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【小説】『さみしがりやの星たちに』

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中学生の女の子、深月と沙耶は、学校に忍び込んで天体観測をする計画を秘密裏に進めるが……。
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【小説】『さみしがりやの星たちに』第1話

【小説】『さみしがりやの星たちに』第1話

 あたしは昔から星を見るのが大好きだ。星なら何だっていい。夜空に瞬(またた)くカスみたいな小さな星でもいいし、夜の番人みたいに堂々とした顔で現れる月でもいいし、今真上に輝いて、あたしを照らしまくっている巨大な太陽でもいい。だから、あたしは眼鏡をかけている。小さい頃から太陽の見すぎなのだ。でも高校生になったらコンタクトレンズにして高校デビューする予定だ。
 そんなことを中二の新しいクラスになって、一

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【小説】『さみしがりやの星たちに』第2話

【小説】『さみしがりやの星たちに』第2話

「星って、どんなふうに見えるの?」
 これは沙耶があたしに初めて話しかけてくれた言葉だ。まだ他の人が自己紹介をしているなか、隣にいた沙耶はひそひそと聞いてきた。あたしは話しかけてくれたことに嬉しくてどぎまぎしながら、沙耶のまねをして声を小さくした。
「あたしは、踊ってるように見えたこと、あるよ」
 こんなこと言ったら、変に思われるよ。
 言ったあとで、瞬時にそう思った。それか、自慢してるって思われ

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【小説】『さみしがりやの星たちに』第3話

【小説】『さみしがりやの星たちに』第3話

 終業式がある日までは、あたしも沙耶もぼうっとする時間が取れないほど忙しく動き回っていた。当日、鍵を開けておくのはどの窓がいいか、望遠鏡はどうやって持っていくか、どうせなら、何か飲み物やお菓子も持っていった方がいいか、などなど。天体観測のときをイメージして、思いつく限りのことを準備していった。テストも終わっていたし、夏休みに向けての数日間がこんなに楽しいなんて、去年じゃありえなかった。去年はひたす

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【小説】『さみしがりやの星たちに』第4話(完結)

【小説】『さみしがりやの星たちに』第4話(完結)

 暗い夜の通学路をせっせと進む。今は夜の八時ちょっと前。学校の裏門には八時に集合と沙耶と約束をしていた。沙耶も来なくなったのだから、本当は時間通り行く必要なんてどこにもないのだけれど、何となく予定通りに進んでいる。
 星が、見えるなあ……。
 電灯がぽつんと立っている場所から少し離れたタイミングで空を見上げて歩く。空はめったにないほど綺麗な一面の星空だった。いっそ、雨でも降ってしまえばよかったのに

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