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N氏の食育

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食育をネタにしたショートストーリーや、「食育おばさん」に叱られそうな記事をまとめています。よい子はご両親の許可をもらってから読んでね。
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記事一覧

食べないで

子供のころ、カボチャを嫌がる僕に母親が 「カボチャさんも『おいしく食べて』って言ってるから、食べてあげなさい」 みたいなことを言って、食べさせようとしていた記憶があります。 おかげで偏食が治り、いまではカボチャの天ぷらが好物となりました。 …なんて話をして、 「オレってちょっといい話してるかも」 と悦に入っていたのですが…。 斜め向かいに座っていたAさんが、冷ややかな発言をしました。 「カボチャは『おいしく食べて』なんて思ってないですよ」 以前、SNSで食育のコミュニテ

4年2組のサステナブルな困惑

~ 副題:未来の「命の授業」がこんなだったらいやだ ~ 「なんかビミョー」 そう思っているのは僕だけじゃないような気がします。 クラスで飼った生きものを、食べるかどうか。 それを決める「命の授業」の日。 「ではみんな、この子たちの未来について、話しあいましょうね」 先生もどこか困惑しているように見えます。 「意見のある人は手をあげて」 だれも手をあげませんでした。 「じゃあ当てていくわね。大西さん」 指名された大西さんが立ち上がり、「食べなくていいと思います」と無

痛い痛い痛い!となる食べもの

以前、「フグの卵巣の糠漬け」の話をしました。 10年ほど前ですがイギリスの「サン」という新聞が「世界8大危険料理」を発表。 日本のフグはその8大危険料理の一角を占めていました。 「なんであんなヤバイものを食うんだ?」 と世界中の人が不思議がっている証拠ともいえるでしょう。 世界8大危険料理には韓国の「サンナクチ」もチャート入りしています。 今回はその「サンナクチ」について。 筆者はサラリーマン時代、初めて韓国に出張したときに、ソウルから4時間ほど走った群山(クンサン)と

フグの卵巣の糠漬けは「謎食」だ

筆者は石川県出身で、実家のあたりには 「フグの卵巣の糠(ぬか)漬け」 という郷土食品があります。 毒の強いフグの卵巣を3年間、糠漬けにすると、毒が抜け、珍味になります。 どうしてなのか、そのメカニズムはまだ解明されていません。 解毒メカニズムが不明なため、フグの卵巣は食品衛生法で食用が禁止されています。 例外的に、伝統的にフグの卵巣の糠漬けを作っていたところだけが、製造を認められています。 これを食べるとき、僕はいつも 「3つの疑問」 を感じるですよね。 疑問その1:な

栄養素のネーミングになんとなく不安感がただよう件 :-)

野菜に含まれる栄養素には、タンパク質、脂質、炭水化物があり、「3大栄養素」と呼ばれていますね。 さらにビタミン、ミネラルも含めると「5大栄養素」となります。 近年はこれに加えて「ファイトケミカル」がクローズアップされるようになりました。 ファイトケミカルとは何か、については説明を省略するとして、ここではネーミングの話をします。 ▽ 昔はほとんど知られていなかったファイトケミカル。 でも昨今はいろいろと知られています。 たとえば アントシアニン カテキン βカロテ

史上最強の栄養教諭 :-)

以前この話に登場した「強面(こわもて)の管理栄養士」、佐久間象子。 佐久間象子の本業は栄養教諭です。 栄養教諭とは、児童・生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる教員のこと。 要するに「食育の先生」として学校に勤務する人です。 今回は佐久間象子の「栄養教諭ぶり」を観察してみましょう。 ▽ その日、3年1組の児童たちは朝からピリピリしていました。 佐久間象子先生が給食時間にやってくる日だからです。 佐久間先生は1日1クラスずつ、給食時間に指導を行っています。 4時間目の終

もし「食育原理主義人民共和国」みたいな国があったら。【その3】 :-)

前回(その2)の続きです。 田中さん、つかまる前回登場した田中さん。 シンドフジ共和国に入国したあと、どうなったかというと…。 しばらくシンドフジ共和国で観光をしていたのですが、途中で何かやらかしたのか、ある日、食育警察に連行されました。 どこかのヤバイ施設に収容されてしまったようです。 そんなシンドフジ共和国はマゴワヤサシ大統領の協力な独裁のもと、 食育軍隊 食育警察 食育原理主義による教育制度 が整えられ、食育大国としての地位を着々と築きつつありました。

食育オペレーターつき宅配ピザ :-)

かつて、 「美味しいものにかぎって体に悪い」 という時代がありました。 ハンバーガーやラーメンなど。 今でこそ材料や調味料が工夫され、ヘルシーなハンバーガーやヘルシーなラーメンも出てきていますが、一般にはこうした食べ物は 「体に悪いけど美味しい」 部類に認識されています。 ピザもそうです。 アメリカではピザは学校給食に出てきますが、子どもの健康に良くないということでピザを学校給食から排除しようと国会で審議されたこともありました(結局、その法案は否決されてしまいましたが)。

「あるよ」の人がこんなところにもいた :-)

むかしむかし。 アメリカはオレゴン州の、とあるさびれた国道沿いに、ポツンと一軒家のレストランがあるのを見つけました。 今回はその店で出会った、料理人の話です。 その店には、こんな看板がついていました。 「お客様のあらゆる注文に応じます。応じられなかったら、100ドル差しあげます」 「『あるよ』の人みたいだな…」 そうつぶやいた僕は、ちょっとイジワルな気持ちになって店に入りました。 100ドル、もらっちゃおう。 おっと。 その前に、注文を考えておかないとな。 僕は、適当に

もし「食育原理主義人民共和国」みたいな国があったら。【その2】 :-)

前回(その1)の続きです。 食育原理主義人民共和国からの招待状ご存じ、シンドフジ共和国のマゴワヤサシ大統領は、 「食育原理主義」 にもとづく圧政を敷いています。 そのマゴワヤサシ大統領から、 「ぜひ我が国の食育ぶりを見にきてほしい」 と招待を受けた日本人がいました。 本人が名前を明かしたくないというので、ここでは田中さんとしておきましょう。 マゴワヤサシ大統領は、若いころ日本に留学し、日本の食育に感銘をうけた過去がありました。 そのころに世話になった人が、田中さんです。

アメリカの自然食品店で「ママ、また明日」と叫んではいけない理由

バラク・オバマ氏が大統領だったころのアメリカは、食育天国でした。 詳しくはこちらの記事をごらんください。 そのころの、シアトルでの出来事です。 とある自然食品店をうろうろしてたら、日系人とおぼしい初老の女性に日本語で声をかけられました。 「あなた、日本から来た日本のかたね?」 「そうですが」 「ああやっぱり」女性は言いました。「ああやっぱり日本人。その心を閉ざしたような歩き方。母音の発音が下手そうな口元。屈託だらけのあごの形。日本人ねえ」 「そうですか」僕はムッとして言い

【日本昔ばなし食農編】イナゴ相手にわざわざ訴訟を起こした村の顛末 :-)

イナゴを召喚す400年とすこし前。 織田信長が生きていた時代の終わりごろ。 九州に、キリスト教の村がありました。 フランシスコ・ザビエル率いるイエズス会の宣教師たちが、布教に成功していたのです。 ある年のこと。 イナゴの大群が発生し、稲を食いつくしそうになっていました。 怒った村人たちは、宣教師に相談しました。 宣教師は言いました。 「イナゴを裁判にかけましょう」 「は?」 「イナゴを裁判にかけ、神の裁きを受けさせるのです。ヨーロッパでは時々やっていますよ」 「イナゴの裁

有機ある行動ができなかったスーパーマーケット店員の一言 :-)

むかしむかし。 アメリカのとある片田舎に、小綺麗な「地産地消」スーパーがありました。 その店での、ある日のできごとです。 一般にアメリカの食品店は、日本のスーパーと違ってあまり頻繁に内装をリニューアルしません。 だいたい、いつ来ても同じレイアウトです。 ところがこの地産地消ショップは、しきりに内装を新しくしていました(※)。 レイアウトがころころ変わるため、目当ての品物を見つけるのにかなり戸惑ったりしますが、時間があるときは探す楽しみもあったりします。 「分かりにくくて不

ある食育カップルが天国で夫婦喧嘩を始めたわけ :-)

むかしむかし。 あるところに、長生き夫婦がいました。 ともに90歳ちかくになっても頭脳明晰、視力聴力どちらも問題なし。 体もいたって健康でピンピンしていました。 しかし、ある日、ジョギング中に交通事故にまきこまれ、二人とも亡くなってしまいました。 ∞ 2人がハッと気がつくと、そこは美しい海のほとり。 目の前に神様が立っていました。 「よく来たな。待っていたぞ。ほれ、天国の永住カードじゃ。スマホも用意しておいた」 神様は2人にカードとスマホを渡しながら、こう続けました