キューセン・G・ブックス

星新一、世にも奇妙な物語、藤子F不二雄のSF短編、トワイライトゾーンなどが大好きです。…

キューセン・G・ブックス

星新一、世にも奇妙な物語、藤子F不二雄のSF短編、トワイライトゾーンなどが大好きです。ほっこりしないモヤモヤするショートショートをめざして書いてます。 https://twitter.com/shortshort9000

マガジン

  • 「うわさのくすり」奇妙で不思議なショートショートvol.1

    星新一や世にも奇妙な物語好きにおくる、ほっこりしないモヤモヤショートショート。シュールユーモアシンプルなイラスト付。 手作りzineとして発行していたものをネット公開しました。 2018年5月8日 初版発行 2020年1月12日 第二版発行 2024年5月6日 改稿

  • 「あいまいな記憶」奇妙で不思議なショートショートvol.2

    星新一や世にも奇妙な物語好きにおくる、ほっこりしないモヤモヤショートショート。シュールユーモアシンプルなイラスト付。 音楽をつけて、サウンドノベル風の動画にしました。 https://www.youtube.com/playlist?list=PLXbA0vPr3rZC3IMu4MGV0gsVLAw_G_Y4l 手作りzineとして発行していたものをネット公開しました。 2018年5月9日 初版発行 2020年1月12日 第二版発行 2022年4月29日 動画公開 2022年5月12日 改稿

  • 「人間をやめてみた」奇妙で不思議なショートショートvol.5

    星新一や世にも奇妙な物語好きにおくる、ほっこりしないモヤモヤショートショート。シュールユーモアシンプルなイラスト付。

  • 「ほんものの泉」奇妙で不思議なショートショート vol.3

    星新一や世にも奇妙な物語好きにおくる、ほっこりしないモヤモヤショートショート。シュールユーモアシンプルなイラスト付。 手作りzineとして発行していたものをネット公開しました。 2018年8月17日 初版発行 2019年12月14日 第二版発行

  • 「シェアのゆくえ」奇妙で不思議なショートショートvol.4

    星新一や世にも奇妙な物語好きにおくる、ほっこりしないモヤモヤショートショート。シュールユーモアシンプルなイラスト付。 手作りzineとして発行していたものをネット公開しました。 2019年12月31日 初版発行 2020年3月21日 第二版発行

最近の記事

ショートショートZine作りました

新作ショートショートをフルカラーイラスト付Zineにしました。 ひきこもりSFホラー「ご注意ください」、何もしたくないSFサスペンス「冷蔵庫は絶対」、ライフスタイルSFホラー「ばら色の移住」の3本。 小田原の本屋さん南十字で販売中です。サンプルも読めます。 本好きが全国から集まる、素敵な本屋さんなので、ぜひ行ってみてください。面白い本がいっぱいあるよ。 南十字 〒250-0013 神奈川県小田原市南町2丁目1-58 小田原駅より徒歩15分 https://minami

    • 「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (7/7)

      それから数ヶ月、少ない水分の中、若者はどうにか生き延びた。その努力はみごとにみのり、若者は立派に成長した。自分の身体が、青々とみずみずしく育ったのを感じる。 若者は、自分を誇らしく思った。過酷な環境でもサバイバルできたのだ。それと同時に、ほんのり後悔にも似た感情もわいた。人間だった頃に、ここまで耐えて、がんばることができたなら、違った人生を歩めたのかもしれない。 そんなことを思いながら、感慨にふけっていると、むこうから誰かがやってくる気配がした。 「これが話題のお野菜で

      • 「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (6/7)

        しばらくして、若者は我にかえった。どうやら、ずいぶんと寝てしまったようだ。あの神様や薬は、夢だったのかもしれない。ああ、明日もつまらない仕事へ行かなければならないのか。うんざりだな。そう思って起き上がろうとしたとき、若者は気づいた。 (あれ、体が動かない) 足が固定されているようだ。そもそも若者は、横になっていなかった。太陽に向かって立っていた。 (一体、どういうことだ?) 状況を把握しようともがく。しかし、どうにも動くことができない。そして、うっすらと全身の感覚が今

        • 「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (5/7)

          じゃあ、植物はどうだろう。辺りを見わたす。 大木が、天に向かって枝をのばし、雄大にそびえている。 なかなか、よさそう。 根元には草花がおいしげり、風に揺れている。 なんとも、平和だ。 うむ。植物はよさげだ。 このまま、人間として不本意な生活をつづけていても、いつかきっと後悔する。勇気をもって、新しい環境に飛び込んでみよう。人生はチャレンジだ。いつかの研修でも、そんなことを言っている人がいたような。 「植物になる薬をください」 「植物ですね。では、こちらの小瓶を

        ショートショートZine作りました

        マガジン

        • 「うわさのくすり」奇妙で不思議なショートショートvol.1
          7本
        • 「あいまいな記憶」奇妙で不思議なショートショートvol.2
          7本
        • 「人間をやめてみた」奇妙で不思議なショートショートvol.5
          7本
        • 「ほんものの泉」奇妙で不思議なショートショート vol.3
          7本
        • 「シェアのゆくえ」奇妙で不思議なショートショートvol.4
          7本

        記事

          「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (4/7)

          動物になるとしたら、そうだ、鳥になって大空を飛ぶってのはどうだろう。とても気持ちがよさそうだ。 若者は、空を見上げた。 大きな鳥に追われて、小鳥がギャーギャー必死に逃げている。しかし、追いつかれてしまった。大きな鳥のするどい爪が小鳥をとらえた。 鳥の羽が一枚、ひらひらと若者の頭の上に落ちる。 鳥は……やっぱ、なしかな。そうだ、空は飛べなくても地上で、小さなかわいい動物になれば、平和でいいかな。 今度は、地面に目をやる。 小動物がエサにむらがって、小競り合いをしている

          「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (4/7)

          「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (3/7)

          すると突然、湖の底から、ごごごごご……と重低音が響き、水面がうねりはじめた。 「うわっ」 若者はびっくりして、腰をぬかした。 水中から美しい女性がせり上がってきたのだから、無理もない。しかも、よくみると彼女の髪や衣服は、全く濡れた様子がない。 そして、女性の手には、奇妙な形をした金色の小瓶と銀色の小瓶がにぎられている。 「こんにちは。どうやら、お疲れのようですね。ところで、あなたが落としたのはこの動物の薬ですか?それとも植物の薬ですか?」 女性は若者の顔の前で、小

          「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (3/7)

          「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (2/7)

          翌日。名ばかりの休日。研修の日。 いつものように、のこのこと研修に出向くと思われた。しかし、今回は違った。若者は、はじめて研修をさぼった。 職場のみんながセミナールームで空っぽな高揚感に包まれているとき、彼はひとり、自然豊かな湖のほとりにいた。 雄大で神秘的な湖。湖を囲うように広がる森。そこを住処とする愛くるしい小動物たち。生き生きとした草木。それらを祝福するように空を飛びまわる、かわいい小鳥。 自然の中で、疲れた心が癒されていく。この選択は間違っていなかった。サボっ

          「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (2/7)

          「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (1/7)

          その若者は、疲れきっていた。目の下にはクマができている。ここしばらく激務が続いて、あまり寝ていないのだ。 やっと明日は、待ち望んだ休日……のはずが、会社の研修が入っている。なぜかいつも休日返上で、定期的に参加させられる。 どのような研修かというと、こんな感じだ。 まず、どこかのだれかの成功体験を聞かされる。 苦しい状況でも、笑顔を忘れずいつもポジティブに努力しよう。人々を喜ばせることが私の幸せ。 といった、どこにでも落っこちているようなストーリーを、あたかも自分

          「人間をやめてみた」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.5 (1/7)

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (7/7)

          そんな泉ビジネスが順風満帆にすすんでいたあるとき、男は病に倒れた。これまで彼は、病気という病気をしたことがなく健康そのものだった。そのため、弱者の気持ちなど考えたこともなかったが、自分が当事者になってはじめて、こんなにも心細いものなのかとショックをうけた。 まもなく医者がやってきた。男をひと通り診察すると、医者は申しわけなさそうに告げた。 「あなたは末期の重病です。なおる見込みはありません」 「そんなばかな。金はいくらでも出す。だから、助けてくれ!」 男は医者に泣きす

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (7/7)

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (5/7)

          「おれは盗みなどしていない」 男はおそるおそる答える。すると、ふたたび声が。 「人のお金を勝手にとるのは盗みです」 どうやら、像の方から聞こえてくる。 「なんだと。これはおれの敷地内にあるのだから、おれの金だ」 「このお金はあなたのものではありません」 「じゃあ誰の金だというんだ」 「このお金はみんなのものです。お金に限らずこの世にあるものはすべて、みんなのものです。誰かひとりのものではありません。この土地だって、あなたがたが勝手にあなたのものだといっているだけ

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (5/7)

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (6/7)

          夜があけて、男はこのビジネスを入れ知恵してくれた金持ち仲間のところへいき、彼の息子の作るくだらない像をひとつ購入した。そして、その像をほんものの神様の像といれかえた。 いれかえるとき、像がなにか文句でもいうのではないかと思っていたが、特にそういうこともなかった。あれは幻聴だったのだろうか。そうだな、神様なんかいるわけがない。夢でもみていたんだろう。男は少しほっとした。しかしまた、いつあの像が話しかけてこないともかぎらない。念のため、このやっかいな像がおとなしくしているうちに

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (6/7)

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (4/7)

          「なんと、ほんものの泉だったというのか。そんなはずがない。この屋敷がたつ前からあの泉はあったようだが、奇跡が起こるなど聞いたこともない。しかし、がっぽり稼いでくれるなら、ほんとうに奇跡があろうがなかろうが、まったくどうでもいいことだ」 男は、評判となった自家製奇跡の泉に首をかしげながらも、投げこまれた大量の小銭をみてにんまりした。 「さて、そろそろ、回収にいくとするか。うへへ」 男は誰もいない夜中をまって、泉へむかった。 泉に到着すると、ちょうど、みすぼらしい身なりの

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (4/7)

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (3/7)

          ふりむくと、うすよごれた店の軒先に、すすけた像が置いてあった。この辺にこんなさびれた古道具屋なんてあっただろうか。男はふしぎに思った。 「そんなすすけた像などいるものか……いや、まてよ」 男は、もう一度その像をながめた。 なるほど。こいつは、神秘の泉にうってつけかもしれない。ぴかぴかの像より、これくらいくたびれていた方がほんものらしく見えることもある。よくみれば、なかなか含蓄のある表情をしてなくもない。 男は少し考えてから、こう言った。 「よし、買ってやろう」 「

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (3/7)

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (2/7)

          「奇跡の泉ビジネスさ。ほら、うちの庭に池があったろう。あの池にそれっぽい像をおいたのさ。うちの息子が彫刻家になるだなんていって、くだらない置物をしこたまこさえているのは知っているだろう。売れもしないし、物置がいっぱいになってきて邪魔だったのだ。そこで、なんとなく一番でかいやつをひとつ、あの池の中央に置いてみたのさ」 「へえ」 「そうしたら、像の前でたちどまって、お祈りしだすものがあらわれた。しばらくして池をみたら、けっこう小銭が投げこまれているんだ。定期的に池を掃除するだ

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (2/7)

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (1/7)

          丘の上に大きな屋敷があった。そこには欲ばりな男がひとりで住んでいた。男は親の遺産をうけついで、資産はたくさんあった。しかし、それだけでは満足できなかった。お金持ちというのは、えてしてそういうものだ。つきあいのあるまわりの人間も同じように裕福であるがゆえ、彼らよりさらにリッチな生活をしていないと、心が休まらないものなのだ。 実のところ、男はひとりものなので、そんなに大きな家は必要なかった。小さな家に引越して、質素な生活をしたほうが、気楽かもしれない。しかし男は、なんとして

          「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (1/7)

          「うわさのくすり」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.1 (7/7)

          赤鬼病の真相を知った研究者は、大いそぎでジャングルからもどった。 まずは彼を雇っていた製薬会社に、ウィルスが世界に広まったら大変であること、そしてその病気がこの社会にひろまってしまう前に、新薬を開発しなければならないことを熱心に説明した。 しかし、今後ひろまるかどうかもわからない謎の病気の研究に、企業がぽいと大金を投じてくれるはずもなかった。 それでも研究者はあきらめず、あらゆる会社にでむき、説得を試みた。しかし、結果は同じ。みな、ろくに話も聞かず、彼をあしらった。

          「うわさのくすり」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.1 (7/7)