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他人のアイデアを悔しがる経験を持つ人は、企画者として強くなれる

アイデア会議に参加していて、他人のアイデアに「悔しい!」と感じたことはあるでしょうか。360度考えたはずなのに、まだ見落としていた視点があったのか・・。そう思える瞬間を何度持つかが、企画者としての強さに繋がります。

最近、ある学生の一言がきっかけで、改めて事前準備の大切さに気づくことがありました。今回は、その時のエピソードについて書いてみたいと思います。

学生が「悔しい」と言った理由

私が非常勤講師を務めるある大学で、期末レポートの発表がありました。

学生たちには、「ガム」「豆腐」「折り紙」などいくつかのテーマがランダムに割り振られ、市場を拡大させるためのアイデアを個人で考えて、最後の授業で全員発表します。

複数の教員で分担して発表を見るのですが、私が担当したグループは6名で、そのうち3名が「ガム」について考えてきていました(残りの3名は違うテーマでした)。

Aさんは、ガムを「歯を白くするホワイトニングツール」と定義。美容を気にする若い女性に提供するアイデアを考えてきました。Aさんのお父さんは歯科医師だそうで、こんな成分を入れれば実現可能性があるはず・・という興味深い内容でした。

Bさんは、ガムを「ダイエットツール」と捉えていました。ガムを噛むことで顔の筋肉が鍛えられて、その結果姿勢がよくなり、ダイエットにつながるという内容でした。噛むことと姿勢の関係という意外な発見がある、ユニークな内容でした。

Cさんは、ガムを「ストレスチェックツール」だと発表しました。ガムの最大の特徴は「口の中に入れたものを出す」ことだと定義。唾液に反応してストレス度合いが高いと赤くなる、忙しいビジネスパーソン向けの斬新なガムを提案していました。

それぞれが、市場拡大を意識した面白いアイデアで、発表会はとても盛り上がりました。

全員が発表した後に、一人ずつ感想を述べてもらったのですが、Bさんの感想がすごく印象的だったので紹介します。

Bさんの感想は、以下のようなものでした。

「私もガムの強みを色々考えたんですが、Cさんの『口の中に入れたものを出す』という発想が出てこなくて、純粋に悔しかったです。プレゼンでそれを聞いた時にすごく納得してしまって、勝ち負けではないのに『これは負けた』と思いました。それと同時に、一人ではなく、みんなでガムのアイデアを考えたいと思いました」

私にも経験がありますが、360度あらゆる方向から考えたはずなのに、思いつかなかった発想が他人の口から出てくると、悔しいものです。そして、自分の中に新たな視点が加わり、これは消えることはありません。

そうやって、悔しさをバネに視点を増やしていくことで、企画者としての発想力を高めることができるのです。

また、Bさんの言う通りで、この後、Aさん・Bさん・Cさんの3人がチームを組んで議論する時間がとれたら、もっと良いアイデアが生まれる可能性は十分にあります。

一人では生み出せないアイデアを生み出すチームには、事前にしっかり考えてきたメンバーが必要です。この3人が、まさにそうでした。

そこに気がついたBさんは、企画者としてすごくセンスがあるな、と思いました。

アイデア会議は手ぶら禁止

みんなで集まって話しても、良いアイデアは生まれない。そう言う人がいます。

実際に、ただ集まるだけのアイデア会議は効率が悪いことが、過去の研究からわかっています。

以前、打ち合わせに関する本を執筆したときに、アイデア会議がうまくいくルールについて分析したことがあります。

そのうちの一つに、「手ぶら参加禁止」というルールがありました。

たまに、忙しい人が、会議に参加するなり、「えーっと、今日の会議のテーマってなんだっけ?」と言い始めることがあります。これは、アイデア会議の始め方としては、非常に良くないパターンです。

一方、各自が事前に考え抜いて参加するアイデア会議は、みんなの目つきが違います。自分が考えてきたアイデアを早く披露したいワクワクした思いと、批判される不安と、両方が混在した、少し緊迫した雰囲気で始まります。

ちょうど、今回紹介した学生たちと同じです。良いアイデア会議は、まさにここから始まるのです。

私の会社では、アイデア会議のことを「打ち合わせ」と呼ぶことが多いですが、それぞれのアイデアで磨いた刀をチャリンチャリンと打ち合わせて、その火花が新しいアイデアの火種となります。

武士が刀を大事に磨くように、企画職はアイデアを十分に磨いた上で、会議の場に望むことが重要なのです。

どんな立場でも自分のアイデアを持っていく

事前に考え抜くことができているのか、その目安が、他人の発言に「これは負けた」と思えるかどうかです。

事前に考え抜いて来ている人だけが、会議の場で相手の意見に悔しがれます。と同時に、「だったら、こういうアイデアもあるよね」と、相手の意見に、さらに新しいアイデアを乗っけることができるのです。

しかし、Bさんの一言に、ハッとさせられました。私自身、マネージャー職になって、自分がアイデアを持っていく会議が以前より少なくなっていることに気がつきました。どんな立場にあっても、会議で悔しいと思うぐらい、会議の前に考え抜いてから参加しなければ、と。

また、このような緊張感のある会議を設計することが、リーダーとして大事なことなんだと、改めて気づくことができました。

教えながら学ばせてもらった、そんな1日でした。

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