お弁当×フードチケットの配布で、地域を巻き込む新しい「子ども食堂」を──写真で知ろう!小規模保育【保護者支援】
地域の拠点として、在園児に限らず、広く子どもたちや家庭を応援したい。そんな思いで始まった『フェアリー子ども食堂』では、乳幼児のいる世帯が参加しやすいよう、園でつくったお弁当を配る「テイクアウト」型事業を展開。地域の店舗からも支援を募ることで、より“みんなでみんなを支え合う”仕組みを目指しています。
<フェアリールーム天六園/大阪府大阪市>
■ ねらいと配慮
そこで園が運営主体となり、在園児の保護者に「気軽に来てください」と働きかけていくことから、より多様な人々が参加できる場づくりを計画。“すべての子育て家庭を支える場所”としての認知をゆるやかに広げるなかで、新たな「子ども食堂」のイメージをつくり出し、地域の支援拠点として誰もが園を思い浮かべてくれるようになったらと考えました。
乳幼児を抱える家庭はそもそも「外食する」ことにハードルもあることから、スタートとして、まずは園の給食室でつくったお弁当を提供していくことに。また、1つの園だけでやるには負荷も大きいため、夕方や土曜に合同保育も行ってる近隣の認可園(同一法人)などをいくつか巻き込み、メニューも栄養士などを交えてみんなで考案していきました。
「子どもの食堂」の運営費としては、こども家庭庁の「保育所等を起点とした食支援事業」(認定NPO法人フローレンスが運営)の助成金を活用し、500円相当のお弁当50食(25世帯分)を無料で提供。さらに同じ制度内の「フードパントリー」の仕組みも併用して、地域の飲食店の商品をもらえるフードチケットも、別途無料で配布するようにしました。
フードチケットを持っている人に、パン屋さんのパンを渡したり、唐揚げ屋さんの唐揚げを取りに行ってもらったり、食堂の丼を食べに行ってもらったりすることは、その方々が自然と「地域にこんなお店があったんだ」と知る機会にもつながります。園だけでなく地域みんなで子育て家庭を支え合う事業にしていきながら、地元店の活性化にも貢献できたらと考えました。
■ 振り返り
スタートしてまだ数カ月の『フェアリー子ども食堂』ですが、毎回、受付窓口のLINEには50食を上回る事前申込が入っています。園の保護者はもちろんですが、区役所や子育て支援センターで知ったという方もいらっしゃり、早くも地域への広がりを感じています。
来てくださった方のうち、SNSへの投稿を許可いただける方には、協力農家からのお米のプレゼントも企画。やはり多くの方がご協力くださいました。
アンケートなどを通じて、「今まで子ども食堂を利用したことがなかったけれど、こういう場があるとうれしいです」「夕食づくりを少しサボれるのも助かります」「ぜひ地域で続けてほしい」など、多数の応援のメッセージもいただいています。
またお弁当の中身は、家庭でもつくりやすい、素材を生かしたメニューにしていますが、ベースとなっているのは園の給食です。そのことを受けた園の保護者からは、「給食の内容が気になっていたので、実際に食べることができてよかった」という声もあり、保育園についてより知っていただく貴重な機会にもなるなと感じました。
■ 「小規模保育」としての視点
保護者に限定しない支援を行うことは、ただ園の存在を地域で知ってもらうだけでなく、訪れる方に、園が大事にしていることやスタッフの人柄などを感じ取っていただく貴重な機会になります。
子ども食堂を機に、保育士に困りごとを話してくださる方もいれば、「保育園に見学に行ってみます」とおっしゃってくださる方もいます。活動を続けることが、まだ小規模保育園を“2歳児以下の施設”とだけしか認識されていない方に、小規模ならではの細やかな関わりなどを伝えていける大切なコミュニケーションの場になるはずです。
もちろん、今回の事例は小規模保育園だけの取り組みではありませんが、規模の小さい園でも近隣と連携して新しい地域活動をしていく、一つのモデルになり得ます。現在は同一法人の園だけで行っていますが、すでに他の法人にも声をかけ連携の動きを進めており、こうした動きから、地域の中で一人ひとりの子どもを大切にしていく社会をつくっていけたらと考えています。