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まちがいない、自分も「かくれ繊細さん」の一員だ【時田ひさ子『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』フォレスト出版】

先日大阪駅近くのジュンク堂書店に並んでいるのを見て、ついつい買ってしまった本である。決め手は「かくれ繊細さん」という耳馴染みのなかった言葉。「繊細さん」はだいぶんメジャーになってきたが、「かくれ」とははて?というその好奇心と疑問が、自分をレジへ向かわせた。

そもそもこの本で言う「かくれ繊細さん」とは、HSP全体の3割を占めると言われているいわゆるHSS(High Sensation Seeking)型HSPのことと「はじめに」で定義されている。で、その定義のあとに列挙されているかくれ繊細さんにだけある特徴を抜き出してみると、これが結構自分に当てはまっているのだ。以下に該当した項目をピックアップしてみる。

・周囲の目を強く気にする(自分の外見にも気を遣う人が多い)
・話すスピードが早い
・他者とコミュニケーションしたいと望む
・友好的、社交的で、表情が豊かでオープンである
・人がしていないことをしたがる
・飽きっぽいところがある
・現状を改良したがる
・仕事以外のところ(たとえば人間関係)で違和感を感じて、仕事そのものに嫌気がさす
・誤解されている、疎外されている、あるいは否定されていると感じるとき、猜疑心や違和感が生まれてうまく自分を機能させられなくなる

実は自分はHSS型HSPのチェックテストをやっても、基準より低い回答数に落ち着いてしまう。ただ「家に1日いるのは退屈だ」とか「同じ人といるのは飽きる」と言う項目はとても強く該当するので、正直自分のことがよくわかってないところがあった。

しかしこの本で言うHSS型HSP、言い換えると「かくれ繊細さん」の定義や、本文中の説明にはビシバシ当てはまる。たとえば第4章。「「かくれ繊細さん」と仕事とお金」なるこの項目はもう、うわーこれはまさしく自分のことだわー、とページを進める手が止まらなくなってしまった。「辛いのは圧のある人の職場」や「仕事は4年で飽きることを前提に」と言う小見出しにも共感したのだが、

「お金、大丈夫かな。なくならないかな」と今ある収入を必死に守ってしまいます。次の支払いの算段をしてしまいます。のんびり構えていられないんです。

とくに145ページの最後のほうに書かれているこの文章が一番グサッと刺さった。あまり大きな声で言う話でもないのだが、毎月のクレジットカードの引き落としや預金残高は常にめちゃくちゃ気にしている。何千円単位であってもいまだに長時間逡巡しないと「これ買います」と言い出せないしポチることもできない。この一節、この章を読めただけでもめちゃくちゃ価値があったように思う。

「かくれ繊細さん」はたしかに外向的なのだけど、実は「絶対に誰にも見せられない一面」と言うものを隠し持っていて(この本ではその一面を「はみだした感受性」と言う言い得て妙な表現をしている)、だからこそ日々を生きることがしんどいと言うところがある。表では「大丈夫ですよー」と平気な顔をしていても、家に帰って一人になればしょんぼりしてしまったり、人と会うことが億劫になることはないだろうか。本音や本来の自分を隠していたり、見せられない一面が重荷になっているHSPの人たちにぜひ手にとって欲しい一冊だ。

最後にひとつ、この本では全体的に「〜と思いませんか?」「〜ではないですか?」みたいな、読み手に何か同意を求めるような文章が多く見受けられる。正直に書くと読んでいる本でこの手の表現を見かけるといつも「自分の主張に自信がないのか?」などと書き手を勘ぐってしまうのだが、本文にたびたび登場する過去の話から考えるとこの表現は著者自身も「かくれ繊細さん」であって、そこから出てくるある種の「自信のなさ」なのかもしれないな、と感じたことも付け加えておこう。


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