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企業の中でDXに携わっています。日本のDX黎明期から、戦略・ビジネスモデル・データサイ…

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企業の中でDXに携わっています。日本のDX黎明期から、戦略・ビジネスモデル・データサイエンス・人材育成など幅広く活動してきました。キャリアの原点はITではなく、製造業の研究・新規事業出身です。※当アカウントは個人的な見解を述べるものであり、所属する組織を代表するものではありません

最近の記事

AI時代、人間は妄想力で勝負?

想像力とは組み合わせ。それならAIの方が得意? AI時代には想像力、更に言うなら突飛な妄想力が必要だ。人間の生き残る道はそこにある。そういった言説をよく耳にします。本当でしょうか? 今回はこの点を取り上げたいと思います。 そもそも妄想力は何から出てくるのでしょうか。イノベーションが新結合だと言われ、“太陽の下に新しきものなし” という旧約聖書の言葉を合わせて考えれば、妄想とは純粋に新しい要素を思い付くというより、既存のモノやコトを組み合わせた新しいアイデアをあれこれ考えて

    • DXで取り組むべき問題の設定方法? 上下からのリーダーシップを考える

      以前のDXスキルツリー解説の中で、「DXニーズは経営課題と現場課題の交点である」「経営課題だが現場課題でないものは絵空事、現場課題だが経営課題でないものは些事」と述べました。本日はここをもう少し掘り下げたいと思います。 経営課題は粒度が大きすぎて、そのままでは変革ニーズにならない 例えば競合と熾烈なシェア争いとしている製造業を想定してみましょう。 ここで、経営課題を「5年後に競合を蹴落とし優位に立っていたい」と設定したとします。このとき経営課題でないのは、競合を避けて新

      • この研修には何の意味がある? 修了後の見通しを持つための『DXスキルツリー』

        DX人材育成が難しいのは、DXの全体像が分かりづらいから DX人材が足りない。もう何年もそういう声を聞き続けています。一方で、研修プログラムを受けた人材が、そのスキルをうまく活用できていないという話もよく聞きます。これって少しおかしいですよね。足りないんだったら、育成した人はなぜすぐ不足を埋められないのでしょうか。 個人的な感覚ですが、DXの進め方が分からないのがその原因だと思っています。どんな人材が、どういうタイミングで、どんな役割を果たすのか。その共通認識がないままス

        • 限界費用ゼロ社会は嘘だった? クラウド時代の誤算

          "限界費用ゼロ社会" デジタルで限界費用がゼロになるというのは、もはや当たり前の話でしょう。 限界費用の定義を手短かに復習するなら、例えばある製品を提供するとき、開発や設備投資などの初期費用は考慮せず、あと1つを製造するのに掛かるコストのことです。物理的な製品であれば原材料費が掛かるためにゼロにはなりえませんが、デジタルの場合には複製コストが無限にゼロに近いため、その特性を活かしたビジネスを考えるのが重要とされています。 例えば画像や音楽では、その影響が顕著に出ています

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        • DXで取り組むべき問題の設定方法? 上下からのリーダーシップを考える

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          そんなにデジタル依存で大丈夫? デジタルネイティブを考える

          DXを考えるとき、いくつかの思考の軸があります。ユーザ体験、バックキャスト、デジタルネイティブ、サービスドミナントロジック、民主化、データ駆動などです。今日はこの中のデジタルネイティブに関して考えてみたいと思います。 デジタルネイティブにとっては、いつもデジタルがあるのが当たり前 デジタルネイティブ。要するに、物心ついたときからデジタルがあるという意味です。デジタルネイティブというのは、デジタル技術やそこから派生するカルチャーを、肌感覚として自然に身に着けていること、更に

          そんなにデジタル依存で大丈夫? デジタルネイティブを考える

          昔と比べて、1人でできることが増えている? デジタルがホワイトカラーの多能工を可能にする

          デジタルは何を変える力があるのでしょうか。今日はその中でも小さくて大きい問題を論じてみたいと思います。 スタートアップが経営できるのはITが進化しているから わずか数十人のスタートアップ企業が高いパフォーマンスを保てる理由はなぜなのでしょう。 それは、専門家の価値が相対的に落ちているからです。 正確には、能力が高ければ高いほど価値を生み出す専門家と、一定レベルに達すれば差はない専門家が存在していて、後者の価値が落ちているのです。 技術面としては2つの特徴があります。ひ

          昔と比べて、1人でできることが増えている? デジタルがホワイトカラーの多能工を可能にする

          DXと情報システムの違い? 対立を乗り越えるための考察

          デジタルと情報システムの違いが、思想の違いであって技術面ではないということは、これまで何度か述べてきました[1][2]。情報システムはOA (Office Automation) の延長として、効率化・省人化をその本分とします。一方でデジタルはインターネットの派生物であり、「つながる」「データを使う」ことで社会環境が変わり、新しいビジネスの姿が生まれるのがその本質です。この違いにこだわるのは、これまで何十年もIT化を進めてきて、IT導入疲れを起こしている人々に「またか」「看板

          DXと情報システムの違い? 対立を乗り越えるための考察

          変革が不要な理由? 反DXの立場で考えてみた

          変革が必要な話ばかりしているので、読者にはポジショントークに聞こえてしまっているかもしれません。ポジショントークは、ビジネスでは必ずしも否定されるものではありませんが、それでは金勘定を越えた、心を動かすようなメッセージ性は出せないと思っています。変革がしばしばボランティアで始めねばならない活動である以上、動いてほしいのは算盤ではなく心だからです。 ですから今回は、逆のポジション、つまり反DXの立場をとってみたいと思います。架空の製造業の経営者をイメージしてみました。 いか

          変革が不要な理由? 反DXの立場で考えてみた

          DXは技術導入だけではダメなのか? 変革に必要な準備

          DXを推進する人たちは、口を揃えて「DXはXが大事、デジタルは変革の手段だ」と主張します。ですが、本当にデジタル技術の導入だけでは不足なのでしょうか。 デジタル技術の導入のみ行うということは、仕事のやり方はそのままにして、個別のプロセスを改善することを意味します。もちろん、個別のプロセスを改善する意味はあります。コスト削減、生産性向上、品質安定化など目に見える成果を生むからです。 ではそれ以上の変革はなぜ必要なのでしょう。 よく言われるのは、個別プロセスの改善だけでは変

          DXは技術導入だけではダメなのか? 変革に必要な準備

          ChatGPTで何が変わる? 仕事、情報の流通、知識の形

          AIで仕事がなくなるのか、外注をヒントに考えてみる ChatGPTなどの大規模言語モデル (LLM) は、どうやら本格的に業務に影響を与えそうです。例えばIBMはChatGPTの登場から間もない時期に、関連職の採用を控えるという方針を打ち出しました。今後ホワイトカラーの仕事がどうなるのか、目が離せません。 私たちの仕事もAIに置き換えられてしまうのでしょうか。技術的にある程度可能になったとき、何が起きるのでしょうか。 まずその手前から始めましょう。外注で代替可能だった業

          ChatGPTで何が変わる? 仕事、情報の流通、知識の形

          不可能な翻訳? DXカタカナ語問題

          世界には翻訳できない言葉が存在する 『翻訳できない世界のことば』という書籍をご存じでしょうか。文字通り、その言語でしかうまく言い表せないような言葉が集められていて、全ページにイラストの入った可愛らしい本です。パラパラとめくると、“Pålegg (ポーレッグ)” はノルウェー語で「パンに乗せたり挟んだりして食べるもの全て」を意味するとあります。肉もチーズもレタスもジャムもポーレッグ。タガログ語の “Kilig (キリグ)” は「お腹の中に蝶が舞っている気分」。嬉しいことがあっ

          不可能な翻訳? DXカタカナ語問題

          社内DXチームに必要な知識とは? (特に企画職)

          DXの専門家は難しい立場に置かれている 先日「ビジネス側の人材にはITの知識が必要だ、それは機会を見逃さないためである」と述べました。ではDX専門組織の人間は、ビジネス側の人々が業務知識にプラスアルファして必死に勉強する間、安閑と惰眠を貪っていればいいのでしょうか。 もちろん、断じてノーです。 改めて言語化すると、DX専門組織というのも難儀なものです。ずっと事業に打ち込んでいる人たちの、これまで知恵と努力で積み重ねてきたビジネスモデルやビジネスプロセスに対して、もっとデー

          社内DXチームに必要な知識とは? (特に企画職)

          DXにITリテラシーは必要?

          DXを遂行するのにどうしてITの知識が必要なでしょうか。 当たり前の疑問? いえ、必ずしも自明ではないと思っています。 まず前提として、DXはITを軸とした変革活動です。以前に述べた、デジタルとITの差異は問題としません。ここでは、一般的な業務を行ってきた会社員が、意図的に異分野の勉強をしない限り手に入らなかった知識のことを論じたいからです。 自分の専門って、やっぱり理解してほしいものです さて一般論として、専門家というのは自分の専門のことを分かってほしい生き物です。会

          DXにITリテラシーは必要?

          ChatGPTが定着すると箇条書きが重要になる?

          以下の文章を読んでみてください。 これはChatGPTに以下の箇条書きを見せて作文してもらったものです。 DXとはデジタルを用いて様々なことを変革する行為である ここで問題なのは、何がデジタルでどういう変革なのか、その中心的な概念を定義することである なぜなら、全てを包含する言葉は何も語らないのと同じだから しかし、デジタルとそうでないものを完璧に切り分けるのは難しい。いま既に多くの混乱が認められるだけでなく、これから新しい技術も次々に登場するからだ 変革の定義も

          ChatGPTが定着すると箇条書きが重要になる?

          Society3.5の現実:情報社会は本当に到来したのか?

          少し前の稿で、筆者の認識では、Society 5.0の到来はおろか本格的な情報社会すら到来しておらず、現在はSociety 3.5だという話をしました。本日はその補足をしたいと思います。 人類の歴史を狩猟社会 (Society 1.0)、農耕社会 (Society 2.0)、工業社会 (Society 3.0)、情報社会 (Society 4.0) という形で区切っていくのは、未来学者アルビン・トフラーの影響を強く感じます。トフラーは1980年の著書『第三の波』の中で、農業

          Society3.5の現実:情報社会は本当に到来したのか?

          DXに必要なのは技術? 文化の重要性を考えてみる

          技術のみならず、文化にまで口を挟むDX専門家 デジタルの専門家は、どうして会社の風土や仕事の進め方に口を出すのでしょうか。デジタル側の方は異分野における成功体験の押しつけではないのか気になるでしょうし、ビジネス側の方は鬱陶しくて仕方ないとか、越権行為などと感じるかもしれません。 ある専門家は、経営者がDXを始めるには何からすべきかと聞かれて、GitHubにアカウントを作ることだと答えたそうです。つまり、経営者が自らプログラムを書き、他者とコードをシェアすべきということです。

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