もし「食育原理主義人民共和国」みたいな国があったら。【その2】 :-)

前回(その1)の続きです。

食育原理主義人民共和国からの招待状

ご存じ、シンドフジ共和国のマゴワヤサシ大統領は、
「食育原理主義」
にもとづく圧政を敷いています。

そのマゴワヤサシ大統領から、
「ぜひ我が国の食育ぶりを見にきてほしい」
と招待を受けた日本人がいました。
本人が名前を明かしたくないというので、ここでは田中さんとしておきましょう。

マゴワヤサシ大統領は、若いころ日本に留学し、日本の食育に感銘をうけた過去がありました。
そのころに世話になった人が、田中さんです。

田中さんは、最初は招待を断るつもりでいました。
だって、マゴワヤサシ大統領は独裁者です。
独裁者は、いつ機嫌を悪くするか予想できません。
機嫌が悪くなって

  • 苦手な野菜を食べる刑

  • 家族団らんで食事をする刑

  • 「ひみこのはがいーぜ」の中身を暗記するまで食事を抜く刑

などに処せられたらたまらないからです。

「ん? それって怖いの?」と思ったあなた。
あなたは食育の闇を知りません。

しかし田中さんは、こうも思いました。
招待を断ったら断ったで、やつは私になにをするかわからない。
なにしろ独裁者だからな。
かの国随一の食育おばさんを日本に送り込んで、私を食育しようとするかもしれない。
行くべきか断るべきか。
悩んだ末、じっと死を待つより敵地に行って散ろう。
そう決心した田中さんでした。

食育原理主義人民共和国の入国方法

マゴワヤサシ大統領は、招待すると言っときながら、飛行機はエコノミークラスのチケットしかくれませんでした。

なんてケチなんだ。
そう思いながら田中さんがしぶしぶ乗りこんだのは、ニュートリ・エアライン(栄養航空)22便。
かの国のナショナルフラッグキャリアです。

日本を飛び立って数時間後、機内アナウンスがありました。
「皆様、お早うございます。よくお休みになられたでしょうか? 当機はあと1時間でシンドフジ共和国のマクロビ空港に到着いたします。ただいまの現地時間は午前8時17分、天候は晴れ、気温は摂氏20度です。入国書類をまだお書きになっていない方は、お急ぎください」

機内で配られた入国書類は、こんな書類でした。

◆◆◆

<進め食育はばたけ食育 シンドフジ共和国へようこそ!>

あなたの入国を歓迎します。
以下の質問に正確にお答えください。
この書類は入国審査官にお渡しください。

お名前:
国籍:
居住国:
あなたの居住国の食料自給率:

航空機の便名:

機内食でいただきます・ごちそうさまを完璧に言いましたか?
(当てはまるものを○で囲んでください)
*はい
*いいえ

機内食は残さず食べましたか?
(当てはまるものを○で囲んでください)
*はい
*いいえ

シンドフジ共和国への入国目的
(当てはまるものを○で囲んでください)
*メタボ撲滅
*援農
*レシピ提案
*食育教室
*その他(             )

シンドフジ共和国に持ちこむ予定の物品で、以下に当てはまるものがあれば、申告してください。
(当てはまるものを○で囲んでください)
*マイ箸
*食育カルタ
*栄養教育用フードモデル
*食育教本(食育白書を含む)

過去3か月以内に以下の国に居住または滞在していた場合は、申告してください。
(当てはまるものを○で囲んでください)
*肥満の国アメリカ
*フードテックの国イスラエル
*スローフードの国イタリア
*菜食の国インド
*フードマイレージの国ジャパン
*代替肉の国シンガポール
*美食の国フランス

以下の食習慣に当てはまる場合は、申告してください。
(当てはまるものを○で囲んでください)
*箸の使い方が下手だ
*好き嫌いがある
*ラーメンの汁は最後まで飲んでしまう
*週に1度以上、ハンバーガーを食べる
*個食である
*あまりよく噛まない

私は、「進め食育はばたけ食育」の精神にのっとり、虚偽の申告をせず、正直に申告したことを誓います。
名前:
日付:
署名:

ご協力ありがとうございました。
シンドフジ共和国 食務省 入国管理局

◆◆◆

「なんなんだ、この入国書類は…」
書類を書きながら、招待を受けたことをひどく後悔して涙ぐむ田中さんなのでありました。

(次回につづく)




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