ニュージーランドの「頑張らない」暮らしに学ぶ
私は2024年4月から10月の7か月間、ニュージーランドでWWOOF*をしながら旅をしていた。
(*WWOOF―World Wide Opportunity on Organic Farms の略。畑仕事などのお手伝いをする代わりに食事と泊まる場所を提供してもらえるシステム。)
全部で10軒以上のお家で畑仕事や動物のお世話などを手伝い、ホストファミリーとの暮らしを楽しんだ。
私が出会った全てのホストファミリーに共通していたこと。
それは、「頑張らない」こと。
とはいっても目標に向かって努力をしない、
怠惰に過ごすという意味ではない。
自分にとって大切なことが分かっていて、
他人や社会が作った「こうあるべきだ、こうしないと」という理想像や基準に合わせようと必死になることがない、ということだ。
それだからか、いつもリラックスしていて
心にゆとりのある人が多かった。
彼らとの暮らしは、私にとって今まで当たり前だと思っていたひとつひとつのことと向き合うきっかけになった。
そして自分にとって本当に大切なことや、自分が本当にすべきことや手放すべきものを考えなおすことができた。
ここからは私が暮らしの中で手放したこと、
手放したことで起きた変化をシェアしたい。
手放す前に自分にとって大事なことを整理する
行動の取捨選択をしていくということは、
自分の中に基準を設けるということ。
私が生きていくうえで大切なこと・大事にしたいことはこの3つ。
① 心と心で繋がった人間関係
② ワクワクすることに挑戦し続けること
③ 心と体と地球が健康であること
自分の人生において喜びが大きい順に①②③で、
喜びの土台となっていく順に③②①だ。
① は休学期間中にたくさんの人と出会うことで生まれた価値観だ。
学歴や年齢、立場、国籍などを越えて、一人の人間として出会い、心で繋がる人間関係のすばらしさを実感できたからこそ、これからも恋人や友達など、心から大切に思う人との時間を大事にしたいし、新たに築く人間関係でも心で繋がることを大事にしたいと思う。
② は私が大学生活で一貫して大切にしてきたことだ。頭で考えた損得勘定ではなく、自分の心がワクワクすることにアンテナを張り、したいと思ったことは失敗を恐れずに挑戦する。
そうすることで新たなスキルが身についたり、幅広い年代の人と関わることができたりして、学びや成長にもつながった。
これからの人生でも、常に自分の心の動くことに恐れず挑戦していきたい。
③ は①と②を実現させる土台として大切にしたいことだ。
自分の心と体が健康でなければワクワクを感じることや、人を思いやる心の余裕は生まれないからだ。このことは休学中のリゾートバイトでの心身をすり減らす働き方で身をもって実感した。
そしてニュージーランドでのWWOOFを通して地球環境に優しい暮らし方を学んで、自分も地球に負荷をかけない暮らしを大切にしたいと思うようになった。
この①〜③を物事の判断基準(=軸)として、
自分に必要なこととそうでないことを見極めていった。
私が手放したこと・もの
さてここからが本題。
手放したことを太字にして書いているので、気になるところだけでもその下の理由についても一緒に読んでみてほしい。
・人の目をいちいち気にすること
私は人の目や人からの評価をものすごく気にするタイプだった。実際、今までかなり他人軸で生きてきた部分が大きい。
でも、ニュージーランド旅を通して自分の本音と向き合い、自分は自分のまま生きていいんだと自分を認めて愛することができた。
自分を自分で愛することができたら、人の目が前ほど気にならなくなった。人から認めてもらえなくても、自分で自分を愛せたら怖くない。
・「みんなに愛される人」という理想の人物像
前はみんなに愛される人になりたくて、誰にでも愛想を振りまいていい顔をしようとするところがあった。
ニュージーランドで出会った素敵な人たちは自分の心に素直で、好きなことは好き、間違ってると思うことはハッキリ言う人が多かった。
みんなに愛されるために自分の感情に蓋をして当たり障りのないことを言い続けるのか、多少嫌われたっていいから自分に正直に感情や価値観を伝えられる人になるのか。
私は後者になりたいと思ったから、もうみんなに愛されるために頑張る必要はない。
・他者の期待に応えなきゃという思い込み
「ちゃんとしないと」と以前の私はしょっちゅう思っていた。人にがっかりされたくないとか、人の期待に応えることで自分の存在価値が生まれるという思い込みがあったからだ。
ニュージーランドでのマイペースでリラックスして好きなようにやったらいいよという雰囲気の中で暮らしてみて、人は人の見たいように見るのだから、私が人に合わせようとしたところで無駄だと気付くことができた。
無能な自分はダメだという思い込みも大きかったが、そんな自分も受け入れながら進んでいけばいい。誠実に自分が今できるベストを尽くす、これでいいんだと思えた。
・毎日メイク
ニュージーランドでは大自然の中で畑仕事をする日が多かったので、化粧という化粧はほとんどしなった。すると朝は化粧の時間も気にしなくていいし、肌の調子も良くなってハッピーだった。
もともと薄化粧派で、そんな自分はズボラなだけで、本当はもっと綺麗にメイクするべきなんだと思っていた。
だけど、化粧はそれなりに時間がかかるし、肌にも負荷がかかっているのだからそんなに好きでもないなら毎日のように頑張って化粧する必要もないかもと思うようになった。もちろん時と場所は選んで。
それに美容に無関心なわけではない。むしろ好き。でもメイクよりはスキンケアとか、素肌をきれいに保つことのほうが興味あるし、お手入れも好きだなと気づいたのでそっちのほうに力を入れたいなとも思った。
頑張ってメイクしなきゃいけない!という思い込みがなくなって気が楽になった。
・毎日シャンプー
化粧に次いで、毎日しなくていいなと思ったのはシャンプー。無理!!という人もいるだろうけど。
ニュージーランドはシャンプーが少し高くて、日本から持ってきたものがなくなったタイミングでシャンプーなしにトライしてみたのだ。
すると意外と平気。むしろ髪もきしまないし、油分も程よく残ってるからヘアオイルもいらないし、良いことだらけだった。
今までも聞いたことがあったけど、やはり髪の毛や頭皮のほとんどの汚れはお湯だけで十分落とせていて、シャンプーを使うことで洗いすぎになってしまっているのかもしれない。
ケミカルな石鹸も使わないでいいから環境にも優しい。ちょっとお高い環境にやさしいシャンプーを買うのもいいけど、そもそもシャンプー自体いらないかも。
日本に帰ってきた今も、シャンプーを使って髪を洗うのは週1くらいにしている。シャワーの時間も短くなって嬉しい!
・毎日ブラ
もちろん時と場所は選ぶ!けど!!!
言いにくいからこそ声を大にして言いたい!!!
ノーブラ最高!!!
ニュージーランドで洗濯物を増やしたくなくて
厚着の時にノーブラで過ごしたのを機にすっかりはまってしまった。
締め付けがないってものすごい楽。本来身体ってここまで解放感あるのか!と感動してしまうほどだった。
ノーブラだと胸が流れちゃうとかブラで形をキープしたほうがいいとか、ブラのメリットもいろいろあるけど、そんなに毎日頑張んなくてもいいんじゃない?と思うようになった。
実際ニュージーランドではノーブラの人もちらほら町で見かけた。
胸がすけて見えちゃうのは嫌だから、服の質感とか、あとは時と場合も選んで、今日はブラなしにしよーという日も週に1,2回は作りたい。
本当におすすめなのでぜひ女性には1日だけでも試してもらいたい。
・お菓子とコーヒー
今まではこれがないと生きていけなかった。
お菓子もコーヒーも私の精神安定剤だと思うくらい、かなり中毒だった。体に良くはないと分かっていながら、なかなかやめられなかった。
でも、WWOOFでは甘いものを一切食べない家やコーヒーを飲まないお家もあり、数週間の滞在期間だしこれを機に、とチャレンジしてみたら最初はつらくても2週間も経つうちにすっかり体が慣れて、今ではお菓子もコーヒーも全くなくて良いと思うまでになった。
コーヒーで神経過敏になることがなくなって前よりメンタルが安定するようになった気がするし、お茶代も浮いてその分他の好きなことにお金も使えるし、良いことばかり!
あれだけないと生きていけないと思っていたものを手放せるようになった。
・毎シーズン服を買うこと
もともと服の数は少ないほうだけど、それでも靴や小物も合わせたら1シーズンに1着以上は何かしら新調していたと思う。
今回のニュージーランド旅で荷物をできるだけシンプルにすること、特に洋服は厳選することの重要性を学んだことで、洋服を新たに買う頻度について考え直すことができた。
服だけに限った話ではないが、物を買うということはその物にお金を払うというコスト以外にも、収納場所やお手入れ、処分方法などの空間的、時間的なコストもかかってくることを忘れてはいけないと思うようになった。
振り返ると、何かイベントがあるからとか自分へのご褒美にとかその時の感情で服や物を買うことも多かったなと思う。
感情に流されず、今あるもので「足るを知る」ことを大事にしていきたい。
そしてあるもので工夫することを楽しめるようになった方が幸福度も高いし、さまざまな「コスト」からも解放されると気付くことができた。
今は、必要のない服やものに無駄なお金や時間を費やさないため、そして自分にとって大事なものを明確にするために、さまざまなミニマリスト系のユーチューバーや本を通してミニマリストの考え方や物の取捨選択の方法を学んで実践している。
・予定を詰め込む/休日は毎回お出かけ
朝は学校で授業を受け、お昼は友達とランチ、昼過ぎから夜まではバイトといった具合に、私は予定を1日に何個も詰め込みがちだった。
時間は限られているのだから少しでも有効に使いたいという思いと、たくさんのことをしている方が充実していると思っていたからだ。
休みの日も1日中家にいるのは風邪を引いた日くらいで、とにかく出かけないと落ち着かない。
せっかくの休みがもったいないと思っていた。
ニュージーランドではそんな生活から一転。
午前中に外で畑仕事をしたら、お昼ご飯をホストとお話しながらゆっくり味わい、散歩に出かけたり本を読んだり外でヨガをしたり、その日の気分で夕方までのんびりする。
早めの夜ごはんを食べたらあたたかいお茶を飲みながらまたホストとお話したり映画を観たりする。夜は10時半には寝て、朝は鳥の鳴き声で6時頃に目覚める、、、といった具合に時間の流れがとにかくスロウだった。
そんなゆっくりした生活が充実していなかったかというと全くそんなことはない。
むしろ、することが少ない分その一つ一つを味わい楽しむ余裕が生まれた。
時間に追われる感覚もなく心も穏やかになったし、前より疲れにくくなった。
何かをたくさんすることだけが充実につながるのではない。余白を持つことで生まれる充実感もあるのだと学んだ。
手放したことで起こる変化
このようにニュージーランドでの暮らしを通して思考、物、時間の使い方など様々な観点から学びを得ることができた。
そして、自分にとって大切なことを明確にしたうえで自分にとって必要ではないことを手放すことができた。
そのことで生じた変化を一言で言うなら、
「楽になった」。
前よりも他人や社会などが押し付けてくる「こうあるべきだ」という基準や理想像、「当たり前」だと自分で思い込んでいたことから自由になれた気がする。
自分の在り方や行動は、人からどう思われるかとか今までこうしてきてからではなくて、
自分がこうありたいとかこうしたいという気持ちから自由に描いて決めていけることを知った。
最近は、暮らしの中で「頑張る」ことが本当に少なくなったように思う。
今まで「頑張る」ことに使ってきた分のエネルギーを今は自分の大事にしたいこと(=大好きな人と過ごす時間、興味のあることに没頭する時間、心と体を休める時間など)に使うことができていて、前よりもっと幸福度や充実感が上がっているなと感じている。
私はニュージーランドに留学しに行ったのではない。働きに行ったのでもない。
ただただ大自然の中で少しお手伝いをしながら、暮らす。私が経験したことは、言ってしまえばそれだけのことだ。
だけどだからこそ、幅広い年代の様々なバックグラウンドを持つ人たちと交流ができたし、
彼らの生き方や暮らし方から、これから自分の人生に幸せを感じながら生きていくためのヒントをたくさんたくさん学ぶことができた。
ニュージーランドで出会った大好きな人たち、そして彼らと暮らした日々が私のこれからの人生の土台となっていくように感じる。
あなたはどうですか?
毎日頑張りすぎていませんか?
誰かのためじゃなく、
自分を「自分」として生きていくために、
積極的に「頑張らない」という選択も意外と悪くないかもしれませんよ。