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今度は今度、今は今。

今年のカンヌ国際映画祭で役所広司さんが
男優賞を受賞した【PERFECT DAYS】
オール日本ロケ、日本のキャストさん達の
素敵なアンサンブルの映画にも関わらず、
この日本で公開が決まらずヤキモキしていた中
ようやく日本上映となり鑑賞。
ヴェンダース監督作品は
『アメリカ・家族のいる風景』以来の
映画館鑑賞でした。

物語は主人公のトイレ清掃員
平山さんの繰り返しのような日常をひたすらに
描く作品ですが、同じような毎日にも
変化があり、その日々を生きてゆく事が
まさにPERFECT DAYS
優しさに溢れている映画でした。
劇中、平山さんがカセットテープで
聴く曲も最高でした。まさにヴェンダース節
とでも言って良いか‥‥
でもポイントになる曲である
"朝日のあたる家"は役所さんの大好きな
曲でもあるんですよね。

同じような日々の中でも、幾つかの出来事が
平山さんを揺さぶる事になります。
でも、それが平山さんの日々を変えてしまう
訳でもなく、でも平山さんの心に新鮮な
風が吹く。それを表情だけで伝える
役所さんの演技、本当素晴らしかった。
平山さんの微笑む表情、観ているこちらも
幸せになります。
物語は非常にゆっくり、穏やかに
進んで行きますが、それが心地よいです。
全ての事がASAPで進むような現在、
もっと深(心)呼吸して毎日を
生きて行こう、そんなメッセージも
あるように思いました。
スカイツリーの近くながら、木造の
風呂無しアパートで暮らす平山さん、
金銭的、物質的に何でも
満たされている事だけが
幸せという事ではないんだよ、と
無言で伝えてくれるようでした。

まるで小津作品に捧げているような
4:3のスタンダード画角、ローアングルを
多用した映像も見事でした。
劇中に多く挿入される木漏れ日、影の
美しさに惹かれました。

キャストの皆様もハマり役でした。
平山さんが休日に訪れる居酒屋の
女将、石川さゆりさん最高でした。

久しぶりに心の清涼剤になるような
映画を観る事ができた気がします。
焦らなくても、今を大事に
『今度は今度、今は今。』
この台詞が凄く心に刺さりました。

ヴェンダース作品でこの映画タイトル、
やはりこの曲ですよね。
劇中でも沁みました

何気なくても、日々は素晴らしい。
クリスマスに映画館での鑑賞で良い時間を
過ごす事ができました。



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