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4年2組のサステナブルな困惑

~ 副題:未来の「命の授業」がこんなだったらいやだ ~


「なんかビミョー」
そう思っているのは僕だけじゃないような気がします。

クラスで飼った生きものを、食べるかどうか。
それを決める「命の授業」の日。

「ではみんな、この子たちの未来について、話しあいましょうね」
先生もどこか困惑しているように見えます。
「意見のある人は手をあげて」

だれも手をあげませんでした。

「じゃあ当てていくわね。大西さん」

指名された大西さんが立ち上がり、「食べなくていいと思います」と無表情に答えて座ります。

「次は山本君」

「生きものが他の生きものを食べるのは自然のルールだと思います」

そんな感じで当てられた児童がやむなく発言をしていきましたが、みんな、やりにくそうでした。

教室の隅にある虫カゴに目をやると、「彼ら」が跳ねています。
コオロギなんですよね。

サステナブルやフードロスの事情で今どきの「命の授業」はこうなってる。

昔のはブタだったらしいから、食べるか食べないかで盛り上がったんでしょう。
コオロギでそれやれと言われてもな。

先生は全員を当てて意見を言わせました。
そうしないと45分間の授業が持たないと考えたのかもしれません。
たぶん先生も「コオロギで命の授業は難しいよー」と内心思っているのでしょう。
教育委員会がやれというからやっているみたいな?

とにかく僕も当てられて「逃がすのがいいと思います」そう発言しました。

ブタだと盛り上がり、コオロギだとそうならないのはコオロギに悪いとは思います。
同じ命じゃないか。
でもコオロギは、まだましで、飼ってるのがバクテリアとかだったら、議論のテーマにならないのでは。

さて、クラス34人全員を当て終わると、ちょうどいい時間になったみたいです。
どこかほっとした感じで
「じゃ、宴もたけなわだけど、投票に移りましょうね。顔を伏せて」
高らかに宣言する先生。

宴もたけなわって…。

投票が終わり黒板をみると、13:21で「食べない」の勝ちでした。

先生が無表情に虫カゴに語りかけます。「よかったわね」
なんか怖い。

怯えながらも僕は
「そういえば今日の給食もコオロギパンじゃなかったっけ?」
ぼんやり考えていました。




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