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2023/10/23週|CEOとCMOのパートナーシップについて(マッキンゼーの分析より)

「The power of partnership: How the CEO–CMO relationship can drive outsize growth」という直近公開されているマッキンゼーの記事に、事業成長をしている企業におけるCEOとCMOの関係が分析されていたので読みました。


ポイントを抜粋すると下記のようなものです。

・S&P500企業のうち、30年以上連続でGDPを上回る収益成長を報告している企業はわずか10%しかない。成長は偶然に起こるものではなく、成長リーダーは積極的に成長を選択し、同業他社との戦略的距離を意図的に作り出す必要がある。
・高成長企業と低成長企業のC-suiteの内部で何が起きているのかをよりよく理解するために、私たちは調査を実施し、C-level Growthの役割(最高マーケティング責任者、最高成長責任者など)を担う100人以上の人々と、B2BとB2Cのあらゆる規模、複数の業界の21人のCEOと話をした。
・その結果、CEOとCMOの関係、特に、成長戦略を形成するためのマーケティングの役割と権限をどのように共同で定義しているかは、企業の業績と高い相関関係があることがわかった。
マーケティングを優先し成長戦略の中核に据えるB2C企業は、優先していない企業に比べ、5%以上の収益成長を達成する可能性が3倍高い。B2B企業も同様で、マーケティングを優先する企業は、5%以上の収益成長を達成する可能性が2倍以上高い。

・成長を実現するためにCEOとCMOが直面するペインポイントとは、
- 1. CMOの権限が不明確
4Pが分散されている(最高デジタル責任者、最高顧客責任者、最高成長責任者などの追加により)ために、マーケティングの役割・責任が曖昧になったり、ミッションが重複する。

- 2. 成長を促進するマーケティングの過小評価の可能性
現代のマーケティングはますます複雑になっている。消費者はより多くのタッチポイントを持つ。データはあらゆるマーケティング活動の中核にある。マーケティング担当者が利用できる戦略、戦術、ツール、手段の数は飛躍的に増え、マーケティングが達成できる可能性が広がっている。例えば、当社の調査によると、マーテク・ソリューションの数は過去5年間で毎年倍増しており、2023年にはこれまでに11,000を超えるソリューションが登場している。
他方で、公開されているデータに基づくと、フォーチュン250のCEOのうちマーケティング経験があるのはわずか10%で、過去にCMOのような職務に就いたことがあるのはわずか4%だと推定される。
つまり、マーケティング能力の急速な向上にもかかわらず、C-suiteの多くは、マーケティングが成長を生み出す可能性を過小評価しているのである。

- 3. マーケティング測定とビジネスインパクトとの関連性の不整合
現代のマーケティング時代において、CMOは、クリック単価、クリックスルー率、ブランド認知度など、数え切れないほどの主要業績評価指標(KPI)を報告することができる。マーケターは複雑な言葉を話し、CEOやCFOをデータで溺れさせる。しかし、彼らは質問に答える必要がある:なぜこれが良い経営判断なのか?信頼できる測定がなければ、CEOはマーケティングが成長に与える影響を追跡することも、CMOに責任を負わせることもできない。

優れた業績を上げ、未開拓の成長を刺激するためには、CEOはマーケティング機能の役割を明確にし、最新のマーケティングに対する確信を深め、全体的な成長にとって何が重要かを測定するためにC-suite全員の足並みをそろえることによって説明責任を強化しなければならない。

CMOの役割の青写真を描く
CEOは、全員がプレーする "砂場 "を明確に定義する必要がある。明確な役割と責任がなければ、誰かが依頼にイエスと答えても、他の誰かが自分の責任だと思ってノーと言うこともあり得る。成長に対するオーナーシップをCレベルの役割に統合するということは、CEOが毎朝目覚めると成長に夢中になっている頼れるリーダーを持つということである。

CEOとCMOは共同で現代のマーケティングにおける信念を構築しなければならない
CEOはCMOとの時間を優先し、CMOがどのように会社の成長目標に貢献できるかを理解し、プレッシャーをかけ、後押しし、顧客の行動をチャンスとリスクの両方に変換すべきである。CEOには、CMOという信頼できる味方がおり、専門家の先生でもある。マーケティング機能が企業価値にどのように貢献しているかを明確に理解していない場合は、CMOと協力してその確信を深めることができる。

全体的な成長にとって何が重要かを測定する
CEOは、マーケティング戦略についてCMOと協力するためのフレームワークが必要だ。CEOはまず、マーケティングに求めるのは活動ではなく成果である、と自問すべきである。そして、その成果を達成するための最良の手段は何か?なぜそれを信じるのか?その見返りは何か?ビジネスにとって生産的な方法でマーケティングを評価し、マーケティングが価値を生み出せるという考えを受け入れること。

・マーケティングを成長戦略の中核に据える企業の業績が向上することは、私たちの調査でも明らかです。CEOはもはや、成長パートナーとしてのマーケティングを過小評価する余裕はない:

①マーケティングを中心としたCレベルの役割を明確に定義する。
②CMOと連携し、事業の成長戦略について話し合い、その中でのマーケティングの役割について確信を深める。
③CMOとともに、ビジネス成果のマーケティングKPIへの明確な連鎖を定義し、戦略がボトムラインに直接影響を与えるようにする。

The power of partnership: How the CEO–CMO relationship can drive outsize growth より


思うことのメモ

まず、世界のいろいろな会社のマーケティングについて俯瞰・抽象化した記事は中々お目にかかれないので興味深いですね。
その上で現在CMOという役割を務めさせてもらっている身として感じたことを書いてみます。

責任の明確化は必須かつ最重要

これはマーケティングの領域に関わらない話ではあると思うのですが、「領域を分けること」と、「分けることで生まれる責任の曖昧さ」は難しいトレードオフと感じる部分です。担えるケイパビリティ・範囲にも依存するので分けざるを得ない場面もあると思うのですが、個人的な優先順位は明確で、「責任が先で、領域が後」かなと考えています。
つまり、誰がその指標の説明責任を持つのかは明確にした上で、実務上とある領域が担いきれないのであれば、担える人をその人と一緒に動いてもらうのが良かろうということです。(最終的な説明責任は1人に集約)

ビジネスインパクトへ目が向くかという点がマーケターとしての信頼度の一大要素

上の記事で、「マーケティング測定とビジネスインパクトとの関連性の不整合」というところは非常に共感した部分です。
マーケティングに関わる方の中には記事に出てくるような例だと「クリック単価、クリックスルー率、ブランド認知度」の良い悪いで足を止めてしまう方もいるように見受けられます。
経営層としては、それだけだと「なぜこれが良い経営判断なのか?(マーケティングの指標が良かったからと言って事業インパクトとしても良いと言えるのか?)」が分からないわけで、そこの説明や翻訳はマーケティング職(特に責任者)の責務の範疇としてやるべきかなと考えています。上記のような指標は事業全体で見たらあくまでKPIであって、それをKPIと設定している理由は当たり前ですが説明する必要があります。

"深み" を理解してもらう努力が必要

上の記事で言うところの「マーケティングの過小評価」に関連する部分です。
これもマーケティングの担当者の努力範囲かなと思うのですが、それぞれの領域で専門家が立つほど難解かつ深みがあるにもかかわらず、経営者の視点やマーケティングの担当以外から見ると、単純化されるきらいがある領域なのかなと思います。(例えば発話としては「デジタルマーケティングでxxxしよう」といったものですね)
"深み" やビジネスインパクトにもたらすマーケティングの可能性について、一定理解・コンセンサスをとっていくこともマーケティングの担当として重要なことかなと思わされました。

こうした記事と照らしてみると、自分の取り組みとして足りない部分が見えてきましたので行動を少し変えていきたいと思います…!

📓この記事について

株式会社タイミーで執行役員CMOを務めている中川が、マーケティング関連の仕事をしている中で感じたことを綴り、コツコツと学びを積み重ねる『CMO ESSAY』というマガジンの記事の一つです。お時間あるときにご覧いただければ幸いです。オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしている節があり、自分も週次更新をしています。
タイミーは、すぐに働けてすぐにお金がもらえるスキマバイトアプリです。

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