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2022/6/6週|CMOの3つの類型 = Unifiers、Loners、Friends =

2ヶ月くらい前に スタートアップにおけるCMOの役割とはなんだろう という記事を書きました。
自分自身がスタートアップのCMO(Chief Marketing Officer)の役割を言語化している途上で、実務をしながらオリジナルの規定をしていきたい意思があり、とっかかりとして論文など抽象化されたものを参照しました。

その記事の最後に、自分が思うCMOの役割(暫定)として下記を設定していました。

【暫定版】CMOの役割
・「経営戦略とマーケティング活動との整合」に関する決定〜実行(ここには上述の短期と中長期の動きを含む)
・「組織横断連携の促進、調整、介入」(ハブっぽい動き)
・「マーケティング・プロセスの標準化」
・「マーケティング組織再定義・役割の徹底」
・組織運用・採用活動

上記の中でも「組織横断連携の促進、調整、介入」(ハブっぽい動き)に関連したことが記載されているマッキンゼーのレポートを発見し中身を読みましたので、今日はそれについて書きたいと思います。

内容は身に覚えのあることが多かった(耳の痛いこと含め)のに加え、あるべき姿の言語化を先回りでしてくれている感覚がありました。
この辺りスペシャリスト・先人の知恵は偉大で非常に学びがあったので、備忘録がてらまとめていこうと思います。

具体的にはCMOとC-SUITE(「C」から始まる会社の経営を司る役職)の関係性から3つの類型を提示し、マーケティングが事業成長を促進できるかどうかは、この3つのうちのどの類型にいるかによる、というものです。
スキルとか能力ではなく「人と人の関係性」がよりクリティカルに効いてくる、というのが個人的に腹落ちするところでした。

CMOという役割でなくても、事業会社でマーケティングの責任者に近い位置で仕事をされている方・CEOを始めとするCXOの方にぜひ見ていただきたい内容です。

レポートのサマリ

今回自分が読んだレポートはこちらです、2019年に出されたものです。
Marketing’s moment is now: The C-suite partnership to deliver on growth

ポイントを抜粋していきます。

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・あなたの会社のマーケティング担当役員は、Unifier(統合者)、Loner(孤独者)、Friend(友人)のいずれだろうか?  成長ドライバーとしてのマーケティングの役割を確立するためには、CMOとC-SUITEの信頼関係が重要だ。

・近年、大手企業で大きな変化が起きている。これらの企業の経営者は、もはやマーケティングをマーケティング部門に属する機能として捉えていない。マーケティングをマーケティング部門の機能として捉えるのではなく、"Marketing with a Capital M "と呼んでいる。このモデルでは、営業、製品イノベーション、財務、技術、人事など、組織のさまざまな領域がマーケティングの成功に参加し、その使命のパートナーであると見なすのである。

・CMO は、マーケティングの責任者として、このビジョンに向かって組織を動かす重要な役割を担っており、その責任は重大である。我々の分析によると、マーケティング組織が成長を促進できるかどうかは、CMOが組織全体で築くことができるパートナーシップの強さに大きく依存することが明らかになった。私たちは、このような CMO を Unifiers と呼んでいる。

・私たちの分析によると、高成長企業では、C-SUITE全体で強固で協力的なパートナーシップを育むUnifier CMOが、私たちがLonerと呼ぶ孤立型の典型と比較して7倍も多い
ほとんどのマーケターはその中間のタイプで、私たちはFriendと呼んでいる。

・すべてのCMOは3つに分けられ、それぞれが特徴的な習慣や特性を持っている:統合者(Unifiers)、一匹狼(Loners)、友人(Friends)です。しかし、将来の勝利の鍵を握るのは、ただ1つの「統合者(Unifiers)だ。

3つの分類の構成比

統合者(Unifiers):このようなCMOは、部門横断的なコラボレーションを促進する達人である。彼らは、マーケティングがC-suiteの仲間から見て明確に定義された役割を持つようにし、他のC-SUITE幹部の言語と考え方を採用し、マーケティングがC-SUITEのニーズを満たすためにいかに役立つかを明確に説明する。また、他のエグゼクティブと相互の説明責任と共有ビジョンを確立する。同僚から助言を求められる彼らは、重要な決定がなされる際にその席に座り、幅広い損益計算書(P&L)の責任を負い、しばしば会社の戦略の定義に関与する。Unifiersを生み出す組織的・文化的条件はCEOが確立することができる。

一匹狼(Loners):このようなCMOは、優れたマーケターかもしれないが、C-SUITEの仲間から全面的に支持されているわけでも、深い関係があるわけでもない。一匹狼は、広告キャンペーンやソーシャルメディアのような短期的な活動に集中する傾向がある。CEOからは、対等なパートナーとしてではなく、ブランド管理、広告、PRの実行者として見られている。彼らは、戦略を開発するよりも実行する傾向があり、しばしばCEOがマーケティングを理解していない、あるいは信頼していないと報告する。「キャンペーンがうまくいけば、それは販売チームがうまくいったからだ。あるエンターテイメントの元社長は、一匹狼のCMOと仕事をする難しさを要約して、「キャンペーンがうまくいけば、それは営業チームがうまくいったからで、うまくいかなければ、それはマーケティングのせいだ」と話している。

友人(Friends):この最も一般的なタイプのCMOは、UnifierとLonerの中間に位置する。このタイプは、C-SUITE(多くの場合CEO)の1人か2人の味方を持つが、マーケティングのアジェンダを組織全体に完全に浸透させることはできていない。マーケティングチャネルを通じたトップラインの成長を担当する「Friend」CMOは、通常、製品開発や顧客サービスなど、顧客経験全体に対して幅広いP&L責任や大きな影響力を持つことはない。また、C-SUITEの言葉を話すことにも長けておらず、CTO(最高技術責任者)からは、イノベーションを推進し新しい機能を開発するパートナーとしてではなく、テクノロジーの「顧客」として見られる傾向がある。

・統合者(Unifiers)のCMOは、マーケティングが説明責任を果たし、実際に予測可能で重要な価値を促進していることを実証している。優れたマーケティング担当者は、高度なアナリティクスを使用して、マーケティング費用が短期的および長期的価値に与える影響を定量化する。
彼らは、ブランドエクイティ、グロスレーティングポイント(GRP)、エンゲージメントなど、より一般的だがCFOの目には有効でない指標ではなく、意味のある財務的価値(ROI、顧客生涯価値、収益ランレート)を反映する指標を使ってビジネスケースを構築している。

・統合者(Unifiers)のCMOは、CFOとのやりとりに財務用語を使うだけでなく、すべての意思決定に定量的な厳密さと損益の説明責任を組み込んでいる。また、お互いのニーズや重要な取り組み、KPI(重要業績評価指標)について合意し、CMOが定期的に進捗を報告することで、共同でビジョンを持ちます。CMOは定期的に進捗状況を報告し、イノベーションと実験のカルチャーをサポートする。例えば、あるハイテク企業のCMOは、CFOと協力して「ファイティングファンド」を創設し、マーケティングの効率化を図り、節約した資金の一部を再投資基金に回し、マーケティング担当者がROIが明らかなプロジェクトに利用できるようにした。新しい資金が利用可能になったことで、マーケティング担当者は革新的なアプローチを考えるようになった。

・統合者(Unifiers)のCMOは、Lonerの約3倍の確率で、データ分析専門のチームを持ち、マーケティングの意思決定の質とスピードを向上させるのに役立てている。あるD2Cエンターテイメント企業では、CMOはIT部門からのサポートを「懇願」していた。この企業は、数年かけてクラウドプラットフォームに移行し、マーケティングチームと技術チームが並んでポッドに入り、共通の目標を達成するアジャイルモデルを採用してから、状況が変わりました。このようなシフトによって,同社はトップラインの売上を11%増加させることができた。

データアナリティクスリソースの保有率

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所感

「耳が痛ェ..」と感じたことを含め正直に書くと、自分はLoner〜Friendとして振る舞っていた(ている)時間が長いと思います。もちろんビジネス構造等もあるのですが、マーケティングのアジェンダを組織全体に浸透させられていない状況は長かったように思います。

なぜそうなっていたのか?は、ひとえに自分の視座の低さに尽きるのですが笑、再現性ありそうなところは今後CMOを目指す方が気を付けるポイントになりうるので、思うところを書いておきます。

①登場タイミング:
スタートアップにおけるマーケターの登場タイミングはシリーズA後〜Bあたりが一般的じゃないかなと思います。組織の立ち上げ期は相対的には遅く、関連する各部署に責任者がついている状態から始まります。このため業界の土地勘があったり最初から強力な権限がない場合は、マーケティングアジェンダを他部署に浸透させるには時間がかかりやすいです。自分がマーケティング組織の初期メンバーで体制の整備も行いながらだとなおさらですね。

②コロナ禍:
これはイレギュラーかもしれないですが、不況なども同様かなと。一般的にはコストに対して保守的になる時期です。したがってマーケティング投資の意思決定までの足が重くなったり、または平時に比べると施策の効果が出づらく、ROIの説明がつきづらくなる可能性があります。

③理解浸透の継続努力:
経営レイヤーがマーケティングの経歴を持つ人ばかりではない前提で、マーケティングでできることを示すことの発信をやめないことが大事だなと思います。先のレポートの中でも下記のような言及が出てきます。(disってないですよ。笑)

Further complicating matters, just 3 percent of board members have a marketing background.  “Everyone [on the board] has an opinion about marketing, but there is very little expertise,” noted one former apparel CEO.(さらに問題を複雑にしているのは、マーケティングの経歴を持つ取締役はわずか3%しかいないことだ。「(取締役会の)誰もがマーケティングについて意見を持っているが、専門知識はほとんどない」と、ある元アパレルCEOは指摘する。)

①〜③のトリプルパンチが揃うと正直なところ大変ではありますが苦笑、この辺までやっていかないと Unifiers のCMOには到達できず、結果としてLonerやFriendとして振る舞うことに。それでいてマーケティングの仕事をしている気になってしまう可能性があるのが、恐ろしや…なところです、、(LonerやFriendの状態の一番の問題は、最も重要な事業成長に直接的に貢献できていない or 効果が薄い動きをしてしまっている可能性があることだと考えています。スタートアップの希少なリソースの使い方としてそれでいいのか、というとそうではないですよね。)

個人的な話にはなりますが、直近少し Unifiers 要素(具体的にはマーケティングアジェンダの組織浸透や、全社戦略の旗振り、部門横断的なコラボレーションの促進等)が増してきたと感じています。

なぜ転換してきているかは色々な要因によるのですが、自分でコントロールできるところでいうと、誠実に仕事に向き合ってコツコツと小さな成果を積み上げていくに尽きると考えています。

それによりC-SUITEとの信頼が徐々に蓄積され、Unifiers CMOっぽい動きを期待する役割として求められるようになるということもあると思います。
(もちろんLonerやFriendっぽい側面も時に見せながらなので完璧ではないですけども)

したがって、ある程度時間がかかることも見据えながらLoner/Friend から Unifiers へ変容していくことを常に意識しておくべき、と考えています。

今回、CMOを Unifiers / Loners / Friends という3つに分けるフレームワークによって目指すべき姿がまた一つ整理されました。

それでは、今週はこの辺りで。

この記事について

株式会社タイミーで執行役員CMOを務めている中川が、マーケティング関連の仕事をしている中で感じたことを綴り、コツコツと学びを積み重ねる『CMO ESSAY』というマガジンの記事の一つです。お時間あるときにご覧いただければ幸いです。オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしている節があり、、自分も週次更新をしています。

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