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「炎上」を未然に防ぐ! 企業コンテンツ制作の3大注意点

こんにちは!

ぼくは編集者として、数多くの企業コンテンツの制作に携わっています。そのなかで、「あ、これはマズいな」と思う瞬間が何度もありました。むしろ「ヒヤリ・ハットの連続だった」といってもいいかもしれません。

先日も、ある企業の広報担当者からこんな相談を受けました。

最近、うちの会社のオウンドメディアの記事内容がちょっと心配で……。先月アップした記事も、新製品の開発ストーリーから「A社(取引先)の技術を採用していることを特定される恐れがある」と営業から指摘が入り、あわてて修正したんですよ。コンテンツの魅力を保ちつつ、リスクを回避するにはどうすればいいでしょうか?

こういった悩み、けっこう多いと思います。

企業コンテンツ制作において、コンプライアンス面で気をつけるべきポイントはたくさんあります。

今回は、広報担当者や社内編集者(インハウスエディター)が押さえておくべき3つのポイントを見ていきましょう。

1. 「企業名」の取り扱いには細心の注意を


1つめは、「企業名の取り扱いに細心の注意を払う」です。

企業コンテンツ制作において、とにかくリスクを抑えたいなら、原則、企業名(他社の名前)は入れないことをおすすめします。社名を出すこと自体が、その企業に対して賛同や批判をしているように受け取られる恐れがあるからです。

もしくは、企業名をマスキングできないか(=ぼかせないか)を検討しましょう。「IT企業」「建設会社」「コンサルティング会社」といった感じで、簡単に企業を特定できない表現にするわけです。

ただし、企業名を伏せていたとしても、第三者から見て「これ、あの会社だな」と容易に特定できてしまう表現は、その企業名を書いていることとイコールなので注意してください。

たとえば、以下のような表現です。

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  • 最近サイバー攻撃にあった大手出版社では.....

  • 2021年に大規模システム障害を起こした金融機関は......

  • 某お菓子メーカーの基幹システムの件で話題になっているコンサルティング会社が......

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企業名をマスキングせず書く場合は、以下を検討しましょう。

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  • 複数の企業名を挙げる

「A社、B社、C社などの大手企業が......」のように、複数の企業名を挙げることで、特定の企業への偏りを避けられます。

  • 公開情報を引用する

「日本経済新聞2023年5月1日付によると、A社の市場シェアは20%に達したとのことです」のように、公開されている情報源を明記した上で企業名を出すのはOKです。

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企業名の取り扱いに注意を払うことで、不要なトラブルを回避できます。

ただし、こうした配慮をしすぎると文章が曖昧になり、読者にとって理解しづらいものになる可能性も。「本当に企業名を出す必要があるのか」をチーム内で検討し、文脈に応じて判断しましょう。

2. 「誤解を生む可能性がある表現」は避ける


2つめは、「誤解を生む可能性がある表現に注意する」。以下は現場で使われがちな、とりわけ注意したい表現です。

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  • 誇張……「圧倒的な性能」「完璧な品質管理」「業界No.1」など

  • 曖昧 ……「近日公開」「多数のユーザー」「比較的安全」など

  • 断定 ……「絶対に失敗しない」「必ず効果がある」「間違いなく成功する」など

  • 主観……「使いやすい」「美しいデザイン」「快適な乗り心地」など

  • 否定……「他社製品とは違い...」「一般的な製品では難しい」など

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こうした表現は、大半の読者はスルーするものの、一部の読者は誤解したり、根拠を求めてきたりします。チェックリストを作成し、複数人で確認するのがおすすめです。

この「誤解を生む可能性がある表現」について、もうひとつ話題を。

以前、ある大手企業の広報担当者と話していて、興味深い事例を耳にしました。

その会社のオウンドメディアに、著名人のインタビュー記事を載せようとしたそうです。その取材原稿のなかで、以下のような一文があったといいます。

彼女は当時の心境を語り始めました。

この文章をチェックした上長から「【彼女】を【◯◯さん】に修正してください」と指示があったそうです。

理由はこうです。

◯◯さんが性自認を「女性」としているならいいけど、その確証がとれないなら「彼女」と決めつけて書くのはまずいでしょ。

なるほど。たしかに一般には女性と認知されている人でも、本人の性自認は女性以外かもしれない。だから、インタビュアーは勝手に女性という前提で「彼女」を使ってはいけない。言われてみれば、そのとおりですね。

ジェンダーに関する表現は非常にセンシティブなので、広報担当者や社内編集者に限らず、注意したいところです。

3. 数値や統計データの取り扱いに注意


3つめは、「数値や統計データの取り扱いに注意する」。

企業コンテンツでは、実績や市場動向を示すために、数値や統計データを使うことがよくあります。ですが、これらの扱いを誤ると誤解を招いたり、場合によっては虚偽広告と見なされたりする可能性があります。

たとえば、次のような表現は要注意です。

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  • 利用者満足度98%

  • 前年比200%増

  • 業界平均の2倍の効率

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これらの表現は、一見インパクトがあり魅力的に見える半面、その数値の根拠や算出方法によっては誤解を招く可能性があります。

代わりに、以下のような表現を検討しましょう。

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  • 2023年実施の顧客アンケートでは、98%のお客様に満足いただいています(n=500)

  • 2022年度比で売上が約2倍に増加しました

  • 当社独自の指標では、業界平均と比較して約2倍の効率性を実現しています

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このように、数値の出典や調査方法、比較対象を明確にすることで、より信頼性の高い表現になります。

また、グラフや図表を使用する際も注意です。

とくに営業やコンサルタントに多く見かけるのですが、「軸の省略」や「誇張した表現」で、実際以上に大きな差があるように見せかけるのはやめましょう。

数値や統計データを使う際は、以下の点に意識を向けてください。

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  1. データの出典を明記する

  2. 調査方法や対象を明確にする

  3. 比較対象を示す

  4. できるだけ最新のデータを使用する

  5. 誇張表現を避け、事実に基づいた記述を心がける

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グラフ作成の基本ルールは以下の記事でも解説しているので、参考にしてください。

まとめ


ぼくは企業コンテンツを制作する際、以下の3つの質問を自身に投げかけるようにしています。

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  1. この表現で、特定の企業や個人を指していると思われないか?

  2. この表現は、誤解を招く可能性はないか?

  3. この表現の根拠を、求められたら示せるか?

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すべて「はい」と答えられるなら、致命的なリスクは避けられるでしょう。

最後に。コンプライアンスはたしかに大切なのですが、それを意識しすぎるあまり、面白みのないコンテンツになってしまっては本末転倒です。リスクを排除しつつも、創造性やキャッチーさを失わない。そんなバランス感覚が、質の高い企業コンテンツには求められると思います(簡単ではありませんが)。

では、また次回の記事でお会いしましょう。

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