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【第3回】デジタルJ-POPの作り方~メロディ編①~

■はじめに

大変長らくお待たせしました!デジタルJ-POPの作り方続編です!
次回はメロディについて書いていきたいと宣言してから、約1年半ほど過ぎてしまいました...サボリジニ...サボりすぎですね。

第0,1,2回はいずれの回も、今でも毎週2ケタ台のアクセスがあり、これははよ続きを書かないかんなと奮起し、今回に至りました。大変ありがたいです。自分ほどの知識でもどなたかの役に立てているのであれば、これ幸いでございます。

作り方と銘打っていますが、自分の考えをまとめる意味でもこのシリーズは役に立っているので、牛歩でも進めていきたいですね。

【過去回のリンク】
第0回(イントロダクション)
第1回(コード進行編①)
第2回(コード進行編②)

今回はついにデジタルJ-POPのメロディについての解説なのですが、ご存じの通り千差万別無限にあり、正解はありません。作った本人のメロディが正解なのです(俺が法律だ!的な)。そこを定義したらオリジナリティがなくなるでしょ!という声が聞こえてきそうですが...あくまでデジタルJ-POPを作る時にこんなやり方もあるよ~という提案と捉えてください。

メロディ編は「デジタルJ-POPで頻出するメロディパターン」を紹介しつつ、それらを用いたメロディの作り方を書いていければと思います。

デジタルJ-POPのメロディは、他人にアレンジされても香りを消せない程の力を持った、強烈な印象を与えることができるメロディです。デジタルJ-POPに限らず、人に覚えてもらうためのキャッチーなメロディ作りにも役立つと思いますので、ぜひ活用してみてください。

複数回に分けますが、おそらく1つの記事が長くなります(笑)
デジタルJ-POPに限らず、歌モノにおいてメロディは最重要項目ですので、書きたいことがたくさんあるのです!


※すべてCmaj(Am)スケールで表記します
※各敬称略


■【1】クラシカルなメロディ

デジタルJ-POPのメロディは非常にクラシカル(古典的)です。一音一音のつながりがなめらかで、鍵盤でメロディを弾く時に弾きやすい形になる傾向があります。デジタルJ-POP作曲家にキーボディストが多く、手癖が反映されがちなことも一因にあるかと思います。

また少し乱暴に言ってしまうと、「クラシックや歌謡曲のメロディをシンセで引くとデジタルJ-POPになる」と捉えることができます。(第0回:デジタルJ-POPの要素『歌謡曲由来のメロディ』


中でも特に階段状のメロディは頻繁に使用されます。
下記の例はその一部になります。

【代表的なメロディパターン】
・「ラシドレミ」や「ドレミファソ」など駆け上がり5音
・「ミレドシラ」や「ソファミレド」など駆け降り5音
・「ドレドシラ」や「ミファミレド」などある1音周辺の音を使用後、キー音に着地
・「ラソラシラ」や「ドシドレド」などキー音から開始し、周辺の音を使用後、キー音に着地


■【1-1】駆け上がり5音(ラシドレミやドレミファソなど)

「ラシドレミ」や「ドレミファソ」などの駆け上がり5音は、前の小節から食って入ってくる形で使用されることが多いです(弱起,アウフタクト)。「ラシドレやドレミファまでが前の小節、ミとソが現小節の開始地点」となる形で、曲のパート(Aメロ,サビetc...)の冒頭部分によく用いられます。

他にも「ラシドレ」と「ドレミファ」の4音の部分を「シドレミ」や「レミファソ」にした形もあり、特にドミナント(Key=CメジャーであればGコード)と組み合わせて使用されます。
※現小節:前の小節という表現と区別するため使用

デジタルJ-POPにおけるメジャー楽曲の使用例は以下になります。

【メジャー楽曲】
・globe「DEPARTURES」のサビ
・Every little thing「Feel my heart」のサビ
・day after tomorrow「Starry Heavens」のサビ
・girl next door「Orion」のサビ
・girl next door「FRIEND SHIP」のサビ
・fripSide「future gazer」のAメロ
・fripside「last fortune」のAメロ
・fripside「eternal reality」のサビ
・fripSide「fortissimo -the ultimate crisis-」のサビ
・Daito Music「Distance」のサビ

駆け上がり5音の例(globe - DEPARTURES)
※青丸の部分

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globe - DEPATURES


Every little thing - Feel my heart


day after tomorrow - Starry Heavens


girl next door - Orion


girl next door - FRIEND SHIP


fripSide - last fortune


Daito Music - Distance


デジタルJ-POPはメジャーではめっきり下火になってしまいましたが、
実は同人界隈で再びブームが訪れていますので、使用されている同人楽曲もご紹介しておきます(筆者の曲も含みます)。

【同人楽曲】
・大川みずき「early winter」のサビ
・伊藤由宇「Be the light」のサビ
・Shuma「White Lie」のサビ


大川みずき - early winter


伊藤由宇 - Be the light(1:09から)


Shuma - White Lie


ボカロでも昔の曲ではちょこちょこ使用されています。

のりP - Drive Life(Bメロ)


無力P(現Powerless) - Brella(サビ)


■【1-2】駆け降り5音(ミレドシラやソファミレドなど)

「ミレドシラ」や「ソファミレド」の駆け下り5音も、前の小節から食って入る形で使用される場合もありますが、「レドシラ」や「ファミレド」の4音の形から展開されることの方が多いように感じます。

デジタルJ-POPにおける楽曲の使用例は以下になります。
※既に挙げた楽曲のリンクは省略しています

【メジャー楽曲】
・globe「DEPARTURES」のサビ
・fripSide「fortissimo -from insanity affection-」のサビ
・fripSide「infinite orbit」のサビ
・fripside「final phase」のサビ
・day after tomorrow「Starry Heavens」のサビ
・Daito Music「Distance」のサビ
【同人楽曲】
・邪王「anamnesis-ver2020-」のサビ
・伊藤由宇「Star+ Rain」のサビ

駆け降り5音の例(day after tomorrow - Starry Heavens)
※青丸の部分

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fripSide - fortissimo -from insanity affection
-


fripSide - infinite orbit


anamnesis-ver2020-(0:27から)


伊藤由宇 - Star+ Rain(0:43から)



■【1-3】「ドレドシラ」や「ミファミレド」などある1音周辺の音を使用後、キー音着地

「ドレドシラ」や「ミファミレド」の形は特に冬曲で使われるイメージがあります。このパターンも「レドシラ」と「ファミレド」の4音からの展開が最近は多いように感じます。

デジタルJ-POPにおける楽曲の使用例は以下になります。
※既に挙げた楽曲のリンクは省略しています

【メジャー楽曲】
・華原朋美「I BELIEVE」のサビ
・fripSide「fermata~akkord-fortissimo~」のサビ
【同人楽曲】
・大川みずき「past mistake」のサビ
・大川みずき「early winter」のサビ
・朝木ゆう「moment」のサビ
【ボカロ楽曲】
・のりP「Drive life」のサビ

ドレドシラの例(華原朋美 - I BELIEVE)
※青丸の部分

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華原朋美 - I BELlEVE (原曲が配信されていないためセルフカバー)


fripSide - fermata~akkord-fortissimo~


大川みずき - past mistake


朝木ゆう - moment(0:27から)


■【1-4】「ラソラシラ」や「ドシドレド」などキー音から開始し、周辺の音を使用後、キー音に着地

「ラソラシラ」や「ドシドレド」はデジタルJ-POPで頻出かと問われれば、そうでもないのですが、デジタルJ-POPで頻繁に使用される小室進行を使った曲に度々使用されます。

楽曲の使用例は以下になります。

【メジャー楽曲】
・安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」のサビ
・LiSA「炎」のサビ

ドシドレドの例(LiSA - 炎)
※青丸の部分

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安室奈美恵 - CAN YOU CELEBRATE?


LiSA - 炎

■まとめ

今回のクラシカルな階段状のメロディパターンは、自分の中ではメロディの縦の概念と捉えていて、コードに対する響きを意識したメロディと考えています。

縦があるなら横もあるのかというと、まさにその通りで、リズムを意識したメロディを横の概念と考えています前半に少し出た「弱起(アウフタクト)」などは横の概念ですね。

縦と横を上手く組み合わせると曲に勢いや停滞感、儚さや強さを付けたりと、自由自在に曲の雰囲気を操ることができます。アレンジだけが曲の雰囲気を決定する訳ではなく、違和感なく(←ここ重要)曲の雰囲気を伝えるには、すべての要素が噛み合ってこそなのです。

その違和感が逆に印象づける個性になりうる場合もありますが...キャッチーからは外れてしまいます。

最後はかなり観念的な話になってしまいましたが、次回はメロディの横の概念である、リズムを意識したメロディパターンをご紹介していきたいと思います。長い時間お読みいただきありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。

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