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夫との出会い③
こちらの続きです。
私は、だんだん取男(トリオ)と暮らすことが、本当にいい事なのかと考え出すようになる。
大阪の両親、友達、みんなと離れていいのか?
仕事はどうする?
いや、ほんまに取男が好きなら、飛んでいってるよな。
取男は、優しい。確かに趣味も合う。だけど、
何かが引っかかる。お義母さんか?いや、それだけじゃない。
何かがわからないまま、季節は流れて、
夏から秋になり、秋には私はまた1つ歳をとる。
(あーあ)
仕事が忙しいという理由をつけて、取男には、仮契約の賃貸アパートはキャンセルしてもらった。
私は「また、会いにいくし、また見つかるし」と言った。
また、次の休みに取男のとこに行こう。
ちゃんと話してみるつもりだった。
休みの日
また、いつものように鳥取へ向かう高速バスに乗った。高速からもうすぐ降りる。田んぼの緑がひろがっていて風によくなびいている。何度も見た光景だ。早く会って話したい。
駅のロータリーの待ち合わせの場所についた。
取男には昨日、着く時間もメールで送ったし、了解、と返事もきていた。
しかし、ロータリーに取男はいない。
見渡してもいない。コンビニにもいない。
10分たって20分たってもこない。メールも返ってこない。いつもなら、私より先に来て待ってるのに。何かあったんかな。
私の携帯はウンともスンとも鳴らず、取男にかけてもすぐ留守番電話サービスにお繋ぎされる。
(え、なんで?)
私は思いきって、取男実家の最寄り駅まで電車で行くことにした。駅の名前は知っている。
「駅なんてなんにもないよ笑。田舎やけん笑」と取男が笑って話していたことを思い出す。
JRで二駅だ。切符を書い、駅員さんに行き方をたずね、普通電車に乗り込んだ。
しばらくして、目的の駅についた。実家に行ったところでどうなるというのだ。
(またややこしなるか…)
駅には誰もいない。降りて線路沿いを歩く。
何もない。誰もいない。踏切の上から、歩いてきた道を見る。ため息しか出ない。
やっぱり待ちあわせの駅のロータリーに戻ろうと思った。
時刻表を見て電車の本数の少なさに驚く。1時間に1本か2本。朝や、昼、夕方はまだ4本位あったと思う。
20分待ってまた電車に乗った。
(何をやってんねん。私は)
2時間が経った。
ようやく取男の実家に電話をする。
ベンチから立ちあがり、姿勢を正した。
「あの、大阪のしろですが…ご無沙汰しています。取男さんいらっしゃいますか?」
電話に出たのはあの、『やいのやいの』のお母様だ。
「あぁ、しろちゃん、お元気でした?あぁ、取男、少し待ってね」
(あ、家にいるんか…事故とかじゃなくて良かった)
「もしもし?しろちゃん、取男ね、今寝てて起こしたけん、もう少し待ってね。」
な……。
なぬーーーーー!!!!!
私はその時、プチッと何かが切れてしまい、
電話を切ってそのベンチにただただへたって座って、空を見上げた。
山陰の空はたいがい曇っているのに、その日の空はキレイな青空だった。
取男は、実家に電話してから20分ほどでやってきた。
いつものシンプルなオシャレな感じではなく、
部屋の隅にクシャとなっている服をそのまま着てきたと見える。
急いできたのだろう。
私を待たせたのを何とも思ってないのだろうか。
それとも、実家に電話したのがいけなかったのだろうか。
「結構待った?ごめん」取男はそう言っただけだった。
車の助手席で、私は、心がギュッと押しつぶされるような気持ちになった。バスの中でメイクを直したことも、前髪を気にしたことも、電車で最寄りの駅に行ったことも、全部スカタンみたいに思えた。
カフェで取男とお茶して、トンボ返りでバスで大阪に帰った。
何を話したのかは覚えていない。短い時間だった。
あるのは、残念な気持ちと…それから、寂しく虚しい気持ちだった。
(もう、鳥取には行かへんかもわからんな…)
自分の部屋でひと泣きする。
ゼクシィはまた次も出る。
ゴミ箱に握って、突っ込んだ。
つづく。
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