見出し画像

「うわさのくすり」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.1 (5/7)

むかしむかし、ジャングルの奥に小さな村があった。

ある日、村人のひとりが森へいくと、しげみのかげに赤い猿が倒れているのをみつけた。だいぶ弱っているが、まだ死んでいない。

村人は、猿を看病しようとつれてかえったが、間もなく死んでしまった。

それから数年後、猿のことなど忘れていた頃、その村に赤鬼があらわれた。

そして赤鬼は、村に火をはなち、村人もろともすべて焼きはらってしまったという。

画像1


「どこかで聞いたことがあるような、ないような昔話だな」

刑事は困惑しながら言った。男は話を続ける。

「わたしはかつて、新薬の開発をしている研究者でした。そして、調査のためにジャングルの奥地へ滞在していました。わたしは、そこでこの話をききました」

ここまでの話を聞き、刑事は最初に感じた自分の勘に納得した。なるほど、この男の雰囲気がどこか普通の犯罪者とちがっていたのは、まじめな研究者だったためか。

「刑事さんはこの話、本当だと思いますか」

「うーむ、赤鬼とは。そんなもの、いるはずもない」

画像2


「それが、いたのです」

「そんな、まさか」

刑事はごくりとつばをのんだ。

「わたしは、このうわさに興味をもち、さらに調査をつづけました。そこでいろいろなことがわかってきたのです」

────

「うわさのくすり」 (6/7)につづく

────

「うわさのくすり」をまとめて読む

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?