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そして、ASKAのような音楽を作ることはできるのか? 《プロのオフトーク #6》

音楽とはなんなのか。
なぜ、自分たちはCHAGE and ASKAの音楽に惹かれ続けてきたのだろうか?

そんな大きくて狭い(!)話題を、音楽ど素人の私と、プロミュージシャンとして活躍する野井洋児さんとで語り合う、《プロのオフトーク》シリーズ6回目。ついに最終回を迎えました!

前回までの記事はこちらから。
#1 プロと話すと、本当に目から鱗が落ちるのだ。
#2 音楽家は、チャゲアスのここがスゴいと感じてしまう。
#3 音楽家は思う、ASKAのメロディはこうやってできている。
#4 幸せと不安の間 ~ASKAの魔法のコード進行~
#5 エッシャー? ルビン? 感覚を弄ぶ、ASKAの転調。

今回のテーマは「そして、ASKAのような音楽を作ることはできるのか」。
対談の全編を貫くテーマについて、プロの素直な実感を大いに語って頂きます。

●本当のすごさは「セオリーにこだわらない選択」である

s.e.i.k.o:
さて、前回の記事で語りきれなかったお話、「なぜASKAさんの楽曲の特徴がわかっていながら、自分で作ることは難しいのか?」についてですが…これについて、今回はじっくり伺っていきたいと思います!
「ASKAの作曲モノマネはできるのか?」という裏テーマで進めてきたこの連載ですが、ついにやってきましたね…興奮しております。

野井:
はい、どうぞよろしくお願いします! 実は前回の記事が、自分の中では一番の山場だったので、今回は少しだけリラックスしております(笑)。

s.e.i.k.o:
はい、大仕事の後ですからぜひリラックス・スタイルでいきましょう(笑)。
おさらいとしてですが、もう一度、これまで野井さんが挙げて下さったポイントを並べてみますね。
初回にCHAGE and ASKA、そしてASKAというアーティストの個性を語って下さり、そこからメロディやコード進行に見られる特徴、独創的な転調まで、本当に様々な、野井さんの視点によるポイントをまとめて下さいました。

<音楽家の考える、ASKAの楽曲の特徴>
・ペンタトニックを基本に4・7度を巧みに入れる、美しいメロディ
・サブドミナントマイナーとそれに近いコードの持つ、ラ♭の響き
・分数コードとファ♯の響き
・ドミナントにGmを用いる手法
・二つのスケールに共通のメロディ・コードを使った転調

野井:
そうですね! まだまだ数え切れない位たくさんあると思うのですが、一昨年からブログで少しずつ分析していって、今に至るまでに僕の中で気付いたことで、特に大きいのが上記のようなところです。

s.e.i.k.o:
ここまで具体的な特徴について、音楽のプロの方が語っている記事は他で読んだことがないというか(笑)。
こんなにも貴重なお話が伺えたのは、日頃から多様なジャンルの楽曲をゼロから創作されている、野井さんだからこそですね。
知識がなくてもわかるように解説して下さり、ありがとうございます。

野井:
どうもありがとうございます! 僕はこの対談は「音楽理論講座」というより「読み物」として考えているのですが、それでもやはり、音楽を職業にされている方や知識の豊富な方が読んでも間違いのないよう、細かい箇所にも気を配らなければならない。なので、いくつかの解釈が成立する部分は、もう腹を括ってお話しするしかない。

そしてなによりも、ASKAさんへの尊敬の念を持ちながら、「難しいことはわからないけれど、純粋にASKAさんの音楽が好き!」という人にこそ、楽しんでもらえるようにしていきたい
そういう気持ちで向き合わせて頂きました。なので、そう言って頂けるととても嬉しいです!

s.e.i.k.o:
いつも解釈の方向性を決めたり、バランスを取って下さったりしてますよね。本当にありがたいことです。

それにしても、私のような素人にとってはすごく不思議なんです。例えば、ある料理にどんな調味料を加えているのかがわかれば、自分の料理の経験値をなんとか組み合わせて、それに近いものはできるんじゃないかと。
けれど野井さんのお話では、他のアーティストの楽曲にはなんとか近づけることができるけど、ASKAさんの楽曲にはどうしても近づけないという。
なぜそんな違いが生じるのか、ここがどうしても知りたいなと。


野井:
僕からしたら、料理でそれが難なくできてしまうというのも、結構すごいことなのですが(笑)。確かに音楽の場合も、料理のそれに近い部分はかなりあると思いますね。

「なぜASKAさんのような楽曲に近づけられないか」ですが、その最も大きな理由として、僕の思っているASKAさんの一番すごいところが、「セオリーにこだわらない『選択』をしていくことができる」ところだからです。今までも自分なりに色んな分析をしてきましたが…この「『選択』のすごさ」というのが、普通のミュージシャンには、そう簡単には真似できないことだと思います。

s.e.i.k.o:
「セオリーにこだわらない選択」ですか!
「選択」の能力が半端なく高い、というお話は以前もされていましたよね。

楽曲について後付けの解析はいくらでもできるけれど、それをゼロから、様々な選択肢の中から選んで生み出すことが難しいのだと。

野井:
はい、そうなんです。前々回の記事の中でもお話ししたかもしれませんが…ASKAさんの楽曲は、実はものすごく音楽理論の基本に則ったものが多いので、聴いて後から分析して、「ああ、これはこうこうですね」みたいに説明するのは、音楽に真摯に取り組まれている方なら、できる方も多いと思います。
しかし、「じゃあ、こういう音楽を0から発想して作れるのか?」ということになると、話が全く変わってくると思うのです。

s.e.i.k.o:
やはり「セオリー」があると、人はまずそこに捉われてしまう。
私も非常に常識人なので(笑)、自分のそういうところはつまらないと思いつつ、どうしてもそうなってしまうのを自覚しています。

野井:
いえいえ、全然つまらなくない、素晴らしいことだと思いますよ!
僕は常々思うのですが、個性って、決して人と際立って違うことをするだけでなく、まずは「普通(音楽でいえばセオリー)」が存在する上で、それに則りながらキラリと光るものを出していくことも、同じくらい大事だと思うのです。s.e.i.k.oさんは「文章を書く」ということで、とても輝いていますよ!

s.e.i.k.o:
ありがとうございます、照れますね(笑)。

野井:
音楽の場合、「セオリー」というのは、「こうしたらカッコよくなりますよ、感動しますよ」というものなので、その方法論をマスターして、自在に使えるようになることがまずは大切だと思います。実際チャゲアスには、そういうタイプの名曲もすごく多いですよね! 

プロの方や、プロにほぼ近いくらい音楽を本格的にやっている方になると、どんどんセンスも知識もこなれてきて、音楽には色んな「流れ」や「法則」があることに気が付いてきます。つまり、コード進行にも、大体の「お約束ごと」があることを知っていきます。
そしてさらには、ベーシックなセオリーのみならず、多岐の音楽ジャンルにも及んで、こうしたらカッコよくなるという「お約束ごと」を覚えていきます。
それをマスターした人が、いわゆる「あの人は音楽を知っている」と言われるのだと思います。

s.e.i.k.o:
そうか、以前の記事で野井さんが「ありがとう、どういたしまして、のような自然な流れ」と表現されてましたが、それができることがまずは大事ですよね。

野井:
そうです、まさにその「流れ」なんです!
その次にどうなるのかと言いますと、今度はそこから「逸脱」する方法を考え始めます
「逸脱」というとカッコいいのですが、実際はこの「逸脱」の仕方も、色んな音楽を聴いて研究している内に、いくつかのパターンがあることがわかってきます。特に若い多感な時期に、洋楽を聴いてマスターする人が多いのではないでしょうか?「逸脱にもセオリーがある」って、不思議でしょう(笑)。

でも、パターンがあるといっても、その数はかなり膨大なものになるので、「逸脱」をより多く覚えれば、自分なりのオリジナリティが出せるようになってくるのです。どの「逸脱」のパターンを「選択」するかが、その人独自の個性になるとも言えます

s.e.i.k.o:
なるほど! 逸脱というのも面白いですね。
人生に例えるなら、決められたレールだけじゃカッコ悪いと思い始めた思春期に、ちょっと個性を出そうと思っても、その逸脱パターンってたくさんある(笑)。
不良になるかファッションに走るか、留学やバックパッカーで海外に出たり、バンドやってみたり。ちなみに私の選んだ逸脱はバックパッカーで、「自分探しの旅」の流行りに乗った世代です(笑)。
それらもよく考えてみると、一応は先人たちの踏みならしてきた道がありますもんね。自分はどの系統なのか、帰属先があった方が安心でもあるという。

野井:
そう、「自分の個性を!」と言っているけれど、よくよく考えたら、実は意外と何かしらのルーツに則っていたりするみたいな(笑)。
でもこれも決して悪いことではなく、一つの洗練された形として出来上がってきたものですから、人に迷惑をかけたりせず、周りと調和のとれたものであれば、色々試すのは良いことだと思いますね!
人間ってなんだかんだいって、周囲の環境や色んな人の影響があって、助けられて成長していくものですから、全てオリジナルなものじゃなくても、それはごく自然なことだと思います。

ちょっと脱線しましたね(笑)。話を戻しますが、ASKAさんの場合は「逸脱」する時に、通常ならなかなか考えられないパターンを「選択」していることが多いのです。
音楽に真摯に取り組めば取り組むほど選択肢から外していきそうなパターンも、先入観抜きにして、どんどん使っていきます。

s.e.i.k.o:
なんと、そうなんですか…。ASKAさんは音楽家の方々からも「天才」と称されたりしていますが、もしかしてこの「逸脱時の選択」を指して言われてることが多いのでしょうか。
これはかなり面白いポイントですね。

野井:
僕は作曲家としての ASKAさんの最大のすごさは、そこじゃないかなと思っています。

ではこの辺りで、ASKAさん作の楽曲で「セオリーにこだわらない選択」をしているな、と感じられる例を2曲挙げたいと思います。
CHAGE & ASKA名義で発表された「if(シングルバージョン)」(’92年)のサビに入る手前の10小節、そして「天気予報の恋人(オリジナルバージョン)」(’89年)のBメロです。


●楽曲例①:「if」


◎ if (シングルバージョン、原キー:Aメジャー)

星のれ(0小節目)|きしさ|えも|変えながら|朝に|
B♭m7|Am7| A♭dim|C/G|

は横にい|る|~|
B♭mB♭m|F|F|E7G7


野井:
「if」ですが、動画の赤字(記事では太字)の箇所…通常なら、ハ長調で、シ♭(B♭音) をルートに持ってくるコードを使おうと考えた時、B♭メジャー(シ♭、レ、ファ)をまず考えるでしょう

しかし、この「if」では、B♭m(シ、レ♭、ファ)、B♭m7(シ、レ♭、ファ、ラ♭)を使ってきます。メロディで使っている音の関係もあるのですが、この発想はなかなか思い付きません。
それにしても、ものすごく美しいコード進行ですね。現在、シングルバージョンがほぼ手に入らないのが残念です。

s.e.i.k.o:
私もシングルバージョンが特に好きです。公式MVで聴けるアルバムバージョンも良いんですが、しっとりと落ち着いている分、シングルで受けるような驚きとは別物ですよね。

野井:
アルバムバージョンは、アルバム『GUYS』全体の色に合わせた世界観になっていて、こちらもまた違った魅力がありますね!

シングルバージョンの方でもう一つ注目したいのが、サビ前2小節の E7 - G7 というコード進行です。
「E7」という平行調のマイナー・キーのドミナント から、「G7」という、メジャー・キーのドミナントの順番で進行しています。

この逆である G7 - E7 というパターンは、非常によく使われるのですが、この順番はあまり見られません(サスフォーを挟む、E7sus4 - E7 - G7sus4 - G7 はあるかもしれないです)。でもこのコード進行、とても斬新で美しいですよね。

s.e.i.k.o:
確かに、ここに注目して聴くと、他で聴かない感じがしてきました!
ここからサビの、ちょっとオールディーズ風の懐かしいリズムと雰囲気に切り替わるところが大好きです。

野井:
僕もシングルバージョンを最初聴いた時、サビに入ってから、ロックンロールというかオールディーズのようなリズムになることにすごく驚いたのですが、これが本当に楽曲にピッタリで、癖になっていたクチです(笑)。

これらの手法を、サビの手前の10小節の中に2つも入れてくるので、聴き手は、よくある甘いラブソングを超えた、ハッとしたものを感じるのだと思います。
今10小節と言いましたが、これはいわゆる「倍テン(同じテンポだけれど拍子を倍にして捉えた場合のテンポ)」で解釈した場合なので、バラードとしては、事実上はたった5小節と解釈するのが自然かもしれません。

s.e.i.k.o:
たったの5小節…。この箇所、歌詞の方も改めて見てみると結構すごいですよね(笑)。
Aメロ前半で恋人同士が「もし出会ってなかったら」系の話でイチャイチャしていると、後半で急に「そのifって、まるで星の歴史(正しい時間軸)を変えてるようだね」と、急に視点を高次元に切り替えてくる。
これは、よくASKAさんが使われる手法だとは思うんですが、この短いフレーズで、よくここまで違った気持ちを味わわせてくれるものだなと。うっとりしちゃいますよね。

野井:
本当に、歌詞もとても素敵ですね!
s.e.i.k.oさんのおっしゃるよう、後半のスケールの大きくなる部分との対比ももちろんですが、僕はAメロ前半の歌詞、あれだけ長いロマンチックな文を、長いメロディにはめていくのって、もしこれメロディが先だったとしたらすごいよなぁ、と思いながら聴いていました。

s.e.i.k.o:
ああ、確かに! 長いからこそ、おしゃべりしてるような甘い気分になります。

野井:
どうしても、大ヒットした「SAY YES」の次の作品ということで、ミリオンセラーなのに世間的に取り上げられる機会がやや少ないかもしれませんが、僕にはとても思い入れ深い楽曲です。
好きな方も多いのではないでしょうか?


●楽曲例②:「天気予報の恋人」

野井:
次に、「天気予報の恋人」です。

◎ 天気予報の恋人(オリジナルバージョン、原キー:A♭メジャー)

綺(0小節目)| 麗なひ|とだねと言われる|度 不|安だよ|
E7 - Am|Gm7 - C7|F - Bb|E7 - Am|

みんな さら|った は|ず なの|に~|誰のため|の~ 
E7 - Am・Am/G|F#m7b5|E7/G#|Am7|F/G|


s.e.i.k.o:
これは…改めてコードだけ取り出してみると、すごく忙しく動いてるんですね。

野井:
そうなんです、僕も初めてしっかり聴いた時、笑ってしまいました。もちろん「すごい」という意味ですよ(笑)。

「天気予報の恋人」の場合は、コード進行を例えば1小節単位のように細かく区切って見ていくと、そんなに突拍子もないことはしておらず、スタンダードな動きで成り立っています。

しかし、これらを全て組み合わせてつなげた場合…こういうコード進行の動きをする曲って、ほぼ見当たらないというか、普通の感覚では「これは使えないだろう」と、元より選択肢から外してしまうと思います。
しかしASKAさんは、メロディと一番マッチするこのコード進行を選択しています。

もちろん、メロの動きとの関係性を第一に考えてのことと思いますが、根底に、先入観を持たずに「良いものは良い」という、自分の感性に正直に「選択」したい気持ちがあって、結果このコード進行を選ばれたのでははないかと思っています。
「天気予報の恋人」は、結果的に、アルバム曲にも関わらずファンの間でも、とても人気のある楽曲になっていますよね。

s.e.i.k.o:
これは隠れた名曲の代表格ですよね!
それにしても面白いのは、野井さんがおっしゃるように「普通ではなかなか考えられない選択」をしているのに、誰が聴いても美しくまとまっているところですね。
逸脱すること自体を目的に、セオリーから外れたことをやると、ただの奇抜なものになってしまう。ASKAさんの楽曲のすごさは、全く奇抜さや独りよがりな印象を感じさせないところですね。
やっぱり音楽家からすると「その手があったかー!」となるのでしょうか(笑)。

野井:
そうなんです! ASKAさんのすごいところって、決して難しいことや人のやらない手法をやっているからじゃなくて、それらがことごとくスムーズで美しく、インパクトのある楽曲として成立させるために、必要なものとして使われていることなんです。
そしてリスナーからちゃんと共感、支持を得ている。

s.e.i.k.o:
理想的ですね…。それに、歌詞の「不安だよ」とか「首ったけ」という恋愛特有の揺れ動く気持ちに、この動きまくるコードがぴったりとはまっているところも素晴らしい。
コード進行の記事でお話頂いた、「歌詞が乗る前にコードで感情を語っている」というやつですね!

野井:
確かに、本当に不安になる位に、忙しく動いていますね! 人が恋する時の気持ちも、こういうものかもしれませんね(笑)。


●天才ってなんだろう?

s.e.i.k.o:
思い出すのが、ASKAさんについてのよく知られるエピソードですが、作曲法をギターから鍵盤に切り替えたとき、メロディに合わせて2本指で押さえるところから始めたと…。
もちろん作曲のキャリアもあって、コードはわかってらっしゃる状態だと思うんですけど、自分のメロディにぴったりな理想の響きを細やかに探ることで、セオリーに捉われないコードの動きが可能となるのでしょうか

野井:
うーん、これは言葉でいうのは本当に簡単なのですが…
確かに鍵盤の方がギターなどよりは、視覚的にコードの構成音や、メロディの音域などを捉えやすいというのはあると思いますが、じゃあ誰でもできるかというと、実際にはそんなに容易にできることではないと、僕は思います。

なぜなら、音楽をやればやるほど色んな法則や流れを知り、洗練されると同時に、この能力は気を付けていないとどんどん薄れていく可能性も高くなるからです。
それに加え、多くの人からの「共感」を満たしていくとなると、ハードルはより一層高くなりそうです。
でもこういう能力こそ、実際はミュージシャンにとって忘れてはいけない、とても大切な部分じゃないかなと思います。

この「セオリーや先入観に囚われずに、良いと思ったものを『選択』する凄さ」というのが、ASKAさんの本当にすごいところで、一般的になかなか真似できない所以です。
ASKAさんが、リスナーのみならず同業者からも「天才」と思われているのは、そういったところにある、と僕は思います。もちろん天才といっても、相当な努力をされていると思いますが。

s.e.i.k.o:
すごくよくわかります。「天才」に対して一般的に抱くイメージは、特に努力をしなくても、インスピレーションでスラスラと名曲やアイディアが生まれる感じ。
でも、そんなわけはないですよね。これはASKAさんも「Energy」(’88)という曲の中で、「今日もメロディー進まない モーツァルトならどう書くの?」と否定されている(笑)。実際はすごく努力が必要なはずです。

もしかしたら、これは推測なんですが、天才の代名詞であるモーツァルトすら誤解されているのかもしれなくて、世の天才と言われる方々が持ち合わせてるのは、天から降ってくるインスピレーションでもなんでもなく、目的意識を一般的な考えよりちょっと先の場所、本質的な場所に持つことのできる能力かと思うんですよね。

ASKAさんで言えばきっと、ズバリ目的は「良い音楽を作ること」。
この、自分に見えている目的のためなら、常識やセオリーなんて、人に何か言われることを恐れず軽やかに無視できる。
これは普通なら難しいことだと思うし、ここを理解されないままでは、天才って孤独だなと思います。大変陳腐な言い方ですが(笑)。


野井:
「良い音楽を作ること」、これは本当にそうですね! ASKAさんの楽曲って「手作りの温もり」みたいなのをかなり感じます。

s.e.i.k.o:
 一曲ごとにASKAさんを濃厚に感じるのは、そのためでしょうね。

野井:
それと一般的には、モーツァルトは最初に頭から最後まで楽曲が浮かんで、書き直しがなかったと言われていて、ベートーヴェンは後から何度も何度も修正して楽曲を完成させた…と語られることが多いですが、今のs.e.i.k.oさんのお話を聞くと、意外とモーツァルトも、目的に近づける手段として、俗に言われるベートーヴェン的な要素もかなり使っていたのかもしれない、努力あってこその天才だったのかなって、そういう気もしてきました。

前回もお話ししたように、僕は昔のプロレスが好きなのですが、ASKAさんって、なんとなくアントニオ猪木さんに通じるような気がしまして。

猪木さんも、基本的なスキルがとてもしっかりしていますが、格闘技の実績があまりないままプロレスラーになったからか、その分、プロの技術に真摯的に取り組み、尚且つ「これはこうあるべきだ」という堅苦しい先入観なく、良いと思ったこと、面白いと思ったことをどんどん取り入れていきました
当時、ボクシング界を超えた世界的な英雄であったモハメッド・アリと戦おうなんて、普通の感覚ではまず考えられないですし、誰もが認める正統派のプロレスラーであるにも関わらず、試合内容も予定調和な面白さだけでない、イレギュラーでハッとする場面がかなり出てきます。

s.e.i.k.o:
おおー、プロレスとの共通点があるとは! 確かに野井さんに猪木さんの魅力を要約して頂くと、ASKAさんの印象とすごく近しい気がします…。
ASKAさんも猪木さんも、その道のプロというより、もはやレジェンド、天才だと言われる存在ですよね。
ASKAさんご本人も猪木さんを尊敬する人に挙げてらっしゃったと思いますが、共鳴する部分が、きっとあるんですね。

野井:
そうですね! また、お二人に共通する部分として、男らしいところが大前提として、ほんのちょっと儚い部分があるというか…。

ASKAさんなら、女性からしたら「なんとかしてあげたい!」と思う繊細なところがきっとあると思うし、猪木さんもプロレスラーの中ではやや細身でスラリとしていて、試合でも「こんな攻撃受けたら、猪木死んじゃうよー」という場面が結構出てきて、大ピンチを凌いで反撃する、そこにファンは感情移入する…そういうところも似ているかな、と思います。
いつも少年みたいな心で、何か夢を実現させようとするところや、お人好しそうなところも共通する気がしますね!

s.e.i.k.o:
うーん、共通点が盛りだくさんですね。
男らしいのにちょっと儚い」っていうのは、ぐっと胸を掴まれるポイントですよね。昨年ASKAさんのライブを観に行った時にも、本当にステージ上からそういう魅力がビシビシ伝わってきました!

やっぱりASKAさんの個性って只者じゃないですね(笑)。この連載を読んで、ヒットを連発したスマートな作曲家、というASKAさんの印象が、少し変わったという方もいらっしゃるんじゃないかと思います。

野井:
正統派でありながら異質な要素が入ってくるところが、本当に魅力的な人だなと思いますよね。

もちろん、海外の素晴らしい音楽の影響を強く受けて、傾倒し洗練を繰り返しながら、そこにどんどん近付けていく過程で、自分のオリジナリティを見出すタイプの音楽も素晴らしいし、僕はそういう方々も大好きです。というか、大半のトップアーティストは、そちらじゃないかなと思います。
ASKAさんはどちらかというと、「どんどん近付ける」というより、「どんどん取り入れる」タイプの人なのかな、と個人的に思っています。

s.e.i.k.o:
「取り入れる」タイプですか。なるほどなぁ。
私も、「近づける」タイプの音楽もとても好きでよく聴くんです。というか、「取り入れる」タイプの音楽は、実際カロリーが高すぎて、ワクワクするし創造力やエネルギーも湧いてくるけど、普段使いには向いてない気がすることがよくあります(笑)。
在宅ワークされている方が「ASKAさんの音楽をかけていると、耳を奪われて仕事が捗らない」なんて、嬉しい悩みをおっしゃってたりするので、たぶん皆さんそうなんじゃないかと(笑)。

野井:
耳が奪われてしまう、それは大いにあるかも、です!
全く関係ない話ですが、僕はよく雑用している時に、YouTube動画でヒーリングミュージックをかけていることが多いのですが、こちらは逆に眠くなってしまって、仕事にならない時もありますね(笑)。

s.e.i.k.o:
どちらも作業時には良し悪しということなのかな(笑)。


●音楽性を左右する「ルーツ」との距離感

s.e.i.k.o:
では、ここからもっと掘り下げて、なぜその「セオリーに拘らない選択」をASKAさんができるのか、ということについて伺いたいのですが…。
ちょっとここまでいくと深掘りしすぎでしょうか(笑)。ほぼ推測になってしまいますよね。
オフトークということで、よろしくお願いします。

野井:
これは、本当に、なぜできるのでしょうかね(笑)。
僕が思うには、実際にお会いしたことがないのですが、多分とても素直な性格の方なのではないかなと思います。
素直だからこそ、「新旧問わずに良いと思ったものを素直に受け入れ、応用していく」ことができるのでは、また、前例がなくても「面白そう、これはできそうじゃないか?」と思ったことを試してみて、実際に形にすることができるのではないかと思っています。

s.e.i.k.o:
そうですね! ご活動の流れを作品を通して追っていくと、「その方が面白いから」「良くなるから」と素直に動いてらっしゃるような気がする。

野井:
本当、純粋に良い作品を書きたい、という気持ちにただただ素直な印象を感じます。

そして、これは僕の推測なのですが、ASKAさんは通常のミュージシャンなら若く多感な時期に体験する、「洋楽の名盤を聴いてガーンと衝撃を受けて、それに影響されまくった」という経験を、実は幼少期の、良質な歌謡曲やスタンダード・ポップス、名作映画のサントラなどを聴いていた頃に、既に無意識で経験済みだったのかな、と思います。

s.e.i.k.o:
「無意識で経験済み」というのが、推測のポイントですね!
確かに、ASKAさんは映画音楽のエピソードをよく語られていて、しかもそれらが、知識というよりもご自身の経験に結びついた記憶、というのが多い印象ですよね。

映画音楽に限らずどんなジャンルでもそうだと思うんですが、何か一つのものを好きと公言する時には、どこかマニアックに深めがちなことが多いと思うんですよね。
音楽なら、これだけたくさん聴いてる、とか、こんなのも知ってる、とか。
でもASKAさんにはそういう印象がなくて、好きの種類が非常に、良い意味で「爽やか」な感じがする。幼い頃に触れられていたのが大きいのかもしれないですね。

野井:
僕もそう思います! 僕がASKAさんを好きなもう一つの理由が、「こういうマニアックな音楽知ってるぞ」みたいなのを、あまりひけらかさない、でも明らかに、音楽的素養がなければ絶対に作れないような楽曲をいつも発表されるところなのですが、それが可能なのは、バックボーンが幼少期に知らず知らずにできていたからなんじゃないかなぁと。

s.e.i.k.o:
なるほどなぁ…。
今回のお話はオフトークである上に、完全な推測トークでもありますが、「何かに傾倒したり、一生懸命コピーしたり、という経験がほぼない」という話は、ASKAさんご自身もたまにインタビューでされてるから確かだと思うんですね。

野井:
思春期以降は、井上陽水さんやスティービー・ワンダー、デヴィッド・フォスターなどをはじめ、おそらく膨大な音楽を聴かれていると思いますが、その時点でベースが既にあるので、何かに強く傾倒する、というより、聴いた音楽の素直に良いと思った部分を、ジャンルに拘らずに吸収して、実際にご自身が作曲する時に応用することができているのではないかな、と

これは完全に推測なので、間違ってる可能性もとても高いです(笑)。いや、これはほんとに、僕が勝手に思っているだけなので、このnoteを読まれた皆さん、個人個人の思いで音楽を楽しんでくださいね!

s.e.i.k.o:
私も当然、まったく同じ思いです! ここまで全てを、話半分の薄目で読んで頂きたい(笑)!

それにしても、私はASKAさんの何かに強く傾倒しない、憧れないところに、こういう表現で合っているのかわからないですが、人としての「爽やかさ」を感じてしまうんです。
この爽やかさを手に入れるのは、本当に難しいと思いますよ(笑)。つい人って、自分を大きく見せるために何かで塗り固めたりして、重苦しく暑苦しくなっていく。
ASKAさんのそういう軽やかさ、爽やかでありながらも一本芯の通った強さに、ファンの方は惹きつけられてる部分も大きいのかな、と。

野井:
それは僕も思います! でも、この世代のトップの人達はすごく謙虚な方が多いので、それでも相当のことはされているとは思いますが(笑)。

s.e.i.k.o:
当然、人並み以上の音楽研究はされてるはずですよね。

野井:
ですね(笑)。
今、こうやって音楽の分析など細かくしている身で言うのもなんなのですが、僕の大好きなアーティストや作曲家さん、音楽以外も含めた表現者の方々に共通するのは、「あまり言葉で表現していない」人が多いのです。

ASKAさんは今ブログなどで、楽曲を作った当時のことをお話しされる機会も増えてらっしゃいますが、それはあくまでファンのためであって、自分をひけらかすものとは全然違う。「自分のアートを言葉で表現しない人が、本業で素晴らしい表現をする」、これって本当に理想形だと思います。

あと、自分の得意じゃないことも素直に言える、これもなかなかできないことです。余裕があるので自分を大きく見せる必要がないのと、更に高みを目指しているから、自然にそうなるのでしょうね!

s.e.i.k.o:
言葉にするものとしないものに、ポリシーが見える。そういう姿勢が、ファンの目にはたまらなくカッコいいんですよね!
ASKAさんに対して、音楽が聴きたいのは当然だけれど、まずは自分達を今まで惚れさせてくれたASKAでいて欲しい、そして作れる時に音楽を作り、ずっと歌い続けて欲しい…と願っているファンは、たくさんいらっしゃるんじゃないかと思います。

野井:
僕は本当に、健康でずっと長生きして、周囲の人に恵まれ、音楽と剣道を続けていかれるだけでも、それだけで嬉しいと思ってしまう方なのですが(笑)、やはり新しい作品が出たらとても嬉しいものです。
個人的には、特にロック調な曲でシャウトしているASKAさんが好きです。
なので、本当にご無理のないペースで、新しい展開がくることをいつも楽しみにしています!


●「わからない」から辿り着ける場所

s.e.i.k.o:
実はですが、私がこの連載を始めてみようかと思いついたのも、私も大好きな「影響を受けたものに近づける」タイプの音楽と、ASKAさんの音楽の違いが今ひとつわからず、野井さんに質問させて頂いたことがきっかけだったんです。

コードが複雑、メロディが素晴らしい、と世間から定評を受けているアーティストはたくさんいらっしゃるけど、ASKAさんの音楽と、一体どこが違うのか
聴いた感触としては全然別物なのに、ASKAさんの音楽について語る言葉が、もしかしたら結構少ないのでは?と、素人のお節介で勝手に思ってしまったんですね。

そんな質問をしたところ、野井さんから「両者の違いは、前者はルーツがわかるが、ASKAさんはわからないところ」という、とても明快で目から鱗なご回答を頂けて、ああそうか、と思ったんです。
どんな系統から影響を受けているのか、プロには普通なら一聴してわかる、ということなんですね。それがASKAさんにはない、「わからないところがすごい」という。

さらにお話を深めていくと、ルーツのわかるものの方が音楽評論的にも高評価が集まりやすく、その意味でASKAさんの音楽というのは、高セールスの陰に隠れて、実力に匹敵する評価がリアルタイムで追いついてこなかったかもしれない、というお話が、私にはすごく面白かったんです。
だから、遅ればせながら私達で勝手に、ケモノ道ではありますが、新しい見方で褒めちぎっていこうと(笑)。

野井:
僕、最初の頃そんなこと言っていたんですね!? 単なる一ファンなのになんとも生意気なことばかりで、本当に赤面したい気分です(笑)。

確かに、何か市民権のあるものへの「帰属感」というのが、日本の音楽評論の分野では重要なポイントになることも多いので、ASKAさん、チャゲアスの音楽性は「評価されにくい」というより、「評価の判断基準が難しい」というのが本当のところなのかな、と思うことがあります。
素晴らしいのに、どうやって活字にすればいいのかわからないなって

s.e.i.k.o:
この場で少しでも、言葉にして頂けたと思っておりますよ。
少なくとも、「ASKAさん、天才! 凡人じゃ追い付けない!」とか、「J-POP史に名を刻む」などの評価を、もう少し具体的に深めることはできたんじゃないかと。

野井:
そうであれば嬉しいです! 
僕は今の仕事をしていて、ASKAさん、チャゲアス、そして、David Benoit(デヴィッド・ベノワ、アメリカのジャズピアニスト)、この人たちが好きで本当によかったと思っています。

なぜなら、「日本独自のJ-POPの最高峰」のファンであったおかげで、邦楽という音楽に良い意味でプライドを持って取り組むことができて、またDavid Benoitさんも、ジャズに限らず本当にどんなスタイルでも自分のオリジナリティを出せて、常に現代の表現をしている方なので、たとえば洋楽的なアプローチを期待される時にも、それほど臆することなく、随分と助けられているからです。
もちろん、今までの自分のベースにあまりないような音楽、近年出てきた新しいものやフィールド外のものにも、常にアンテナを張っておきたいと思っておりますが。

s.e.i.k.o:
「評価の判断基準が難しい」と言われるような音楽に、存分に触れられたことが、野井さんのクリエイティビティを支えているんですね! もうなんだか、ちょっと感動しております…。
私は野井さんよりも少し歳下ですが、ちょうど中学生の、吸収力と時間のあり余っている時期に、チャゲアスを浴びるように聴けて本当によかったと思います。
何に役立っているのか、野井さんのように明確に出てこないのですが(笑)、でも自分の感性の一部には、確実になっていると思っています。

野井:
きっとそうですね! s.e.i.k.o さんや多くのファンの方々も、もし現在の生活が音楽とそれほど直結していなかったとしても、生き方やものの感じ方、審美眼など、きっと大きな影響を受けていると僕は思います。
何か辛い時、またはとても素敵な思い出の隣で、ASKAさん、チャゲアスの音楽に支えられてきた、また歌詞を思い出して乗り越えていくことができた、ライブや映像を観て再びやる気が湧いてきた、好きな人をいっそう大切にしようと思った、などなど…そういう方々はきっと多いのではないでしょうか?

s.e.i.k.o:
もう本当にその通りで、だからこそ今までずっと皆さんに愛されているんだろうなぁ、と思います。


●まとめ〜対談雑感

s.e.i.k.o:
いやぁ、本当にボリュームのある対談でしたね!始めた当初は3~4本にまとまるかな、と算段してたのですが(笑)。
でもお話を伺っていく内に、野井さんのお人柄や情熱が伝わってきて、これはしっかり書かなきゃダメだぞ、となり…結果一年以上、野井さんのご多忙なスケジュールの合間を縫って続けてきましたが、本当にかけた時間、交わした対話の分だけ得るものが多かったという実感です。

野井:
ありがとうございます! 僕も実は最初、一日お会いしてたくさんお話しして、それをまとめて頂いたらOKかな…みたいな軽い気持ちでいたのですが(笑)。
コロナ禍に入ったことも加わり、少し進めてみて「この企画は一筋縄ではいかないぞ」とすぐにわかりました。
でもそのお陰で、今できる限りの内容のあるものを、s.e.i.k.oさんとご一緒に作らせて頂くことができたと、本当に実感しております。

s.e.i.k.o:
本当に予想外のことを、よくここまで二人で乗り越えてきましたよね(笑)!
対談を終えた今思うのですが…こんなにたくさんのお話を、音楽理論に基づいてわかりやすく教えて頂いたのに、やっぱり残念なことに、自分ではASKAさんの音楽のすごいところって、ちゃんと説明できないんですよね。
野井さんのおっしゃるところの、「普通だとこうなるはずが…」の「普通」に照らし合わせるストックが、自分の中に無いという…。

でも、野井さんが今まで挙げて下さった楽曲の、ASKAさんらしい工夫の施された部分が全て、実は昔から「なんか好き」と思っていた部分だったりする
この、わからなくても「なんか好き」と思えてたことが嬉しいですし、それをさらにちゃんとした言葉や理論で解説して頂けたことにより、やっぱりプロの見ている世界ってすごいんだなと、そう思えています。

野井:
そのあたりは僕の力量不足もありまして(笑)。
僕がこの企画で注意していたのが、いくら「すごい」ことであっても、他のアーティストもやってるよ、という技法はなるべく避けて、ASKAさん独自の、という部分を少しでも紹介していくことでした。
特に転調の回はそれを意識しました。

でも、ここまで書いてなんですが、音楽って本当は「なんか好き」で良いと僕は思っているのです
「なんか好き」の背景には、必ず理由があって、その理由が具体的に理解できなくても、そこに理由があるということがわかるだけでも、音楽を聴く時に、今までとはまた違う楽しさが生まれると思うのです。
もちろん、理屈抜きの「なんか好き」という感覚も、とても大切だと思っています。そう思ってもらえることが、この仕事をしている人間にとっては最も嬉しいことですから!

このような貴重な機会を頂きまして、本当にありがとうございます!
s.e.i.k.oさんと対談形式でできて、柔らかくて温かい表現を所々入れてくださったお陰で、堅苦しくもなく、でもファンの皆さんが興味があってもなかなか知り得ない音楽的なことを、少しはお話しすることができたと思います。本当に感謝しています。

s.e.i.k.o:
いえ、こちらこそ! 私の存在意義は、ただ「バリアフリー」にすることだけなので(笑)、段差にスロープを設置するお手伝いが少しでもできたかな、と思っております。

野井:
この企画を始めた時、最初は先入観で「これはこうだろうな」と思っていたことが、ことごとく違ったり、でもよく分析してみると、最初に思ったことには何かしら理由があったり、本当にすごく勉強になりました。
また、今の音楽シーンで軽視されがちな部分のヒントも、ASKAさんの音楽には詰まっていると何度も思いました。今後の自分の仕事においても、この経験を十分に役立てていけたらと思います。

s.e.i.k.o:
そう、野井さんの分析も、この一年で変化していったんですよね! その変遷を横で見られたことも、とても勉強になりました。
音楽家の方も悩んだり迷ったりするんだな、というのを良い意味感じましたし、それが音楽に真摯に向き合われているということなんだな、と学ばせて頂きました。

…ところで、お仕事といえば、野井さんからリリースのお知らせがあるんですよね?

野井:
そうなんです。実は7/3(土)から放送開始のアニメ「魔法科高校の優等生」のエンディング曲の作曲・編曲を担当しました!
歌うのはフィロソフィーのダンスさんという、今までのアイドルの概念を超えた、今注目の女性アイドルグループで、曲タイトルは「ダブル・スタンダード」といいます。
CDリリースは8/18(水)なので、もしご興味もたれた方はチェックして頂けると嬉しいです。
この対談を通してお話ししてきたことに通じる色々な要素が、もしかしたら詰まっているかもしれません!

s.e.i.k.o:
おおー、それはものすごく楽しみですね!
アニメも人気シリーズだそうで、毎週テレビでオンエアされるとあれば、読者の皆さんもぜひ、この連載のことを思い出しながら楽しんで頂けるといいですね!

この連載で様々な角度からの分析の視点に触れられたことで、音楽を今までよりほんの少しだけ敏感な耳で、聴けるようになってきてる気がしています。
新しく知ることって、本当に楽しいですね!
知らない世界について学ぶ楽しさが、まだいっぱい世の中には残っているんだな、とワクワクできる貴重な体験だったと思います。
ここまで、本当にありがとうございました!

野井:
どうもありがとうございました!



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野井洋児さんの半生、音楽というお仕事についてのインタビューです↓

野井洋児さんの音楽に興味を持たれた方は、ぜひこちらを。
2020年春にサブスクリプションにて公開されたアルバム『みんなのうた』プロジェクト、そして過去のメジャーリリース作品のYouTubeリストです。
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・『みんなのうた』プロジェクト → https://linkco.re/q7Y9038Z
・メジャーリリース曲MVリスト → https://www.youtube.com/playlist?list=PLiqjsLSlY4qAy59PW4fa57AZw3b3Fro_P
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・他アーティストの話やコード進行の秘訣など、音楽についてより深く知りたくなった方は、野井洋児さんのブログをぜひご覧ください!

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