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[本・レビュー] なぜ歴史を学ぶのか

歴史とは「当たり前」のものではなく、「覚えておしまい」では決してない。
「歴史的事実」は本当に「事実」なのか?、その「事実」への解釈は果てして適切なのか?
政治的洗脳の恐怖に気付き、歴史を学ぶ重要性を認識できる優れた歴史入門書


なぜ歴史を学ぶのか リン・ハント著 長谷川貴彦 訳

読書案内を除くと、本書は107ページしかありません。

私個人としては本書を読んで

〇教科書や博物館、記念碑などを通して語られる「歴史」は、誰かしらのフィルターを通されており、『そこに記載された「歴史的事実」は果たして正しいのか』、『事実は正しいとしてもその解釈は適切なのか』は常に疑ってかかる必要がある。

〇性的、人種的、地域的、民族的な差別はいつの時代にも存在している。欧米では女性の社会進出が進んでいるとされるが、それでも格差や差別はいまだに根強く残っている。

〇「社会科」や「歴史」の授業は当たり前のものだと考えていたが、歴史が学問として学ばれるようになったのは最近のことである。近年は各歴史的専門家の方々が対象とする分野が専門化されすぎ、包括的な態度・認識をとれる歴史家の方々はそれほど多くない。

など、様々なことを考えさせられました。

これまで私は社会・理科が大嫌いでした。
何のために役立つかが認識できず、興味もないので、記憶に残すことができませんでした。

ここ二年ほど、様々な本を読むようになり、「歴史」の重要性を認識するようになりました。たとえば「国民性」の形成において、アメリカの独立戦争・フランス革命が重要な役割を果たし、その過程には資本主義・印刷技術の普及等が不可欠であったと認識するようになりました。

これまで「歴史」をまともに学んでこなかった私が、色々本を読む中で歴史を学ぶ重要性を認識し、しっかりと学ぶ前に入門書を読んでみようと思って手にしたのが本書です。

さて、今の私にとって「本書は素晴らしい良書」だと断言できますが、二年前の私が本書を読む(自発的に読んだとは思えないので、なにかのきっかけがあって読まなければならなくなる)ことがあっても「何も響かなかった」のではないかと思います。そもそも読み終えられなかった気がします。

私のように40を過ぎて、歴史を1から学んでみようと考える人はそれほど多くはないでしょう。そうであれば、歴史を学ぶ子ども達を指導する方全てに本書を読んでいただきたいと考えます。

私達は普段「見たいものだけを見、見たくない物あるいは興味のない物は無意識に心のフィルターでふるいにかけている」のではないでしょうか。
しかも全ての事実がそのまま示されているならともかく、教科書や博物館、記念碑は誰かしらによって「見て欲しいものを、見て欲しい形で表現されている」可能性が非常に高いことが本書を読むと認識されます。
つまり「歴史」を学ぶ際には、誰かしらのフィルター、私達自身のフィルター、というように何枚ものフィルターを通してようやく私達の脳に情報が伝えられることになります。

感染拡大が進む中、首相からのメッセージは何もない
感染拡大が十分予測される中、無謀としかいいようがないGo toキャンペーンの開始
需要があるとは思えない布マスクの配布と、それに対する説明の欠如

現政権はありえないと思っていましたが、本書を読んで思い至ったことがあります。

それは「インターネットが普及した現代社会は、日本政府にとって未経験」という点です。
かつて識字率が低く、書物を読む人も限られ、ましてや文字を書く人はさらに少なく、情報を提供するメディアも限られていれば、政府の情報コントロールは今より容易でした。
インターネットが普及する前には、一人一人がおかしいと思っていても日本中の多くの人が同じくおかしいと思っているのかどうかなど知る由もありませんでした。
ニュースで「総理の支持率70%」「国民の大半は理解」とでも報道をしておけば「そんなものかな」で過ごされていたでしょう。

 しかし今やネットをつなげば「おかしい、おかしいのオンパレード」、必要があればデータそのものにアクセスも可能です。日本のメディアが「大丈夫」と報道しても、国外でどのように評価されているかがすぐにわかってしまいます。
 「アジアとのデータの比較では分が悪いから、欧米と比較しておけばよかった時代」から、「欧米との比較しかしていないと、部の悪いアジアのデータを誰かしらが引っ張ってくる時代」へと変化したのです。
 現政権は「これまで通りの政治家のふるまい方」をもって、インターネットが普及した高度情報社会に対応し、その無能さを露呈することになった最初の世代といってよいのではないでしょうか。

 専門性が進む中、専門外のことには口出ししにくいのは歴史家に限ったことではありません。感染の専門家は「お前たちに経済の重要性が分かるか」と言われれば閉口せざるをえず、経済の専門家は「お前たちに感染の恐ろしさが分かるか」と言われると閉口せざるをえません。
 最終的には行政が判断すべきですが、行政は経済も感染も理解できず、ただ自分達の都合のいい政策を押し通すのみです。
 今回は「自粛」によって仕事をしたくてもできない有識者がネット前に出揃いました。いつもは忙しくて政治などにかまっていられない有識者が活動したくても活動を許されないまま、スマホやパソコンの前に留まることを半ば強制されたのです。インターネットを駆使できる「経済的知識をもった方々」「医療の知識をもった方々」「政治的知識をもった方々」「社会科学的知識をもった方々」「いくつかの分野にわたり包括的な知識をもった方々」などなど、普段は忙しすぎて政治になどかまってられない人々が、不満をもったままステイホームを余儀なくされたわけです。

 これまでになく政府はやりにくい反面、私達国民一人一人がここまで啓蒙され、各種の情報にアクセスしやすい時代というのも人類史上類をみないのではないでしょうか。

今後、日本の歴史、世界の歴史をしっかり学ぶ予定です。
経済的な理由から、ちょっとずつになりますが、
講談社 まんが日本の歴史
KADOKAWA まんが世界の歴史
山川出版社 詳説日本史研究、世界史研究
などを購入しようと思っています。

歴史入門書、解説書も購入予定です。

まずは本書が
E・H・カーの「歴史とは何か」の21世紀版である
と紹介されているので、
E・H・カーの「歴史とは何か」を購入してみたいと思います。

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