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社会人になる前に知っておきたい、『受け取る人』から『与える人』への転換

先日、ある先生にお招き頂いて、広告論のゼミの卒業パーティーにゲストとして参加させていただき、卒業生に向けて短いスピーチさせて頂きました。

私が非常勤講師として出会った学生の皆さんにも届くといいな・・と思い、スピーチのフルバージョンを書きたいと思います。

広告論ゼミ卒業生の皆様へ

ご卒業、おめでとうございます。

ご指名ということですので、少し先に社会に出た先輩として、一言お祝いの言葉を述べさせていただきます。

みなさんはこれまで、大学の勉強やゼミ、バイトなど、さまざまな努力をしてきたと思います。

そして、これから社会に出て、そこで蓄えた力を発揮されると思います。

ところで、大学生までと、社会人以降を比べた時に、一番の変化は何だと思いますか?

それは、「受け取る人」から「与える人」への変化です。

大学までの日々は、色々なことに取り組んできたと思いますが、基本的には「受け取る人」でした。

親からの愛情を受け取り、学校や先生から学ぶための知識を受け取り、色々なものを受け取っては消化していく日々だったと思います。

社会に出ると、今度は一転して「与える人」になります。

例えば会社に就職する方は、先輩やお客様に何かを与えて、その結果としてお給料を頂くことになります。起業をする場合も、基本的には一緒です。

いつか皆さんが親になったら、今度は子供に愛情を与えることになるでしょう。

「受け取る人」から「与える人」になる。

そう言われると、なんだか自信がなくなるかもしれません。そんなにすぐに、与える人になれるのかな、と。

でも、心配することはありません。

私も、最初の数年は、たいして何も与えられない社会人でした。

周りの先輩が根気強く丁寧に教えてくれた結果、数年経って、なんとか少しずつ「与える人」になってきた、という感じです。

しかし、すぐに与えられなかったとしても、4月1日から、自分は「与える人」になるんだ、という意識を持つことは、誰にでもできます。

意識が変わると行動が変わる。そんな言葉もあります。まずは意識を変えるところから始めることをおすすめします。

では、どうしたら、「与える人」に近づけるのでしょうか。

私はこれまで、何人か新人の教育担当を受け持つことがありました。私がいつも新人の方に伝えている、1年目の目標が2つあります。

1つ目の目標は、「健康」です。

学生から社会人への環境変化は、思ったより体やメンタルに負担を与えます。

自分は体育会系だし大丈夫だ、そんな人こそ要注意です。

いきなり1年目から大活躍しなくてもいい。毎日楽しく仕事をしている若い新人がいることは、チームに元気を与えます。健康でい続けるだけで、1年目として100点です。

2つ目の目標は、「ありがとうの数を増やす」です。

先程お伝えしたとおり、みなさんは「受け取る人」から「与える人」に変わります。

「与える人」が目指すべきは、売上や出世ではありません。「ありがとう」と言われることです。

そもそも、商売の基本は、誰かの役に立って、「ありがとう」と言われることです。

その結果として、売上があがったり、出世することもあるでしょう。でも、「ありがとう」が無い売上や出世はどこかに無理があり、続きません。

ですので、皆さんがまず目指すのは、どんな小さなことでも構わないので「ありがとう」と言われることです。

いきなり1年目から大活躍しなくてもいい。毎日1つ、先輩やお客さん、だれかに「ありがとう」と言われた、もしくは言われるための準備ができたら、その日は100点です。

ところで、「ありがとう」をもらうコツはなんだと思いますか?

こんな話を聞いたことがあります。

ある新人が、先輩に「この書類、後で会議で使うから、コピーを10部取っておいて」と言われたそうです。

ある新人は、言われた通り、コピーを10セットとり、そのまま先輩に渡しました。

また、ある新人は、コピーを10セットとり、ホチキスでとめて、10枚のクリアファイルにセットした上で、先輩に渡しました。

そして別の新人は、コピーをホチキスドメしてクリアファイルにセットした上で、「この書類と関連する記事が今朝の新聞に出ていたので、合わせて10部印刷しておきました」と言って、先輩に渡しました。

今ではコピー機はそんなに使われないと思いますから、少し古い事例でしたね。

さて、みなさんはどの新人が一番「ありがとう」をもらうのが上手いと思いますか?

もし、一番最後の新人だとすると、その新人にはどんな力があったのでしょうか?

それは、先輩の心を読む力です。

その先輩は、いったいなんのために自分にコピーを頼んできたのか。

それを、与えられた情報の中から推測して、自分でできる最大限の努力をしたのだと思います。

この先輩を、新人から見た時の「顧客」だと置き換えましょう。

顧客の心を読む

それは、まさに広告やマーケティングを学んできた皆さんにとって、一番得意なことではないでしょうか。

そう、皆さんはすでに、「ありがとう」と言われるためのスキルを、大学時代から学んでいるのです。

大学の知識は仕事では生かせない、という人もいますが、そんなことはありません。

「受け取る人」として真面目に学んだ知識や経験は、「与える人」になったときに、最大限に生かされるのです。

ですので、自身をもって、「与える人」になるための旅を始めてもらえたらと思います。

4月から「与える人」になる皆さんへ、一足先に「与える人」になった私から、何か少しでも与えることができていたら、とても嬉しいです。

そして、みなさんが一人前の「与える人」になった時には、ぜひその経験や知識を、さらに若い後輩へと「与えて」くださることを祈っています。

本日は、ご卒業おめでとうございます。

ーーー

偉そうに書いていますが、このスピーチを考える作業や、卒業パーティーで若い人たちと話した経験を通じて、私自身も初心に戻るような新鮮さを受け取ることができました。

実際には、与える人になりつつも、人は一生、受け取る人でもあり続けるのだろうな、と思いました。

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