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「ほんものの泉」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.3 (7/7)

そんな泉ビジネスが順風満帆にすすんでいたあるとき、男は病に倒れた。これまで彼は、病気という病気をしたことがなく健康そのものだった。そのため、弱者の気持ちなど考えたこともなかったが、自分が当事者になってはじめて、こんなにも心細いものなのかとショックをうけた。

まもなく医者がやってきた。男をひと通り診察すると、医者は申しわけなさそうに告げた。

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「あなたは末期の重病です。なおる見込みはありません」

「そんなばかな。金はいくらでも出す。だから、助けてくれ!」

男は医者に泣きすがった。

「残念ですが、いくらお金があっても今の医療技術ではどうにもなりません。奇跡がおきるよう、神に祈るしかないですな」

医者はそう言いのこして帰っていった。

病にふせるベッドの中で、男はあのほんものの像のことを思い出していた。もし、あの像を壊さずにいたなら、自分の病気もなおしてくれただろうか。じんわりと目に涙がにじんできた。でも、今さら悔やんでも、もはや手おくれ。

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数週間後、欲ばりな男は、ほんものの像を壊してしまったことを悔やみながら、大金を残して亡くなった。あとつぎがいなかったので、そのお金は公共のものとなり、人びとのために使われることとなった。

すべてはあの神様が仕組んだことだったのだろうか。ほんとうのことは、誰にもわからない。

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The END
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