脇に落ちることも多かったように思います。
ここでは八戸が5-4-1撤退したところを、2nd-3rdライン間に位置取った中原が13番島田を中央にピン留めすることで、八反田→五領のパスコースが空く+カウンター準備も出来ている形になっています。
八反田が明確に列落としを始めたのは、39分だったと思います。
この時は、ウェズレイ脇に落ちシャドーを引き付け、八戸が全体的に前掛かりで守備しようとしたところを裏にボールを放りました。
この39分からウェズレイ脇に落ちることが多くなったので、シャドー引き付けと野嶽惇を前線に押し出せるメリットを享受しようとする様子が窺えました。俯瞰で見ていたので分かるものの、ピッチ上で認知できる八反田は凄いですね。
…というような前進の形もあり、主導権を握った前半でしたがスコアは0-0。後半に移っていきます。
3.後半と八戸の対応
後半に入っていきます。
後半、八戸が少し対応を変えてきました。
①コンパクトな守備陣形
2nd-3rdライン間にギャップが生まれがちで、そこを利用されていた八戸。後半に入っては前プレが減少+最終ラインも少しラインを上げて、コンパクトに守るようになりました。
これにより、ライン間で受けられていた中盤の選手が自陣に追いやられ、低い位置で受けることになります。この結果、中盤3枚が最終ライン近くでプレーすることも出てきて、前半の様に1枚浮いたところでパスを受けるなどの前進が難しくなりました。
②ライン間に飛び出しやすい
コンパクトな守備陣形を敷いたことにより、最終ラインで構える選手もライン間に飛びやすくなります。
逆説的に言うと、裏のスペースが空きやすくなりますが、前述したようにDHと酒本などが下がって受けることで前線のリソースが不足し、裏を取り切れない場面も多くありました。
③遅行中心:WBのトランジション時間確保
前半は最終ライン5枚が低い位置を取っていたことで、ポジトラ時には1トップ2シャドーで完結せざるを得なかった八戸。
後半に入って、鹿児島の前プレが効きにくくなったこともあり、八戸ビルドアップ隊がある程度余裕を持ってボールを回せるようになりました。
そのことでWBが前線に移動するまでの時間を確保でき、鹿児島SHを押し込むことに成功します。これにより、なかなか攻勢に回れなくなりました。
ーーーー以上のような要素からクリーンな前進が難しくなっていたと思います。
後半は選手交代により活性化を図り、何度かチャンスを作りますが、ロジカルにゴールに迫れていた機会は多くありませんでした。ところどころで裏を活用しようとしていましたが、全体として形に結び付けることが出来なかった現状でした。
4.あとがき
結局のところは0-0で終えた試合になりました。
準備していたであろうプランAは嵌っていましたが、後半八戸に対応されそれを超える策は生み出せなかったという印象です。
とはいえ、プランAを嵌めていく様子は成熟も感じられました。あとは現実的な勝ち点計算と監督人選の行方、今シーズンの終え方をチーム・フロントがどう舵取りしていくかに左右されていくはずです。
現場のコメントだけでなく、フロントの発信も欲しいと思う今日この頃です。次回もよろしくお願いします。
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