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フッ素は毒?

たまに質問をいただく「フッ化物(フッ素)の害」について、正しい情報をまとめておこうと思います。 まともな歯科医療従事者は「フッ素」とは呼ばない。 まず、まっとうな歯科医療従事者であれば「フッ素」という表現はしません。フッ素は原子番号9の元素名で、電気陰性度は全元素中で最も大きく、通常単体で存在することはありません。非常に強い酸化作用があるため、他の元素と結びついた化合物として存在しています。もし、フッ素元素が単体で存在すれば、それは間違いなく猛毒です。なので「フッ素は猛毒

    • 歯並びの良い子の育て方?

      我が子の歯並びはきれいにしてあげたい。 親であればそう考える人も多いと思います。 でもネット上にはいろんな情報があるし、歯科関係者によってもいろんなことを言う人がいるので皆さん混乱してしまいますよね。 本記事では僕がこれまでに学んだ情報を整理します。 なお、ここで書くのは矯正などの治療的な行為ではなく予防的な視点です。 「こうすれば歯並びは良くなる!」という方法はない。結論からいうと「こうすれば子どもの歯並びは良くなる」という単一の方法はありません。 僕も子どもがいるので真

      • 熱中症予防にスポーツドリンクはダメ!?

        このところずいぶん暑い日も増えてきました。 この時期になると「熱中症予防にスポーツドリンクを!」という発信をよく目にします。 本当にスポーツドリンクは熱中症予防に適しているのでしょうか? 先に答えを書いてしまうと、もちろん「NO!」です。 この記事ではその理由を解説します。 熱中症対策は水分や塩分よりも、まずそういう環境にさらさないこと。まず熱中症対策で最も大切なことは、 【暑い場所や大量の汗をかく状況に長時間さらさないこと】 です。 当たり前ですが、水分や塩分への発信が目

        • 本当の国民皆歯科健診。

          政府の骨太の方針に「国民皆歯科健診」が盛り込まれることが話題となっている。 この方針は日本歯科医師連盟が支援する自民党の山田宏参議院議員が中心である議員グループ「国民皆歯科健診実現議連」の働きかけによって動き出したものだ。 「高校まで義務付けている歯科健診を、年一回は全国民が受診すること」を目標としているようである。 国民の健康を守るために役立つとして好意的な受け止め方もある一方、歯科医師過剰問題を解決するための歯科医師側の都合ではないかという疑念も持たれているようである。

        フッ素は毒?

          科学的根拠に基づくミルク育児のポイント

          母乳に関することだけでなく、ミルクに関してもまとめようと思います。 母乳育児を希望されている方はこちらの記事をご覧ください。 上記記事にも書きました通り、ミルクを補足することは母乳育児確立の妨げになってしまうこともあります。最初から狙って混合で育てようとするとオートクリンコントロールのメカニズムから母乳が出なくなったり、乳頭混乱により母乳を飲まなくなったりしてしまい、ほとんどミルク育児になってしまうこともよくありますから、この記事はあくまでもミルク育児を希望されて選択される

          科学的根拠に基づくミルク育児のポイント

          科学的根拠に基づく母乳育児確立のためのステップ

          「母乳は赤ちゃんを産んだら勝手に出てくるもの」と思っていませんか? 多くの場合、母乳はほっといて勝手に出てくるようなものではありません。 ではどうしたら母乳が出てくるようになるのか? そこには科学的根拠に裏付けられた大切なステップがあるのです。 今回は僕の専門から離れてしまいますので、搾乳機メーカーのメデラのサイトを参考に、出産後の時系列順に並べて必要な知識を解説していきます。 (※当院助産師の助言を元に修正しました!R4.3.19) 【第1段階(妊娠中~産後3日頃):エン

          科学的根拠に基づく母乳育児確立のためのステップ

          液体ミルクの誤解

          僕は今年から助産師さんと一緒に歯科医院での母乳外来を始めました。 「母乳育児支援をする」というだけで「ミルクを否定している」と受け取る方もいらっしゃるのですがもちろんそうではありません。 本記事も液体ミルクそのものを否定するものではありません。 実際の現場ではできる限りその方の背景や希望に沿った支援をさせていただいておりますが、noteという記事媒体ではあくまでも一般論となりますのでご理解ください。 まず、この記事の内容をもっとシンプルに学びたい!という方はあんどうりすさ

          液体ミルクの誤解

          「感染の窓」の誤解

          今なおよく語られるいわゆるミュータンス菌の「感染の窓」。 ミュータンス菌は生後およそ19〜31か月に検出されるというCaufieldの有名な論文1)が元になっています。 だいたい1歳半から3歳までに感染するとされますが、その考え方はもうあまりしないほうがいいかもしれません。 「むし歯の原因菌」はいない。まずむし歯の原因菌としてミュータンス菌、S.mutansに固執する考え方はかなり以前から変化してきています。 う蝕に関わる菌は分かっているだけでもとてもたくさんの種類がおり、

          「感染の窓」の誤解

          削らないむし歯。

          「検診ではむし歯と言われたのに、歯医者さんに行ったらむし歯じゃないと言われた」というような話を聞いたことはありませんか? 「前の歯医者さんではむし歯はないと言われたのに、次に行った歯医者さんでは何本もむし歯だと言われた。」というようなこともあるかも。 なぜこのようなことが起きるのでしょう? 一般の方が思い浮かべる「むし歯」と歯科医療従事者が思い浮かべる「むし歯」にはギャップがある。一般的には「むし歯(う蝕)」というと、穴があいていて削って詰めなければいけないものを想像

          削らないむし歯。

          何を使ってどう育てたの?

          歯科からみた赤ちゃん育ての要点シリーズ番外編 『親としての実践』 このシリーズ、どちらかといえばあれはダメ、これもダメ的に受け取られやすい内容も多かったかと思います。 もしかしたらゲンナリしてしまった方もいるかもと思い、色々と知識を得たうえで、歯科医師としてではなく、親としてどんな選択をしたかについて紹介しようと思います。 これはあくまでも我が子の様子を観察して僕が選択したものであって、科学的根拠のないものもあり、すべての子どもに当てはまるものではなく、僕や僕の子どもにうまく

          何を使ってどう育てたの?

          原則不要なもの。

          歯科からみた赤ちゃん育ての要点シリーズ③『原則不要なもの』これまでは「こうしたほうがいいよ」というメッセージになる内容が多かったと思いますが、シリーズラストは、歯科的に赤ちゃんと関わりがあるけれど使わなくていいものについてまとめます。 どちらかといえば使わないほうがよいものが多いです。 ①おしゃぶり歯並びに悪影響があることは広く認識されていると思いますが、実は0歳までは鼻呼吸を促す効果もあり、一概に悪いものとも言えません。 母乳育児への弊害となるのではないかと見られておりW

          原則不要なもの。

          食べる準備としての赤ちゃんの姿勢とハンドリガード。

          歯科からみた赤ちゃん育ての要点シリーズ②『離乳開始前』 さて、シリーズ第二弾は離乳開始前の段階です。 授乳以外におさえておくべきポイントをまとめます。 前回書いたように、上顎の成長発育は生後3ヶ月までに大きく変化します。 そうだとすれば、授乳以外に影響を与えそうなのは抱っこと寝姿勢でしょうか。 これについては残念ながらあまりはっきりとした結論を出せる研究は僕は把握していません。 ただ、色々な見解を学ぶ中で僕自身が現在至っている結論は、 「首は死守」 「同じ姿勢で長時間固定

          食べる準備としての赤ちゃんの姿勢とハンドリガード。

          母乳とミルク。イデオロギー論争から離れて知りたい科学的事実。

          歯科からみた赤ちゃん育ての要点シリーズ①『授乳』 これまで離乳とむし歯予防の観点からはいくらかまとめてみましたが、 今回からは生まれてから3歳くらいまでの歯科的に重要なポイントを解説します。 生まれる前にも考慮すべきことがあるとする意見もありますが、このシリーズでは生まれてすぐから始まることから。 まずは授乳。 「母乳vsミルク」としてイデオロギー論争の的に陥りやすいデリケートなテーマではありますが、本来そのように対立構造にさせるべきものではないということは前提としておい

          母乳とミルク。イデオロギー論争から離れて知りたい科学的事実。

          甘いものはどれくらい気をつけたらいいの?

          珍しく歯医者さんっぽいことも書いてみます(笑) 僕の元々の得意分野はう蝕学(むし歯学)です。 今回はその知識を総動員して、子どもたちの歯を守るために食習慣をどのように気をつけたらいいのかを解説します。 ただここで書けるのはあくまでも一般論ですので、もっとゆるくてもむし歯にならない子もいるし、すべて守っているつもりでもむし歯になってしまう子もいるかもしれません。 むし歯は多因子性疾患(いろんな要素が関って発生する病気)ですので、すべての人々を食習慣でだけで守ろうとするとかなり厳

          甘いものはどれくらい気をつけたらいいの?

          手づかみ食べって必要なの?

          前回までに、BLWやRFの特徴を含めてご紹介いたしました。 BLWとRFの違いは、要するに手づかみで自分で食べるか、スプーンで大人で与えるか、です。 BLWの本質はそこではなく、赤ちゃんが主体的であるかどうかが大事なのであり、RFとの共通点があるのだということをお伝えしましたが、今回はあえて手づかみ食べの重要性についても振り返ってみたいと思います。 手づかみの開始まずは、色々と問題のあるガイドではありますが、厚生労働省の授乳・離乳の支援ガイド1)を見てみます。 手づかみ

          手づかみ食べって必要なの?

          Responsive Feedingの始め方

          前回記事「離乳食を俯瞰して考える(BLW, Responsive Feeding, etc.)」で触れたResponsive Feeding(RF、レスポンシブフィーディング)についてもっと詳しく知りたい!という声にお応えして、私なりに解説をいたします。 前回のおさらい。RFについてはBLW以上に日本での情報が少ないのではないかと思います。 検索しても日本語の情報はほぼ出てこないですね・・・。 前回は、WHO1)やユニセフ2)の解説をご紹介しました。 とはいえユニセフの方は

          Responsive Feedingの始め方