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プラスチックに関する企業等の責任とリスクマネジメント:プラスチックの危険は増すばかり

現在、海には推定3,000万トン、河川には1億900万トンのプラスチックの廃棄物があるとされている。プラスチックの生産と使用にはどのようなリスクがあるのか。プラスチックの生産と使用に伴うリスクとは何か。どうすれば企業はそのリスクを減らすことができるのだろうか。

当記事ではプラスチックに関する問題の現状ならびに関連する企業等の経営リスク、また、大手・上場企業含む200社近くの役員等賠償責任保険の引受を行ってきた私の見解を述べる。是非一読いただきたい。


プラスチックの現状

遠い海の魚でも、その胃の中からプラスチックが見つかる確率は高い。その小さな繊維は、洗濯機の排水やトイレに流されたパーソナルケア用品、あるいは、ビニール袋や包装の分解によって生じたものかもしれない。

深くて暗い海に生息する魚にさえもプラスチックが含まれているということは、この人工物質が如何に広がっているかを示している。1950年には年間200万トンだったプラスチックの生産量は、2021年には約3億9100万トンにまで急増し、リサイクルされているのはほんの僅かである。

1907年に世界で最初の完全な合成プラスチックは特許を取得された。それから100年以上が経ち、合成プラスチックは我々の世界を支配している。我々の家やオフィスはプラスチックで埋め尽くされている。我々はプラスチックの歯ブラシで歯を磨き、プラスチックの容器で食べ物を食べ、飲料の飲み、プラスチックから作られている服を着ている。プラスチックは今や、我々の時代を物語っている物として化石記録に残るほど広く行き渡っている。

しかし、プラスチックは我々の健康と環境に害を及ぼす。我々の景観、海、空気、そして身体を汚染しているのだ。我々は毎日、これらの物質を摂取したり、吸い込んだりしている。また、プラスチックはますます訴訟の原因となっている。

プラスチック関連汚染:長引く責任

豪Minderoo Foundationの報告書によると、2022年から2030年にかけ、プラスチック関連の対企業への訴訟が相次ぐ可能性があるという。その規模は米国だけで200億ドル以上に達する可能性があると推定している。Praedicat社と法律事務所Clyde & Coとの提携により作成された『プラスチック汚染の代償』(The Price of Plastic Pollution)では、訴訟は主に石油化学産業に影響を及ぼすと予想している。それでも、大手消費者企業に対して請求が起こされる可能性も充分にある。

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