有機ある行動ができなかったスーパーマーケット店員の一言 :-)
むかしむかし。
アメリカのとある片田舎に、小綺麗な「地産地消」スーパーがありました。
その店での、ある日のできごとです。
一般にアメリカの食品店は、日本のスーパーと違ってあまり頻繁に内装をリニューアルしません。
だいたい、いつ来ても同じレイアウトです。
ところがこの地産地消ショップは、しきりに内装を新しくしていました(※)。
レイアウトがころころ変わるため、目当ての品物を見つけるのにかなり戸惑ったりしますが、時間があるときは探す楽しみもあったりします。
「分かりにくくて不便」
という人もいれば、
「けっこう面白い」
という人もいて、評判はまちまちでした。
▽
さて、その地産地消専門店でのことです。
初老の婦人が、カートを押していました。
婦人は野菜が並んでいる売場に来ると、近くにいた店員に声をかけました。
「ねえそこのあなた。一体どうなってるのかしら」
声をかけられた店員は背の高い若者でした。
シャレたピアスをしています。
高校生のバイトでしょうか。
接客は慣れてませんという感じです。
「な、なにか?」
すると、婦人は目をつりあげました。
「有機野菜はどこに並んでるの? この店ったら、来るたびに並び方が違うものだから、困るじゃないの」
「ゆ、有機野菜、ですか?」
「ここにあるのは有機野菜なの? それとも農薬がたっぷりかかった慣行栽培なの? どっち?」
「か、慣行栽培、ですか?」
「おやおや、あなた、有機野菜とか、慣行栽培とか、そういう言葉じたいを知らないみたいね。なんでそんな子を雇うのかしら、この店は」
婦人は言いました。
「誰か分かる人、いないの?」
「誰かわかる人、いないの?」
そう言われて、若者はあわてて走り去り、先輩店員を連れて戻ってきました。
先輩社員は40くらいの、落ち着いた雰囲気の小柄な人でした。
その先輩店員が丁寧な口調で言いました。
「奥様、野菜をお探しで?」
「夫に食べさせる野菜を買いに来たのよ」
婦人は言いました。
「有機野菜なのかそうじゃないのか、ちゃんと分かりやすく表示しておいてほしいわね」
「それは大変すみませんでした」
「で、どうなの。ここに並んでいるのは、毒がたっぷりかかった危険な野菜なのかしら?」
先輩社員は、目を丸くして答えました。
「いいえ、とんでもありません。違います、奥様。当店の野菜にはどれも毒なんかかかっていません」
それから先輩店員はすまなそうな顔をして、続けました。
「奥様。お手数をおかけするようで恐縮ですが、毒の部分は奥様ご自身でやっていただかないと…」
-完-
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