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自己表現、という呪い、あるいは

noteに自分のことを書くのが、ひどく、こわくなってしまった。本業でもライフワークでも、文章はいつ何時でも書いているのに、自分のこととなると、急に、筆が、重くなる。人生ぶんの重みみたいでいやだ、し、こんなふうに比喩すること自体、素直に自らを綴ることをごまかしているようで、いやだ、とても、ごめんね。

そもそも私は、私自身のことを世の中に話すのが苦手だし、そういう生き方はできないのだろう、と思う。だから、小説を書くしかなかったわけで、蓄積された感情は、痛々しい詩になっていくわけで。

でも、小説も詩も、自己表現になっては、いけない、と、一瞬、どこかで聞いてしまって、それから、うまく、息ができなくなってしまった。夕方が、灰色になってしまった。

そう、私は、自意識を、世に出すことが、こわくて、そう、日記がこわいのも、自意識まみれになってしまうからだった。だから、小説を、詩を、綴ってきた。けれど、そういう文章に、自分の影が強く出すぎていなかったか。それは、いけないことなのか。そんなのは、作品として、失格なのか。

あと、自己表現って、なんだろう。

思えばずっと、自己表現、ということばに苦しめられている。私は仕事においては、100%、相手のために、書いていたいと思う。あるいは、相手の、先にいる相手に向けて。そこに、自己表現の要素を入れてしまうと、エゴがノイズになって、相手のため、に、不純物が混ざってしまう気がして、こわくて。相手のため、と、まっすぐ心血を注ぐ時間は、とても好きで。だからそれはそれで、大切にしたくて。

でも、私はどうあがいても私であって、誰かのためといいながら、生きなければならないのは、自分の人生であって。だから、創作においては、「自分を救うため」、に書いている。現在過去未来、別の世界線。すべての自分を救うために、書いていたいと思っている。誰かのため、とか、おこがましいし、あなたを救えるのはあなただけで、私を救えるのは私だけだと気づいてしまったし、でも、だから、ただ、救いたいと思った。あのとき救われなかった私を、ちゃんと救ってあげたかった。

私にとってそれは、いのちをかける価値があることで、いや、価値とかうるさいな、いのちをかけざるを得ないことだった。

でもそれも、いけないことなのだろうか。いけないって、なんだろう。

私のなかにはずっと、「表現を抑圧される」不安があるんだろうな。この不安ほど、おそろしいものはない。あんなでかい絶望は知らない。でも、私はよわい、すぐ、タイムラインに流れてきた誰かのことばや、情報によって、表現を抑圧されてしまう。ぜんぶ、まちがっている気がしてしまう。否定されている気がしてしまう。自意識過剰なんだね、くるしいね、どうしようもないね、ほんとうに絶望すると人は冷静になるって、社会人になって最大の学びだった。

いちばんの問題はね、私が、私の価値観を、簡単に不信になってしまうほど、よわい、ということだね。世界に対して、怯えとか、引け目とかを、感じているということ。普通になりたい普通になりたいと、必死に必死に生きてきて、でも、やっぱりときどき、この世界に居場所はない、と、確信じみた感覚を抱いてしまう。くるしいくるしいくるしいと、言えるわけがなくて、ことばにならなくて、そう、こういうとき、どう表現していいかわからない。というか、表現することを、ゆるされない気がしてしまう。

なにを、言っているんだろう、これは、詩でも、小説でも、なんでもなくて、ほら、今自分がいちばんこわがっている、「自己表現」ってやつを、やっちゃってるんじゃないの。しかも、暗いやつだよ、誰も喜ばない、いまどき流行らないやつだよ。どうしよう。

今日は、今日のところは、です。人生はもうそれ自体がひとつの自己表現じゃないかって、思うんです。そのやり方がみんな違うってだけで。私は、ずっと、自己表現が苦手で、こわくて、でも、感情に嘘をつき続けるのは心が持たないってこともわかってて。頑張って表現してはやっぱりずたぼろになって、そんなことばっかりやっているけれど、ね、ほんとうは、自分の感じたことを否定しないで、抱きしめて大切にして生きたいんです。そうやってにじみ出たインクを使って、小説を、詩を、書きたいんです。それが私の人生だって、思いたい、愛したい。私は私のやりかたで、ことばを、感情を、人生を、大切にしていたい。それを、自分自身で、ゆるしてあげたい。と、思うんです、思いたいんです。

それだけ、表現して、今日は、はやめに寝ましょうね。誰に評価されなくても、誰かに否定されたとしても、そう、自分だけは、自分と一緒にいたい。ああ、そうだ、本、たくさんつくってしまったんだ、まだ、段ボールのなかで、眠っている。はやく、誰かの本棚にいけるといいね。大丈夫、どこにもいけなくても、私がそばにいる。おやすみなさい。こんな戯言を聞いてくれたどこかの匿名さんに、美しい夜があることを、願って。




眠れない夜のための詩を、そっとつくります。