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東京でOLをしながら小説を書いていた頃

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だいすきでだいきらいだった東京。
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2021年12月の記事一覧

「よいお年を」

「よいお年を」

よいお年を、という言葉が好きだ。
一年のかなしみもくるしみも未解決の問題も、すべてゆるされる気がするから。

会社で交わされる「よいお年を」は、程よくお互い無関心で、程よく労りあっていて、程よくあたたかくて、さみしかった。

外に出るとあちこちでひとが酒を飲み吐き散らかし、乾いた吐瀉物を鳩が啄んでいた。

一年分の記憶をキャリーケースに押し込めて帰省した。新幹線から見える景色が白くなっていく、脳裏

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十字架を抱えその先へ

十字架を抱えその先へ

大人になっても文章を書き続けていたら、言葉に言葉をもらうことが増えた。
色んなひとが、色んなところから言葉をくれた。

離れたところに住んでいる親友。別の国に住んでいる友達。あまり話したことのなかった友達。別の領域で表現活動をしている、かつてのクラスメート。

本好きな小学生だった私、すべてに怯えた中学生だった私、表現活動を始めたばかりの高校生だった私、物憂げな文系学生だった私、人生の過程で出会っ

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人間失格論_再考_2021冬

『貴女は、人間失格ってどんな状態のことだと思いますか?』

昨年、太宰治について卒論を書いていた私に、教授が投げかけた問い。私の中に固定された答えはなく、流動的に変化する。卒論で答えを出せなかった問いは、人生を通じての問いになる。

今の私の答えは、「世の中、及び人間全体に対する病的な不信状態」。
そして同時に、人間失格=神様になることだと思っている。

人を信じられない状態は地獄だ。たったひとつ

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