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(超)短編小説

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ある人の心
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#短編小説の集い

超短編小説 『底のない美しい花瓶』

「ねえ、今夜、空いてない?」
「いいよ、ご飯食べようか」
「……じゃあ、北口ね。私、少しだけすることあるから、先、待っていて」
 
 私は大学構内、学部棟の廊下ですれ違ったあなたに声をかけた。あなたは少しも不思議そうな顔をせずに、私の心を覗き込んで、ただ頷いた。胸元の白いシャツが窓から差す光を反射して眩しかった。窓の向こうには、西に少しだけ傾いた太陽と、綺麗な青空。その雲のない青さは、今年も終わる

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